魔法学校のしがない学生の俺が魔法部隊のエースになった件

ひなた紫織

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第14話 ラドニール神話伝説

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俺はアイン・ビロクシス。ラドニール魔法学園の生徒であり、かつラドニール魔法部隊の隊員だ。

つい昨日までのルシード港での防衛戦を受けて、ラドニール魔法部隊がラドニール八神を訪ねることが決まった次の日。エリスさんとクインさんがジェイソンさん達に相談を持ちかけていた。なんでも、ラドニール神話のことをよく知らないので勉強会をしてほしいとのことだ。

「そうか、そういえばエリスさんもクインさんもラドニール神話に馴染みがなかったな」
「ええ、ラドニール魔法部隊としてラドニール八神のご加護を頼みに行く以上、やはり知っておきたくて」

ジェイソンさんはエリスさんの言うことに完全同意といった風に大きくうなずいた。

「まったくその通りだ。折角だし、俺たちも今一度神話を学び直すいい機会だな」
「ちょうど当事者のカナウス様もいることだし、直接お話を聞きましょうよ」
「おお!メアリー、それは名案だ」

メアリーさんの提案もあって、カナウス様によるラドニール神話の講話会が開かれることとなった。そういえば俺も学校の授業で少し聞きかじっただけで詳しくは知らないな……

「原初、世界は天空界のみから構成されていた。私とルナが天空界の写し泉に月を写して、最初に創った神が太陽神アポロデと、双子の妹の星女神スターズだ。その後、生まれた地母神ガイアが地上界を創り……」

カナウス様の昔話はラドニール八神の誕生から始まった。俺の記憶が確かなら、この話は教科書のマジで最初の方で、俺たちが聞きたいラドニール神話大戦は教科書のわりと後ろの方だ。

これは長くかかりそうだぞ……と思った矢先に、ジェイソンさんが口を挟んだ。

「……あの、カナウス様」
「なんだねジェイソン」
「時間も限られているので、ラドニール神話大戦の話だけをかいつまんでいただけませんか」
「仕方ない。本来であればその予備知識から聞かせるべきなのだがな」
「今回エリスさんとクインさんに理解していただきたいのは、ラドニール八神が大きく3つの流派に分かれているという所で」
「成程。確かにそれぞれ立場が異なる神々に協力を仰ごうというのだから、ジェイソンの言う通りその部分を把握するべきか。では」

カナウス様は話を切り替えてラドニール神話大戦の話をしてくれた。神様は、太陽神アポロデ、地母神ガイア、火の神ファイアスを筆頭とした、人間と神様が関わりあって生きていくことを理想とする地上派、星女神スターズ、風雷神ブラスト、水の女神アクアを筆頭とした、人間と距離を取り見守るべきだとする天空派に派閥が分かれているのだ。

「カナウス様はどちらについたのですか?」
「私とルナはどちらにもつかず、中立の立場を貫いた。なにせ全員我らの子らであるからな。派閥が分かれた神々は最初こそ雌雄を決しようとしていたのだが……結論から言うとそれどころではなくなってしまったのだ」

俺やジェイソンさん達にとっては「それどころでなくなってしまった」理由が学校の授業の復習なのでわかって当然だ。ちなみに俺は忘れた。顔だけ平常心を保ってカナウス様の話の続きに全神経を集中させる。

「ハインリヒの存在だ。皆も知っての通り、本当に人間に力を貸してしまったのだ。あれから100年以上時が流れており、影響がフペイン帝国の外にまで広がろうとしている……というのが現在の状況だな」
「……あの」

クインさんが手を挙げた。

「ハインリヒ皇帝陛下が人間に力を貸すことの何が具体的に良くないんでしょう……?私にはよく分からなくて」
「地上派からしてみれば何も悪いことはないのだが、天空派の神々は神々の強大な力が人間に直接影響することによる人間の間でのパワーバランスの不均衡を懸念していたのだ。ハインリヒの介入によって地上界で人間の不平等な略奪や侵攻が横行すれば、天空派が正しいことが証明されるし、平和になれば地上派が正しいことが証明される」

話がいよいよむずかしくなってきた。さすがに俺もここは授業でやってない。

「神々が司るシンボルは世界の維持に必要不可欠だが……例えば、アクアが人間の願いを聞き入れず、自然のままにこちらを見守るだけであれば何がおこるかね。アイン少年」
「えっ俺ですか」

カナウス様に突然指名されてビビった。授業でやってない範囲なので、心持ちはいくらか楽だが、緊張する。

「ええと……水害がいくら起こっても人間は受け入れるしかなくなる……?」
「その通り。実際、今のところアクアは各地に祭壇がまつられていてな、人々の祈りを聞き入れて雨量や水害をある程度制御しているのだ。それがまったくなくなることはリスクであるからな。従って、私とルナは地上派と天空派のどちらが正しいか決めてはならないと考えているのだ。そして私はなんでも知ってる天空神であるからな。それが正しいこともお見通しなのだよ」
「はぁ」
「それをカナウス様が神様に伝えるのではだめなのですか?」
「だめだな。というかラドニール神話大戦のときにその話はしたし、どいつもこいつも言うことを聞かなかったからこの有様なのだ。私が力を行使することがあれば、それは世界が終わる時だろう」

カナウス様はやれやれ、と首を振った。

「そういうことなら、天空派の神様に協力をお願いするのはわりあい簡単ですね?」

エリスさんはこの話をこの短時間で完璧に理解したらしい。ジェイソンさんたちもうなずいている。
しかし、メアリーさんが重々しく口を開いた。

「そうなら楽なんだけど……ラドニール八神はアポロデ様とスターズ様、ファイアス様とアクア様がそれぞれ仲のいい双子だから、説得する順番には気を使うかなって」

そこにケビンさんが続ける。

「アポロデ様なんかはスターズ様が大事で大事で仕方ないシスコン神様だからなぁ。うっかり本人の前で派閥の話を持ち出すと面倒だぜ」
「じゃあなぜ対立派閥に……」

クインさんがあっけに取られている。その通りすぎる。

「2人が言っているように、俺たちがこの背景を把握しておくべきなのは巡礼する順序を決めるときに重要だからだな。気にしなくていいなら近場から順に巡ればいいし、そっちの方が楽なんだが」

そう言ってジェイソンさんはランスブルクの地図を広げた。どこからともなくツクレシーさんも登場し、地図にいろいろと書き込んでいく。

「最初はガイア様が無難かと思う。地上派の中でも中立寄りだし、神殿もそこまで遠くない」

ガイア様の神殿のあるランスブルク平原はラドニール平原のさらに先にある。アクア様の神殿が最も近所とはいえ、ガイア様は立地や他の神様との関係性からも最初の巡礼としてかなりふさわしい。カナウス様も小さくうなずいている。

「次がファイアス様かな。運がよければアインに炎魔法のおまじないをかけてもらえるかもしれないし」
「で、そのあとハインリヒが悪さをしてるっていうのとファイアス様も協力してくれることになってるって話を引っさげてアクア様の神殿だな」

続いてメアリーさんとケビンさんが順番を提案していく。さすが3人とも成績優秀なだけあってそつがない。

「そのあとのブラスト様とスターズ様とアポロデ様の順番はどうでもいいな。特にブラスト様は人手もそんなにだから……」

ジェイソンさんがそのあとの順番を雑に決めはじめた。ブラスト様の扱い、どうなってるんだろう。

「ケビンお前、好きなやつを1人連れて暇な時に行ってきて。俺とメアリーはスターズ様かアポロデ様で手分けしよう」

ケビンさんの扱いもどうなってるんだろう。

「ジェイソンお前さあ、そしたら俺は適当なタイミングでお前を引きずって行くんだけどいいんだな?」
「時期が間に合えばな」
「辞めておけ。お前たち2人が組んだところでなんにもならん。せめてセインかアイン少年にしておきなさい」

カナウス様がジェイソンさんとケビンさんをいさめた。ついでに俺を巻き込んできた。やめてほしい。

「しゃあねえな。じゃあアクア様の巡礼が終わったタイミングでまた考えるか」

ケビンさんが頭をぽりぽりかいて話を終わらせた。次の議題はガイア様に巡礼する計画だ。

「できるだけ人員を割きたいところだが、本部を空にするわけにもいかないからなぁ」
「私は常にここにいるから安心したまえよ」

カナウス様は当たり前みたいにそれだけ言って満足そうに後ろの方に座ってこちらを見守っている。ケビンさんとジェイソンさんは分かってましたと言いたげに小さくため息をついた。

「ガイア様は最初だから、まずジェイソンとセインが必須でしょ?エリスさんやクインさんに留守番してもらうのはどう?」

メアリーさんの提案にジェイソンさんが頷き、ツクレシーさんが人員配置を何パターンか用意してくれた。

「アインが出るか出ないか、どっちにするか迷うな」

ニルドラ先生……セインさんが考え込んでいる。俺の立場上、配置が難しいらしい。

「高校生だからねぇ、できるだけ出したくないけど、初回だけは出た方がいいかもね」
「ファイアス様とのつなぎを考えて今回は出てもらうことにするか?」
「あっ、それ名案!そうしよ、それでその場合ケビンが留守番だから本部も安心だね」

ケビンさんとメアリーさんが意気投合して配置が決まった。ジェイソンさんが豆鉄砲を食らったような顔をしてメアリーさん達を呆然と眺めている。どういう感情なんだ……。

「それじゃケビン、留守の間に色々頼んだ。ついでにブラスト様の人員も決めといてくれ」
「あいよー」

作戦会議が終わり、ジェイソンさん、メアリーさん、ニルドラ先生、俺の4人はガイア様の神殿に行くための装備を整える。

「ガイア様は地属性の神様だから炎魔法は分が悪い。魔装剣をちゃんとメンテナンスしておくんだぞ」
「はい、先生!」
「ついでだから新しく水魔法あたりを仕込んでみるか?難しそうだったら俺も手伝えるし」
「いいんですか!やりたいです!!」

久しぶりにニルドラ先生に魔装剣の面倒を見てもらえるので、俺はかなりテンションが上がった。久しぶりに魔装剣に魔法を仕込んでみたが、自分で思っていたよりもスムーズにできた。ニルドラ先生も褒めてくれたので嬉しい。

「おー!アイン、上達したなぁ!魔装剣もいい具合に仕上がってきてるな」
「へへっ、ありがとうございます!」
「完全にアインに馴染むまでは3年くらいかかるけど、数ヶ月でこの仕上がりなら上々だな。こんどの巡礼はこれをメインに運用してみなさい」
「はい!」

ジェイソンさんが通りがかりに俺の魔装剣をのぞきこんできた。ジェイソンさんはというと契約の確認と整理が終わったところのようだ。

「ああそうか、アインには魔装剣があるのか。有難い」
「おうジェイソン、そっちはどうだ?」
「俺の準備はほとんど終わってますね。あとはメアリーの魔道具待ちみたいなもんだから、明日にでも出発できるかなと。セインは?」
「おう、俺もすぐ出れる。んじゃ、隊長の裁量に任せますかね」

いよいよラドニール八神への巡礼行が始まる。俺はまだ見ぬラドニール八神に実際に相見えるまたとない機会であることに、この時全く気づいていなかった……!

つづく
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