41 / 69
第四十話 歓声
しおりを挟む
十メートル四方の大洞。そこにムラマサが飛び込んだ瞬間、洞の内壁が発光した。その効果によって、洞の内部の様子がハッキリ視認できた。
ムラマサのコックピット、その内部を覆う全周囲モニターに真っ直ぐ伸びるトンネルが映し出されている。その光景は、耀平に学園塔の通路を彷彿させせた。しかし、直ぐに違和感を覚えた。
光のトンネルは上向きの坂になっていた。
床の上には八本のレールが設置されている。それぞれ二本で一セットずつ。
レールには、スキー板のビンディング(ブーツ固定金具)のようなものが付いているものが有る。しかし、付いていないものも有る。
ビンディングが付いているレールは(正面から見て)右側四本のみ。左側はレールだけになっていた。
耀平はムラマサを操作して、右側のレールに近付いた。続け様に、レール上に設置されたビンディングにムラマサの足を嵌めて、シッカリ固定した。
ムラマサの両足は拘束された。その状態で、両膝を曲げて屈み込んだ。
まるでスキーのジャンプ台の発射体制――いや、和式トイレで用を足しているというべきか。
その無様な格好を晒した瞬間、コックピット内の正面モニターに「10」の数字が表示された。
〈10、9、8、7――〉
表示された数は秒毎で減っていった。それが「0」になった瞬間、ムラマサの体が超高速で前進した。
ムラマサが乗ったレールの正体は、ツクモス用の電磁カタパルトだ。
ビンディングが付いている方が「行ってきます」側。付いていない方は「ただいま」側になっている。
耀平を乗せたムラマサはレールガンの弾丸と化して光の通路を駆け上がっていく。その果てに、天然自然の光が溢れ出した。その中に入った瞬間、ムラマサの足を固定していたビンディングが外れた。
ムラマサは外に飛び出していた。その直後、耀平の視界に既知の光景が飛び込んだ。
トラックが描かれた地面と、それを囲む観客席。
昨日の開会式で使用していた場所――「ツクモス操縦訓練場」だ。その光景が全周囲モニターに表示された瞬間、ムラマサ頭部集音マイクに轟音が飛び込んだ。
轟音は、歓声だった。
訓練場の観客席が、満員御礼鮨詰め状態になっている。その上部に設置された巨大モニターは「観客が見たいもの」を映し出していた。
巨大画面に表示された黒い鎧武者。紛れも無くムラマサである。
画面のムラマサの姿は、ムラマサ本人の視覚センサーに捉えられていた。当然、耀平の視界にも映っている。
何だか英雄になった気がする。
耀平の鼻が少し伸びた。口許も緩んだ。暫くの間、グラウンド内をウロウロ歩き回って、観客にムラマサの威容を見せ付けていた。
しかし、耀平が優越感に浸れた時間は、それほど長くは無かった。
ムラマサが胸を張りながら歩き回っていると、訓練場にサイレンが鳴り響いた。その直後、ツクモス格納庫直通カタパルトの射出口から「白銀の騎士」が飛び出した。
その瞬間、一層大きな歓声が上がった。それと同時に、巨大モニターの映像が切り替わった。そこには先程飛び出した白銀の騎士が映っていた。
NTM03クラウソラス。
陽光の下、白銀の鎧が光り輝いてる。目立つことこの上ない。どこかの真っ黒な鎧武者と比べるべくも無いだろう。
その悲しい事実は、ムラマサに乗る耀平が一番よく分かっていた。
うぅ……急に恥ずかしくなってきたぞ。
クラウソラスが衆目を集める中、ムラマサは人目を忍ぶように抜き足差し足で練習場から抜け出した。
練習場から出たムラマサの前に、道幅二メートルの道路が現れた。それを道なりに進んでいくと、四車線の車道と合流した。
ムラマサは車道に飛び出して、そのまま走り出した。その最中、正面モニターにA3サイズの画面が現れた。
画面には現在地と思しき地図が映っている。そこに表示された道の真ん中に青い光点が灯っていた。その隣に〈NTM01 MURAMASA〉と表示されている。
Å3の画面は「ナビゲーション用サブモニター」だ。それを頼りに、ムラマサは道なりに北上した。
暫くすると、画面の端に〈4th Exercise Field〉という表示が現れた。そこに向かって走っていると、正面モニターにうっそうと生い茂る樹木群が映った。その中に向かってムラマサが飛び込んだ。
森林内では、車道は一車線に変わっていた。ムラマサは車道の左側を走った。
暫く走っていくと、正面モニターに灰褐色の巨大な壁が映り込んだ。その威容は、当然耀平の視界にも映っていた。
「ここかな?」
「ああ。ここじゃ」
耀平の呟きに、耀蔵(AI)が同意した。地図内でも、ムラマサを示す青い光点が第四演習場と重なっている。
「ここが――俺の初陣の戦場か」
戦場。その言葉を告げた瞬間、耀平の体が「ぶるっ」と大きく震えた。
ムラマサのコックピット、その内部を覆う全周囲モニターに真っ直ぐ伸びるトンネルが映し出されている。その光景は、耀平に学園塔の通路を彷彿させせた。しかし、直ぐに違和感を覚えた。
光のトンネルは上向きの坂になっていた。
床の上には八本のレールが設置されている。それぞれ二本で一セットずつ。
レールには、スキー板のビンディング(ブーツ固定金具)のようなものが付いているものが有る。しかし、付いていないものも有る。
ビンディングが付いているレールは(正面から見て)右側四本のみ。左側はレールだけになっていた。
耀平はムラマサを操作して、右側のレールに近付いた。続け様に、レール上に設置されたビンディングにムラマサの足を嵌めて、シッカリ固定した。
ムラマサの両足は拘束された。その状態で、両膝を曲げて屈み込んだ。
まるでスキーのジャンプ台の発射体制――いや、和式トイレで用を足しているというべきか。
その無様な格好を晒した瞬間、コックピット内の正面モニターに「10」の数字が表示された。
〈10、9、8、7――〉
表示された数は秒毎で減っていった。それが「0」になった瞬間、ムラマサの体が超高速で前進した。
ムラマサが乗ったレールの正体は、ツクモス用の電磁カタパルトだ。
ビンディングが付いている方が「行ってきます」側。付いていない方は「ただいま」側になっている。
耀平を乗せたムラマサはレールガンの弾丸と化して光の通路を駆け上がっていく。その果てに、天然自然の光が溢れ出した。その中に入った瞬間、ムラマサの足を固定していたビンディングが外れた。
ムラマサは外に飛び出していた。その直後、耀平の視界に既知の光景が飛び込んだ。
トラックが描かれた地面と、それを囲む観客席。
昨日の開会式で使用していた場所――「ツクモス操縦訓練場」だ。その光景が全周囲モニターに表示された瞬間、ムラマサ頭部集音マイクに轟音が飛び込んだ。
轟音は、歓声だった。
訓練場の観客席が、満員御礼鮨詰め状態になっている。その上部に設置された巨大モニターは「観客が見たいもの」を映し出していた。
巨大画面に表示された黒い鎧武者。紛れも無くムラマサである。
画面のムラマサの姿は、ムラマサ本人の視覚センサーに捉えられていた。当然、耀平の視界にも映っている。
何だか英雄になった気がする。
耀平の鼻が少し伸びた。口許も緩んだ。暫くの間、グラウンド内をウロウロ歩き回って、観客にムラマサの威容を見せ付けていた。
しかし、耀平が優越感に浸れた時間は、それほど長くは無かった。
ムラマサが胸を張りながら歩き回っていると、訓練場にサイレンが鳴り響いた。その直後、ツクモス格納庫直通カタパルトの射出口から「白銀の騎士」が飛び出した。
その瞬間、一層大きな歓声が上がった。それと同時に、巨大モニターの映像が切り替わった。そこには先程飛び出した白銀の騎士が映っていた。
NTM03クラウソラス。
陽光の下、白銀の鎧が光り輝いてる。目立つことこの上ない。どこかの真っ黒な鎧武者と比べるべくも無いだろう。
その悲しい事実は、ムラマサに乗る耀平が一番よく分かっていた。
うぅ……急に恥ずかしくなってきたぞ。
クラウソラスが衆目を集める中、ムラマサは人目を忍ぶように抜き足差し足で練習場から抜け出した。
練習場から出たムラマサの前に、道幅二メートルの道路が現れた。それを道なりに進んでいくと、四車線の車道と合流した。
ムラマサは車道に飛び出して、そのまま走り出した。その最中、正面モニターにA3サイズの画面が現れた。
画面には現在地と思しき地図が映っている。そこに表示された道の真ん中に青い光点が灯っていた。その隣に〈NTM01 MURAMASA〉と表示されている。
Å3の画面は「ナビゲーション用サブモニター」だ。それを頼りに、ムラマサは道なりに北上した。
暫くすると、画面の端に〈4th Exercise Field〉という表示が現れた。そこに向かって走っていると、正面モニターにうっそうと生い茂る樹木群が映った。その中に向かってムラマサが飛び込んだ。
森林内では、車道は一車線に変わっていた。ムラマサは車道の左側を走った。
暫く走っていくと、正面モニターに灰褐色の巨大な壁が映り込んだ。その威容は、当然耀平の視界にも映っていた。
「ここかな?」
「ああ。ここじゃ」
耀平の呟きに、耀蔵(AI)が同意した。地図内でも、ムラマサを示す青い光点が第四演習場と重なっている。
「ここが――俺の初陣の戦場か」
戦場。その言葉を告げた瞬間、耀平の体が「ぶるっ」と大きく震えた。
0
あなたにおすすめの小説
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる