76 / 89
大平原
馬の貴族
しおりを挟む
「それで長さん、お馬さん。具体的にはこれからどうするの? いつまでもこうして逃げ続けるわけにはいかないでしょ?」
『それなのだが……むしろ人間、お前は何か策を思いつかないか? 俺らは「逃げ続けていればいつかは諦めるだろう」ぐらいに考えていたんだが、人間の数は増えるばかりで減る気配すらないんだよ。それにこうやって群れを大きくするのにも限度があるんだよな……』
長さんは今まで、襲われる魔馬の群れを見つけ出しては保護して逃げることを繰り返していたけれど、人間に対して反撃はしないという非暴力不服従のスタイルを維持してきたらしい。その結果、魔馬の頭数は増え続けて今のような超巨大な群れが完成したけど今度は逆にこの数の多さが自分たちの首を絞める結果になっているらしい。
そりゃ、これだけの大群で一斉に草を食べたら、あっという間に草原が荒野になってしまいそうだもんね。かと言って小さな群れだと人間に簡単に捕まってしまうらしいんだけど。
「でも、だったら……戦うしかないんじゃないの? このままじゃ魔馬っていう種族自体が絶滅しちゃうよ!」
『だがお主よ、人間どもは魔導を使うのだ。我らの中にも仔馬の奴のように簡単なものであれば使えるものはおるのだが、人間はそれこそ子供でも強力な魔導を使えるし、その威力も桁違いなのだ』
『こいつのいう通りだぜ。それに人間どもは魔道具なんてものまで使いやがるからな』
「そうなんだ。なかなか簡単にはいかないんだね……」
魔馬は名前に魔とあるぐらいだから、普通の馬と比べたら魔力量が多いんだけど、それでも人間の魔力量とは桁違いどころではすまないぐらいの違いがあるらしい。
魔馬の場合、平均的には300~400の魔力値になるんだけど、人間は子供でも9999以上だからね。カンストして測れないけどそもそも魔導の力比べをしても勝負にならないことは目に見えているってことか。
『お主よ、そう言えばお主は以前に契約魔導を使った時はなかなかの適性を見せていたな。長よ、この土地の権利は誰が管理しているのだ?』
契約魔導? ああ、ヒサメくんに魔力を借りてやったやつかな。確かにあの威力で魔導をポンポン使えれば戦争には勝てるかも知れないけど、そんな簡単にはいかないでしょ。まさか人間じゃなくて馬が土地を管理しているわけじゃあるまいし……。
『ああ、ここの土地の権利だったら今のところ8割は俺が確保しているぞ。こうして馬達を集める途中で少しずつ集めていたらいつの間にかな。つっても俺自身には魔力を使いこなせないし、中途半端に使える魔馬に手渡した結果簡単に暴発しちまったからおいそれと手渡すことはできないんだ』
『やはりな。おそらく元は小さな群れごとに細かく保有されていたのだが、群れが統合される過程で権利の方も集約されたのであろう。
なあ、長よ。その権利の一部をアカネに譲ってやってはどうだ? おそらくそれだけで戦争には勝てるぞ』
「いやちょっと待って、これってもしかして私が戦う流れなの?」
『確かに試してみる価値はあるか。言葉の通じぬ人間に渡すわけにもいかないし、そういうことなら俺に権利を手渡した馬たちも納得するであろうしな。人間、今から俺が持ってる権利を全て渡すからな!』
『お主よ、これでお主も貴族であるな!』
「え、いや、嬉しくない……」
長さんとお馬さんは少しずつ走る速度を落として不意に立ち止まった。お馬さんは私を乗せたままその場にしゃがみ込んで背中から降りるように促してくる。これ、やらなきゃいけない流れなのかな……。
『人間、お前に俺の持つ土地の権限を譲渡する。さあ右手を前に差し出すが良い』
「え、あ、はい? ……うわ⁉︎」
長さんに言われた通り右手を前に差し出すと、長さんは自分の顔を私の手に近づけて……手の甲に口づけをされてしまった。まるで少女漫画とかのワンシーンみたい! 相手が馬でさえなければだけど‼︎
馬さんの口が私の手から離れても、これと言って何かが変わったような感覚はない。もしかして失敗したのかも?
『お主よ、試しに何か魔導を使ってみるのだ。できるだけ被害のないように気をつけるのだぞ!』
気を付けろと言われても、そもそも理屈もよくわかってないのにどう気を付けろというのか。
とりあえずヒサメくんの時と同じような感じで氷をイメージしてみるけれど……不発。魔力の属性が違うのかな。この馬たちはもともとは草原でのんびり暮らしていたはずだから、とりあえずイメージを掴むために草原に立っている私の姿を思い浮かべて……。
『人間よ! 成功したようだな!』
ふと足元を見ると、さっきまで乾いた大地だったのに、今は青々とした草原が広がっている。
というか今も広がり続けている。え、これどうやって止めればいいの? ……今まで使わずに貯められていた魔力が足元から一気に溢れ出して、止めようとしても止められないんだけど⁉︎
『それなのだが……むしろ人間、お前は何か策を思いつかないか? 俺らは「逃げ続けていればいつかは諦めるだろう」ぐらいに考えていたんだが、人間の数は増えるばかりで減る気配すらないんだよ。それにこうやって群れを大きくするのにも限度があるんだよな……』
長さんは今まで、襲われる魔馬の群れを見つけ出しては保護して逃げることを繰り返していたけれど、人間に対して反撃はしないという非暴力不服従のスタイルを維持してきたらしい。その結果、魔馬の頭数は増え続けて今のような超巨大な群れが完成したけど今度は逆にこの数の多さが自分たちの首を絞める結果になっているらしい。
そりゃ、これだけの大群で一斉に草を食べたら、あっという間に草原が荒野になってしまいそうだもんね。かと言って小さな群れだと人間に簡単に捕まってしまうらしいんだけど。
「でも、だったら……戦うしかないんじゃないの? このままじゃ魔馬っていう種族自体が絶滅しちゃうよ!」
『だがお主よ、人間どもは魔導を使うのだ。我らの中にも仔馬の奴のように簡単なものであれば使えるものはおるのだが、人間はそれこそ子供でも強力な魔導を使えるし、その威力も桁違いなのだ』
『こいつのいう通りだぜ。それに人間どもは魔道具なんてものまで使いやがるからな』
「そうなんだ。なかなか簡単にはいかないんだね……」
魔馬は名前に魔とあるぐらいだから、普通の馬と比べたら魔力量が多いんだけど、それでも人間の魔力量とは桁違いどころではすまないぐらいの違いがあるらしい。
魔馬の場合、平均的には300~400の魔力値になるんだけど、人間は子供でも9999以上だからね。カンストして測れないけどそもそも魔導の力比べをしても勝負にならないことは目に見えているってことか。
『お主よ、そう言えばお主は以前に契約魔導を使った時はなかなかの適性を見せていたな。長よ、この土地の権利は誰が管理しているのだ?』
契約魔導? ああ、ヒサメくんに魔力を借りてやったやつかな。確かにあの威力で魔導をポンポン使えれば戦争には勝てるかも知れないけど、そんな簡単にはいかないでしょ。まさか人間じゃなくて馬が土地を管理しているわけじゃあるまいし……。
『ああ、ここの土地の権利だったら今のところ8割は俺が確保しているぞ。こうして馬達を集める途中で少しずつ集めていたらいつの間にかな。つっても俺自身には魔力を使いこなせないし、中途半端に使える魔馬に手渡した結果簡単に暴発しちまったからおいそれと手渡すことはできないんだ』
『やはりな。おそらく元は小さな群れごとに細かく保有されていたのだが、群れが統合される過程で権利の方も集約されたのであろう。
なあ、長よ。その権利の一部をアカネに譲ってやってはどうだ? おそらくそれだけで戦争には勝てるぞ』
「いやちょっと待って、これってもしかして私が戦う流れなの?」
『確かに試してみる価値はあるか。言葉の通じぬ人間に渡すわけにもいかないし、そういうことなら俺に権利を手渡した馬たちも納得するであろうしな。人間、今から俺が持ってる権利を全て渡すからな!』
『お主よ、これでお主も貴族であるな!』
「え、いや、嬉しくない……」
長さんとお馬さんは少しずつ走る速度を落として不意に立ち止まった。お馬さんは私を乗せたままその場にしゃがみ込んで背中から降りるように促してくる。これ、やらなきゃいけない流れなのかな……。
『人間、お前に俺の持つ土地の権限を譲渡する。さあ右手を前に差し出すが良い』
「え、あ、はい? ……うわ⁉︎」
長さんに言われた通り右手を前に差し出すと、長さんは自分の顔を私の手に近づけて……手の甲に口づけをされてしまった。まるで少女漫画とかのワンシーンみたい! 相手が馬でさえなければだけど‼︎
馬さんの口が私の手から離れても、これと言って何かが変わったような感覚はない。もしかして失敗したのかも?
『お主よ、試しに何か魔導を使ってみるのだ。できるだけ被害のないように気をつけるのだぞ!』
気を付けろと言われても、そもそも理屈もよくわかってないのにどう気を付けろというのか。
とりあえずヒサメくんの時と同じような感じで氷をイメージしてみるけれど……不発。魔力の属性が違うのかな。この馬たちはもともとは草原でのんびり暮らしていたはずだから、とりあえずイメージを掴むために草原に立っている私の姿を思い浮かべて……。
『人間よ! 成功したようだな!』
ふと足元を見ると、さっきまで乾いた大地だったのに、今は青々とした草原が広がっている。
というか今も広がり続けている。え、これどうやって止めればいいの? ……今まで使わずに貯められていた魔力が足元から一気に溢れ出して、止めようとしても止められないんだけど⁉︎
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる