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第一章 転生
10 星空とレベルアップ
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さて、日が傾き始めて、俺達は女神様が特別プレゼントしてくれたテントを取り出して組み立てはじめた。
勿論テントなんて初めてだから何がなんだか分からなかったけれど、暗くなる前にはどうにか形になったよ。
ペグというテントを固定する大きな釘? みたいなものを打ち込むのがちょっと大変だったけど、人間やればなんとかなるもんだな。
テントはシェルター型という床がなくて地べたのままというものではなく、ゆったりめのドーム型で床というか、底というか、とにかく地べたではない。しかもその上に敷くマットもあって、さらにシュラフといういわゆる寝袋もあった。しかも虫が入ってきにくいメッシュのカーテンみたいなものも入口についている。
うん。全部『初めてのキャンプ ソロもファミリーもこれでおまかせ!』に書いてあった知識だ。
そして小さいけれどアルミテーブルとキャンプ用の折り畳みの椅子までついていたのはすごく有難かった。あのインベントリーというものがなかったらとても運べないなと思ったよ。あれはいわゆる空間魔法みたいなものなのかな。
「というわけで、無事、寝る場所と焚火が出来ました!」
「良かったです!」
嬉しそうな声を聞きながら俺は「ハハハ」と乾いたような笑いを漏らした。
うん。まぁ、そうね。良かったよ。焚火も『サバイバル読本 これであなたも生き残る』に載っていた、一番簡単で消えにくいっていう、二本の丸太と細枝を使ったロングファイヤー型という基本形を作って、火おこしは燃えやすいススキのような乾いた穂先の草に『お助け妖精』が「おまかせあれ~」と火をつけてくれたから、原始時代のような事をしなくて済んだし。
「ああ、すっかり真っ暗だ。星がすごいな」
焚火の灯りしかないから、星がものすごく沢山見える。きっとこういうのが星が降るようだって言うんだろうな。
そんな風に思った途端、俺の中で何かがブワッと広がったというか、湧き出した? 感じがして、思わずビクリと身体が震えた。
「うわ! なんだ? 風邪の引き始めかな……」
「! レベルアップです! アラタ様がやりたいと言っていたこの本の事が出来たので、ポイントが溜まったのです! おめでとうございます!」
『お助け妖精』は嬉しそうにパチパチと手を叩いた。
「あ、うん。そうなんだ。別にやりたかったわけじゃないんだけどね。まぁレベルアップはいい事だよね。ちなみに何か出来るようになるのかな?」
俺が尋ねると『お助け妖精』は、じーっと俺を見て「出来る事が分かるようになったのだと思います」と言った。
「え? どういう事?」
「はい。今まではどのような力があったのか分かりませんでした。でもレベルが上がってそれが自分で見られるようになったのです。多分」
「多分……」
多分なのか……。そんな俺の声にならない声が聞こえたかのように『お助け妖精』は慌てて言葉を続けた。
「えっと、えっと『ステータスオープン』と言ってください。それで見られるようになります」
「えええええ!」
それはあまりにも鉄板なネタというか、マジか……。まさかここにきてこんなに異世界感を感じるとは思わなかった。そう思いつつ俺はゆっくりと息を吸って、吐いて、あまりにも有名な台詞を口にした。
「ステータスオープン!」
だが、俺の前にはステータス画面は現れなかった。
現れなかったんだけど……ピロンと馴染みのある音が聞こえた。
「スマホ?」
また女神様が何かくれたのかな? レベルアップのお祝いとか? そんな事を思いつつスマホを見ると、そこに俺のステータスと思われるものが写し出されていた。
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勿論テントなんて初めてだから何がなんだか分からなかったけれど、暗くなる前にはどうにか形になったよ。
ペグというテントを固定する大きな釘? みたいなものを打ち込むのがちょっと大変だったけど、人間やればなんとかなるもんだな。
テントはシェルター型という床がなくて地べたのままというものではなく、ゆったりめのドーム型で床というか、底というか、とにかく地べたではない。しかもその上に敷くマットもあって、さらにシュラフといういわゆる寝袋もあった。しかも虫が入ってきにくいメッシュのカーテンみたいなものも入口についている。
うん。全部『初めてのキャンプ ソロもファミリーもこれでおまかせ!』に書いてあった知識だ。
そして小さいけれどアルミテーブルとキャンプ用の折り畳みの椅子までついていたのはすごく有難かった。あのインベントリーというものがなかったらとても運べないなと思ったよ。あれはいわゆる空間魔法みたいなものなのかな。
「というわけで、無事、寝る場所と焚火が出来ました!」
「良かったです!」
嬉しそうな声を聞きながら俺は「ハハハ」と乾いたような笑いを漏らした。
うん。まぁ、そうね。良かったよ。焚火も『サバイバル読本 これであなたも生き残る』に載っていた、一番簡単で消えにくいっていう、二本の丸太と細枝を使ったロングファイヤー型という基本形を作って、火おこしは燃えやすいススキのような乾いた穂先の草に『お助け妖精』が「おまかせあれ~」と火をつけてくれたから、原始時代のような事をしなくて済んだし。
「ああ、すっかり真っ暗だ。星がすごいな」
焚火の灯りしかないから、星がものすごく沢山見える。きっとこういうのが星が降るようだって言うんだろうな。
そんな風に思った途端、俺の中で何かがブワッと広がったというか、湧き出した? 感じがして、思わずビクリと身体が震えた。
「うわ! なんだ? 風邪の引き始めかな……」
「! レベルアップです! アラタ様がやりたいと言っていたこの本の事が出来たので、ポイントが溜まったのです! おめでとうございます!」
『お助け妖精』は嬉しそうにパチパチと手を叩いた。
「あ、うん。そうなんだ。別にやりたかったわけじゃないんだけどね。まぁレベルアップはいい事だよね。ちなみに何か出来るようになるのかな?」
俺が尋ねると『お助け妖精』は、じーっと俺を見て「出来る事が分かるようになったのだと思います」と言った。
「え? どういう事?」
「はい。今まではどのような力があったのか分かりませんでした。でもレベルが上がってそれが自分で見られるようになったのです。多分」
「多分……」
多分なのか……。そんな俺の声にならない声が聞こえたかのように『お助け妖精』は慌てて言葉を続けた。
「えっと、えっと『ステータスオープン』と言ってください。それで見られるようになります」
「えええええ!」
それはあまりにも鉄板なネタというか、マジか……。まさかここにきてこんなに異世界感を感じるとは思わなかった。そう思いつつ俺はゆっくりと息を吸って、吐いて、あまりにも有名な台詞を口にした。
「ステータスオープン!」
だが、俺の前にはステータス画面は現れなかった。
現れなかったんだけど……ピロンと馴染みのある音が聞こえた。
「スマホ?」
また女神様が何かくれたのかな? レベルアップのお祝いとか? そんな事を思いつつスマホを見ると、そこに俺のステータスと思われるものが写し出されていた。
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