普通の転生者は幸せになる計画を立てる。でも幸せって何?

tamura-k

文字の大きさ
48 / 54

48 普通の転生者、新年のご挨拶をする

しおりを挟む
 一月一日の新しい年を祝う日はベッドの住人だった。
 すまなそうな顔をしてフィルは出来るだけ早く帰るって仕事に行った。それは仕方がないよね。だってフィルは警護の騎士だから。
 有難い事に僕の出勤は三日からだったから、二日は大人しく過ごしながら対策を練った。
 
 どうやら僕はものすごく張り切って、張り切りすぎてキャパオーバーしたみたいだけど後悔はないよ。だってちゃんとフィルと話をしたし、僕の事を下に見ていたわけでなく、これくらい自分で解決出来なかったらカッコ悪いなんて思っていた事も分かったし、僕が実は頼りがいのある幼馴染みである事も分かったみたいだしね!

 という事で、新年も最初から2連勤で今日は夜勤付きってフィルの勤務体制にイラっとしながらも、大人しくしている事を約束して、お祖父様の家に書簡を出してから、転移をした。
 ふふふ、新年のご挨拶だよ。

 そしてフィルに起きた事、僕には今の所実害はないけれど、これがどういう意図で行われているものなのか、誰が関わっているのか、その後ろにどういう者が潜んでいるのかを調べたいと思う事を話した。
 そして更にはこの事に関しては始めに友人のブラッドから聞き、その後色々と目立つように聞いて回っていた時に接触をしてきた者達も報告。更には宰相閣下から騎士団内での新しいトップ争いが関係しているかもしれない事をリークされ、もう少し調べてみましょうかと声をかけられている事も伝えた。

「サミュエルはどうしたいと思っているのか」

 お祖父様から最初に出た言葉はそれだった。

「僕は、フィルがフィルらしく仕事が出来るようになってほしいし、出来れば宿舎の護衛も続けてほしい。あの宿舎には今は僕だけで、今年はどうやら新規の採用はないみたいなので、そうなると今年もまた僕だけが住む事になる。そこでフィルじゃない人と一緒に暮らすのは嫌だ」
「ふむ」
「えっと、えっと、フィルから、好きだって言うのは言われているんです。でも僕の中ではフィルは大事な幼馴染みで、だけど、えっと……まだ分かりません」
「そうか……」
「でも、今みたいに僕のせいでフィルが理不尽な事をされるのは絶対に許せないんです。なので、見返りがどういった事になるかは、向こうの方が数段上だし、どうなるか分からない部分はあるのですが、城内の事を知るチャンスがあるならば、宰相閣下の手の内に入ってみるのも一つかなって思っています」
「それで囲われるような事になってもか?」
「うう~~ん。養子でしたっけ? でも僕にそんな価値はないと思うんだけどな。そうなったら、逃げ出します。何としても。だって、やりたい事が出来ないような所に居ても幸せになれないでしょう?」

 お祖父様は吹き出すようにわらって「サミュエルらしい」と言った。そして、「やれるだけやってみなさい」と言った。そして……

「うちだけに顔を出したと分かったら悲しむだろうから、家にも挨拶はしていきなさい」
「はい」
「ああ、それからな。サミュエル」
「はい」
「幸せの答えは多分お前の中に、もう出ていると思うぞ」
「……は?」

 呆然とした僕にお祖父様とお祖母様はどこか楽しそうに笑った。


--------------
 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

黄金 
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。 恋も恋愛もどうでもいい。 そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。 二万字程度の短い話です。 6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

処理中です...