うつしみひとよ〜ツンデレ式神は跡取り陰陽師にベタ惚れです!〜

ロジーヌ

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第二章 茅の輪くぐりで邪気払い

牛鬼④

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 牛鬼は、ツノこそあるが、体格の良い大人の男性ほどの姿だ。舞手の格好のまま縛られ、護符を貼られ、そのまま神事が終わるまで社務所の裏手に置かれていた。見張は、風悟と桃である。
「なんやなあ……こいつ、どないしたらええんやろ……そもそも、うちで祀っとったヤツやんか」
「そうなの。昔ちょこちょこ集落に出ては人食べたりしてたから、当時の宮司が退治して封じがてら祀ったのよね。なんで今更暴れたのかしら。まさか祠壊された腹いせってわけでもないでしょうに」
 すると、桃の目の前をふいっとちいさな邪気が飛んだ。
「あ……やだわ。ちゃんと夏越しの祓えは終わったのに……」
 そう言い、桃が邪気を袖に巻こうとすると、唐突に牛鬼が舌を伸ばして邪気を食べた。うわ、っと風悟が引いていると、牛鬼は体に力を入れる。すると体は一回り大きくなり、メリッと縄がきしんだ。
「これなあ……ヤバいんちゃうか」
「そうねえ……」

 桃が裾を翻して母屋に向かおうとした時、ちょうど正嗣が現れた。
「ああ……すまんな、桃!ちゃんと封じたるからな!」
 いうやいなや、正嗣は袂から護符を出して呪文を唱える。大小3体の式神が具現化する直前、牛鬼を縛っている縄が切れ、自由になった妖怪は咆哮をし、腕を振り上げた。
「……千景はこんでええ!!」
 正嗣が叫ぶ。牛鬼は先ほどよりも大きく、2メートルほどになっていた。社務所の裏手に回って来た千景は、慌てて逃げるが牛鬼の爪に引っ掛けられそうになる。
「ちーちゃん!」
 助けに入ったのは、ネネコだ。メイクは落ちて、普通のメス河童の顔になっている。小川に飛び込んだ際に化粧が落ちたのだろう。
「なんか念の為戻ってきたらぁー、チョーやばいじゃん!」
 ネネコは手のひらの水掻きから勢いよく水を出した。直撃を受け、牛鬼の足が止まる。そこに正嗣が出した式神が降りたち、包囲する。かぎづめを持ったものは牛鬼の体をがっちり捕まえ、鋭い嘴を持つものは耳を引っ張り、大きいたぬきのようなももは、足を掴んで離さない。牛鬼が暴れ式神が応戦する、というのを繰り返し、小一時間ほど経っただろうか。隙をついて正嗣が封じ込めの護符を牛鬼に貼ると、今度こそ妖怪は動かなくなった。

 牛鬼の祠には、木像があり、普段はそこに封じられているのだと言う。
「祠が壊れて、押さえつけられとんのが出て来たんやな。神頼みすぎるのもあかんが、ここが神域やっちゅうのをわかっとらんもんも増えた。あとなあ……」
 ううむ、と正嗣は顎にてをやる。
「やっぱりなあ……難しいもんやなあ……」
「何がや」
 千景は夫のいつもと違う様子にツッコミを入れる。
「まあ、その、な……俺は所詮分家もんやしなあ……手ぇ出したらあかんちゅうことなんかな思うて……」
「だから、なんや」
 語気を強める千景に対し、はっきり答えられず正嗣は歯切れが悪い。変わりにネネコが言った。
「だからさぁ、マー坊がわざと邪気を呼び入れてたってことでしょー?それを、祠を壊されて出ちゃった牛鬼がたまたま食べてぇ、悪さしちゃった感じ?」
「え!なんやそれ!」
 千景がキリッとした目を正嗣に向ける。
「そんなことしたらあかんやんか!」
「いやそれは重々承知やけどな。けどなあ……」
「親父は、桃の本体を壊して解放したいんやろ?」
 風悟助け船を出そうとしたが、正嗣は困った顔をして千景を見る。
「まあ、それもある……けどな、俺はおかあちゃん……千景のほうがなあ……」
「うち?」
 千景は驚くが、ネネコは、あー、と納得したような顔をしている。
「そっかぁ……マー坊は最初から、ちーちゃんが力使えないの、知ってたもんねぇ」
 え?と言ったのは、千景だ。
「最初からって……川で溺れた中学生ん時より、もっと前か?それにしてもちゃんと喋ったのは川が最初やで」
「いや、ほんまに最初や……俺が3、4年生くらいか。大人達が噂しとんの聞いたんや」
「低学年て……まーちゃんとうちは7歳差やろ、てことは……」
 正嗣は躊躇いがちに話す。
「そうや。千景が3歳位の時には、分家のもんはみんな知っとったんや」
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