普通の転生者は幸せになる計画を立てる。でも幸せって何?

tamura-k

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33 普通の転生者、祭りの前日に確認をする

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 フィルの謎の言葉? をどう考えるべきなのか。
 いやいや、好きだって言われているんだからどうもこうもないのは分かっているんだけど、自分の中でどうしたらいいのか相変わらず答えの出ないまま、僕は若干の罪悪感を感じつつ誘ってくれる人にもう一緒に行く人は決まったと言い続けた。
 ただ、「誰と行くの?」とか「あの見回り騎士?」という問いには「お答えできません」と頭を下げた。
 お祭りの当日になったら誰と行ったのかは分かっちゃうんだけど、未だにフィルに応えていないのに、他の人達にフィルと一緒ですとは言えなかったんだ。


 そうして祭りの前日。フィルは明日の打ち合わせがあって今日は遅くなると言っていた。僕もいつもよりは少し遅くなってから城を出た。街の中は祭りの前夜を感じさせるような忙しなさと高揚感みたいなものがあって、なんだかドキドキするような気がしながら宿舎に戻った。

「明日は……赤い花をつけるべきなのかな」

いやいやでも募集しているわけじゃないし。つけなくてもいいのかな。

「つけなくても声をかけられたりするのかな」
 
 でも白い花はつけられないものね。

「う~~~~ん」

 作るのが面倒で帰り際に買ってきたものをテーブルに並べて僕は唸りながら少し遅めの晩御飯を食べ始めた。

「遅いって言っていたけど何時に帰って来るのかな」

 二人で食べる食事に慣れてしまうと、一人で食べる食事は味気なく、なんなら淋しく感じてしまう。

「おかしいな。別に食事は一人でも二人でも変わりがないのに」

 そう呟くと余計に淋しくなるような気がして、僕は慌てて今日の幸せ集めを思い出した。最近は忙しくて中々幸せを集める事が出来ないけれど、今日は昼食が好きなメニューだった。これも幸せ。
 それから仕事がうまくはかどって、よしと褒められた。これも幸せ。
 でもその後は他の仕事を振られて少し遅くなってしまったけれど、それでも自分が出来る事が増えたからこれも幸せにしておこう。

「ふふふ、そうだ。昨日届いたブラッドからのお菓子を食べよう。そうしたらそれも幸せな気持ちになれるよね」

 そんな事をしていれば、きっとフィルが帰って来る。そうしたら明日は何時にどこに行けばいいのかを聞こう。あとは

「花はどうするか、聞いた方がいいのかな」




 お菓子を食べて、紅茶を淹れて飲んでいるとフィルが帰って来た。
 僕は考えていた事を出来るだけ手短にフィルに伝えた。
 明日はフィルは仕事で街の見回りをするから、どこで待ち合わせをしたらいいのか。フィルが騎士の格好なら僕も文官の格好で行った方がいいのか。
 そして、花はどうしたらいいのか。
 見る事が叶うならば、少しだけでも祭りの裏方の動きを見てみたいという事も伝えてみた。

 フィルは僕が残しておいた食事をつまみながら答えてくれた。
 人が多く出るので、ここまでフィルが迎えに来る事。
 文官の服ではなく普通の服で良い事。

「裏方の動きというのが具体的には分からないが、俺のメインは中央広場周辺で、出し物みたいなものも出るって言っていたからそれの準備みたいな者なら見られるかもしれないぞ」
「うん。じゃあそれで。あとは回りながら雰囲気を見ていくよ」
「ああ、そうだな。それから、花だけど」
「うん」
「赤い花をつけていると、誰から構わず声をかけてこられる可能性があるらしい」
「え!」

 まさか、そんなに恐ろしいお祭りなのか。

「何もつけないと誘って来る奴もいると聞いた」
「ひぇ~~~~~」
「だから、サミーが嫌でなければ……白い花をつけて俺と一緒にいてほしい」
「…………」
「サミーにそのつもりが無くてもいい。でも俺の隣で誰かに誘われるお前は見たくない」
「……うん。僕も誰かに誘われたりするのは面倒だから。でもそんな理由で、いいの?」

 僕がそう言うとフィルは小さく笑った。

「今は、それでいい」

 なんだか僕の幼馴染みは僕が気づかないうちにどんどん大人になっていく。そんな気がしたよ。

「サミー?」
「……うん。じゃあ、お言葉に甘えて、白い花をつけてフィルを盾にしながら祭りの現場視察を頑張ります」

 そう言うとフィルは吹き出しながら「まずは楽しもうぜ」と笑った。


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