目が覚めたら異世界で草生える

みももも

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大平原

馬の貴族

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「それで長さん、お馬さん。具体的にはこれからどうするの? いつまでもこうして逃げ続けるわけにはいかないでしょ?」
『それなのだが……むしろ人間、お前は何か策を思いつかないか? 俺らは「逃げ続けていればいつかは諦めるだろう」ぐらいに考えていたんだが、人間の数は増えるばかりで減る気配すらないんだよ。それにこうやって群れを大きくするのにも限度があるんだよな……』

 長さんは今まで、襲われる魔馬の群れを見つけ出しては保護して逃げることを繰り返していたけれど、人間に対して反撃はしないという非暴力不服従のスタイルを維持してきたらしい。その結果、魔馬の頭数は増え続けて今のような超巨大な群れが完成したけど今度は逆にこの数の多さが自分たちの首を絞める結果になっているらしい。
 そりゃ、これだけの大群で一斉に草を食べたら、あっという間に草原が荒野になってしまいそうだもんね。かと言って小さな群れだと人間に簡単に捕まってしまうらしいんだけど。

「でも、だったら……戦うしかないんじゃないの? このままじゃ魔馬っていう種族自体が絶滅しちゃうよ!」
『だがお主よ、人間どもは魔導を使うのだ。我らの中にも仔馬の奴のように簡単なものであれば使えるものはおるのだが、人間はそれこそ子供でも強力な魔導を使えるし、その威力も桁違いなのだ』
『こいつのいう通りだぜ。それに人間どもは魔道具なんてものまで使いやがるからな』
「そうなんだ。なかなか簡単にはいかないんだね……」

 魔馬は名前にとあるぐらいだから、普通の馬と比べたら魔力量が多いんだけど、それでも人間の魔力量とは桁違いどころではすまないぐらいの違いがあるらしい。
 魔馬の場合、平均的には300~400の魔力値になるんだけど、人間は子供でも9999以上だからね。カンストして測れないけどそもそも魔導の力比べをしても勝負にならないことは目に見えているってことか。

『お主よ、そう言えばお主は以前に契約魔導を使った時はなかなかの適性を見せていたな。長よ、この土地の権利は誰が管理しているのだ?』
 契約魔導? ああ、ヒサメくんに魔力を借りてやったやつかな。確かにあの威力で魔導をポンポン使えれば戦争には勝てるかも知れないけど、そんな簡単にはいかないでしょ。まさか人間じゃなくて馬が土地を管理しているわけじゃあるまいし……。
『ああ、ここの土地の権利だったら今のところ8割は俺が確保しているぞ。こうして馬達を集める途中で少しずつ集めていたらいつの間にかな。つっても俺自身には魔力を使いこなせないし、中途半端に使える魔馬やつに手渡した結果簡単に暴発しちまったからおいそれと手渡すことはできないんだ』
『やはりな。おそらく元は小さな群れごとに細かく保有されていたのだが、群れが統合される過程で権利の方も集約されたのであろう。
 なあ、長よ。その権利の一部をアカネに譲ってやってはどうだ? おそらくそれだけで戦争には勝てるぞ』
「いやちょっと待って、これってもしかして私が戦う流れなの?」
『確かに試してみる価値はあるか。言葉の通じぬ人間に渡すわけにもいかないし、そういうことなら俺に権利を手渡した馬たちも納得するであろうしな。人間、今から俺が持ってる権利を渡すからな!』
『お主よ、これでお主も貴族であるな!』
「え、いや、嬉しくない……」

 長さんとお馬さんは少しずつ走る速度を落として不意に立ち止まった。お馬さんは私を乗せたままその場にしゃがみ込んで背中から降りるように促してくる。これ、やらなきゃいけない流れなのかな……。
『人間、お前に俺の持つ土地の権限を譲渡する。さあ右手を前に差し出すが良い』
「え、あ、はい? ……うわ⁉︎」

 長さんに言われた通り右手を前に差し出すと、長さんは自分の顔を私の手に近づけて……手の甲に口づけをされてしまった。まるで少女漫画とかのワンシーンみたい! 相手が馬でさえなければだけど‼︎
 馬さんの口が私の手から離れても、これと言って何かが変わったような感覚はない。もしかして失敗したのかも?

『お主よ、試しに何か魔導を使ってみるのだ。できるだけ被害のないように気をつけるのだぞ!』

 気を付けろと言われても、そもそも理屈もよくわかってないのにどう気を付けろというのか。
 とりあえずヒサメくんの時と同じような感じで氷をイメージしてみるけれど……不発。魔力の属性が違うのかな。この馬たちはもともとは草原でのんびり暮らしていたはずだから、とりあえずイメージを掴むために草原に立っている私の姿を思い浮かべて……。

『人間よ! 成功したようだな!』
 ふと足元を見ると、さっきまで乾いた大地だったのに、今は青々とした草原が
 というか今も広がり続けている。え、これどうやって止めればいいの? ……今まで使わずに貯められていた魔力が足元から一気に溢れ出して、止めようとしても止められないんだけど⁉︎
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