どうも初めまして! 異種族通訳者のアリスと申します!

わさびもち

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た……タダ働き……ですか!?

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「さて……これで今回の依頼は達成……で問題ないでしょうか?」
「おう。 それで構わねえぜアリス。 俺も色々と間違っていたようだ。 ありがとうよ」

 快活に笑う自称勇者さん。 ようやく間違いを認めてくれたようですね。 遅すぎますがまぁいいでしょう。

「約束の金貨一枚ですが……今手持ちあります?」
「……いやない」
「ですよねぇ……」

 金貨一枚みたいな大金を普段持ち歩くはずもなく。
 やっぱり持ち合わせていないようでした。

「それでは後日あなたのお家にお伺いしようと思うのですが……」
「分かった。 その時に支払いを済ませようか」
「ではそういう事で。 ええと……お住まいはどちらに?」
「……王都の……そうだな。 ちょっと変な場所にあるから王都の噴水で落ち合おう」
「……? 分かりました。 それでは三日後に」

 自称勇者さんの何やら含みのある言い方が少しばかり気になりましたが……とりあえず放置します。
 色々とありすぎて疲れたので。 早いところ帰りたいのです。
 キョロキョロと頭を動かして周囲を確認したところ、セシリアは何やら魔王さんと話し込んでいました。 

「おーいセシリア? 帰ろー?」

 一体何を……と少し気になりましたが、それよりも帰りたい欲求が勝ってしまったので私はセシリアに声をかけました。
 少しの間を置いて「了解したよ」と返答したセシリアを連れて私たちは帰路に着くのでした。

 ★★★★★

「いやー。 まさか帰りには箒を使う羽目になるとはねぇ……」
「全く面目ない。 連日のいざこざで思いのほか魔力を使いすぎていてね……」

 私のつぶやきに申し訳なさそうに応じるセシリア。
 いつものように移動魔法で楽々帰ろうとしたのですが……魔力不足が懸念されるとのことで大人しく箒で移動することに。
 一応は護衛であるセシリアの魔力切れは、私にとっての死活問題にも直結するので仕方がありません。

「まぁそんなに落ち込まなくてもいいよ。 こういうのも悪くは無いからねー」
「それもそうだね。 少し遅すぎるような気もするが……これもまた悪くないものさ」
「……安全運転なだけ」

 セシリアの言葉に非常に残念すぎる言い訳で返答した私。
 ぐぬぬ……セシリアに敵うわけないでしょ!!!

「それはそうとして……。 さっき魔王さんと何話ししてたの?」
「……ふふっ。 それは内緒さ。 また今度……本当に完成した時に見せてあげるよ」
「……? 何よー? 劣等生の私には理解できないってことー?」
「ふふっ。 もしかしたらそうかもしれないね」
「……嘘でもいいからフォローして欲しかった」

 ガックリと肩を落としてを続ける私。
 そんな私にセシリアはポツリと言いました。

「安心してくれよ。 きっとアリスの通訳業の役に立つさ」
「ふーん。それなら気長に待つとしようかなー」

 ★★★★★

 三日後。 約束の場所である噴水の前にやって来た私たちは……驚くべきものを目にしました。

「お恵みを……。 卑しい私に……どうかお恵みを……」

 浮浪者の如きボロボロの姿で道行く人々に施しを求める卑しい男……かの自称勇者さんがそこにいたのです。
 先日とはあまりに変わり果てた姿に仰天する私たちをよそに、そのあまりにも哀れな姿に心打たれた優しい人々が彼にお金を渡しておりました。
 ちらりと自称勇者さんの横を見ると……そこに積み上がっていた硬貨の山はざっと金貨一枚分ほどでした。
 まさか……と嫌な予感を感じたその時、私たちに気がついた自称勇者さんは勢いよく私たちの所へと駆け寄ってきます。

「あ……あなた達は! ……ど、どうぞこれを。 何とかかき集めました……ですからどうか命だけは!」
「「!?!?!?!?!?!?」」

 いきなり何のことだか分からない「命」という単語を出されて困惑する私たちを気にすることなく、自称勇者さんは続けます。

「借金はこれで返しましたので……どうかお命を!」
「「なっ……何がどうなって!?」」

 本当にどういう事だか分からない……。
 そんな私たちとは違い周りの人々はこの状況を独りでに理解してしまったようです。 そう「私たちが借金を取りに来た借金取りだとして」。

「なっ……まさか!?」

 嵌められた……。 そう気がついた時には遅すぎました。
 痛々しい程の視線が私に注がれてきます。 もしここでこの自称勇者さんから金を貰ったとして……この人たちの目には「無情にも借金を奪い取った借金取り」という風に映ってしまうことでしょう。
 ちらりと自称勇者さんを見下ろすと……私たちにだけ見えるようにニヤリ、としてやったりな笑みを浮かべていました。
 もとより料金を踏み倒すつもりだったのでしょう。 待ち合わせ場所に、よく人の集まる噴水という場所を選んだのも全てはこの為だったようです。

「く……くぅぅぅぅ!!!!!」
「……しょうがないね。 帰ろうかアリス。 ここにいても不利になるだけさ」

 唸る私と早々に見切りをつけて撤退を申し出るセシリア。
 完全にしてやられた……。 悔しさを滲ませながら私たちはタダ働きを享受するのでした。
 絶対に許しません……!!!!
 金の恨みは怖いですよ……。 そう固く胸に誓って。
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