怪盗聖女達は召喚した国から財宝奪って逃走するようです〜聖女なんて面倒な仕事誰がやるもんですか!

ニコ

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【お知らせ】
《聖女達の身につけていた物=聖具》といたしました。 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 鑑定式当日、グーハは未だに聖具を盗んだ者が捕まっていないことに危機感を覚えていた。まず、聖女達のいる神殿には聖結界が張られており、侵入するのは不可能である。そのため、神殿内の者だとあたりをつけていたのだが……

「なに? いなかったのか?」
「はい、真実魔法を使用して証言させたので間違いないかと……」

 そう、神殿内にはいなかったのである。そうなればもう手の打ちようがない。そして、聖女というのは称号があるのでは無く、聖具を持ってこの世界に来たことで聖女と判断されるのだ。加護は稀にこの世界の者達も貰っているので証明にはならないのである。

(聖具が無ければ聖女だと証明できないではないか!)

 グーハはギリっと唇を噛み締めながらどのようにして王に弁解するか必死で考えるのだった。


○○○


「さぁ、こちらへ」

 グーハは今日来なかった。別の神官さんに聖女服だと言う古代ギリシャ風の服を渡され、私達はそれを着て王宮に向かった。

 盗聴器はまだグーハに引っ付いているようで、私達がこっそり装着しているイヤホンからグーハの焦った声が聞こえる。

「『聖具がなければ聖女だと証明できないではないか!』って言ってるよ? 私の絆創膏あげようか」

 グーハの焦りようが凄まじいので、私は少し可哀想になり百合に尋ねた。絆創膏は私の鞄に入っていた救急セットの一部である。

「うーん、そうね。私たちが聖女だって証明できなかったらあの人たち何するか分からないし……」
「あ、ちなみに絆創膏の加護は"止血"だったよ」
「いらないからあげていいわよ」
「ラジャー」

 私の加護の"治癒"があるせいか、百合は絆創膏の加護を聞いた瞬間、即絆創膏を生贄にすること決めた。

 その後もグーハは焦りまくっており『私は終わりだ!』とか、『ああ、でも聖女達の加護がよければ免除されるかもしれない』とかコロコロ変わる意見に私達は笑いを堪えるのがとても大変だった。










「こちらです」
「「うわぁ」」

 王宮に連れて来られ、案内された部屋はとても豪華だった。まるでどこかのイギリス貴族の邸にでもいるようだ。そう、部屋一つがお屋敷のように広いのである。

「素晴らしいでしょう? ここにある物は全て国宝級に値するんですよ」

 自慢げに説明してくる神官さん。そして、私達はにっこりと笑顔をつくり感想を述べた。

「ええ、本当に素晴らしいお部屋ですね(※訳:お宝の山じゃん)」
「素敵!(※訳:売ったら結構な額になるわね)」

 表向きは大人しそうな雰囲気で、しかし、心の中ではおおよそ聖女とは言い難い事を考えていたのであった。

「今回はこちらで鑑定式を執り行います。聖女様方はーー」

 これからの予定を立ち位置を交えて教えてもらう。さながら中学生の時の卒業式の予行演習のようで、私達はげっそりとした顔になりながら神官さんの説明を聞いた。 
 
「ーーでは、私達は準備がありますので失礼いたします」

 そう言って部屋に私達を残したまま退出する神官さん。それを見届けた後、私はぐったりと椅子にもたれかかった。

「うげぇぇぇ、これから本番とか無理」
「確かにめんどくさいわね」

 類は友を呼ぶーーまさにその言葉が当てはまる瞬間であった。2人ともこういった堅苦しい式は苦手なのである。百合と私は同中だったが、2人してこういったような式典では爆睡していた。

「まさかここでもコレを体験することになるなんて……」
「ちょっと、絶対寝ないでよね! 今寝たら化けの皮が剥がれるわよ」
「分かってるって。寝ないよ! ……多分」
「寝たら分かってるんでしょうね?」

 拳を握り凄んでくる百合にピャッとなる。姿勢を正して勢いよく宣言した。

「寝ない‼︎」
「ならよし」

 うむ、と頷く百合。

 ……私達は何をしているのだろう?

 その後もわいわいと百合と楽しくおしゃべりしていると、鑑定式が始まる時刻に近づいたようで次々と貴族らしき人が入ってきた。

 勿論私達は、お喋りをやめてピシッと姿勢を正して座っているよ?

「ねぇ、まだなのかな?」
「静かにしなさい」

 こっそりと百合に聞けば、ピシャリと怒られた。うむ、今は聞いてはいけなかった時らしい。仕方なくまた前を向いて座った。

《お集まりの皆様。今日は来ていただきありがとうございます。これから鑑定式を行いますので魔法の使用は控えてください》

 暫くして、マイクのような器具を使いグーハが出てきた。鑑定を使用して見てみれば"聖具:拡張機"と出てきた。どうやら前の聖女の物らしい。

 いつもの神官服の上に、豪華なローブを身につけているグーハ。ニコリと笑顔を向けているが、私達のイヤホンからはグーハの心の声が聞こえていた。

『クソっ! 聖具は見つからなかったがなんとかするしかない‼︎』

 どうやらでっち上げをする事に決めたようだ。

「絆創膏……」
「鑑定された後に出すのよ」
「了解」

 ボソリと呟いた私に、百合が前を向いたまま答える。完全に演技モードに入っていた。

《では、先に聖女様方の加護の鑑定を行いたいと思います》

 グーハがそう言い、私達に目配せする。

『早くこっちに来い』

 心の声を聞く限り、どうやら相当余裕が無いようだ。ゆっくりとグーハの元へ向えば、中年の髭が濃いい厳つい男性が目の前に立った。

『ああ、もう時間がない。王よ、どうするおつもりですか?』

 ……王だった。

「よく来てくれた、聖女達よ。これから其方達を我が加護で鑑定させていただく。鑑定内容はこの魔導器具で映し出される故、確認するが良い」

 尊大な口調で説明する王様。視界の端で百合がペイッとこっそりポケットから出した盗聴器を王様に投げつけるのが見えた。 

 途端に片耳から聞こえる王様の心の声。それは思った以上に下衆だった。

『ふむ、異世界から来た故、期待はしていなかったが上玉だな。聖具はグーハが盗んだ事にすれば良いし……黒髪の方は儂がいただくとするか。後は周辺国に宣戦布告をして……』

 ずらずらと並べ立てられていく願望に顔が青ざめる。そしてもっとショックだったのは私がこの王にロックオンされた事だった。チラリと百合を見れば必死に笑いを堪えている。肩がふるふると揺れていた。

『ああ、怯えているのか? 可哀想に……今すぐ抱きしめて慰めてやりたい』

 そして、追加で反対の耳から聞こえるグーハの声。鑑定式中、私達は地獄を味わったのだった。長時間笑いを堪えないといけないこの苦しさを!

「では鑑定するぞ」

 心の中では下衆な事を考えている王だが、流石は貴族と言った所か厳かな雰囲気を醸し出しながら鑑定を開始した。

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