お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k

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第一章 転生

25 魔法の勉強 ウォーター再び

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 茹でた姫竹と焼いた大きなタケノコに大満足した翌朝、まだちょっと重い胃に苦笑をしつつ、朝食はリンゴジュースだけにした。
 なんと! コパンがリンゴを風魔法で丸ごと生ジュースにしてくれたんだ! なんだか俺たちの食糧事情が毎日向上している。

「俺、コパンが『お助け妖精』で本当に良かった」
「あり、ありがとうございます! 私もアラタ様のお助け妖精になれて嬉しいです! カロリも、シチューも、ムカゴも、タケノコも、初めて食べたけれど、とても美味しかったし、【アイテム】には見た事もないものや知らない事が載っていて、楽しいです!」

 そう。このジュースも『美味しいキャンプ飯』の中にあった、即席スムージーの応用だ。
 ここに書かれているような小型のミキサーがないから俺には【アイテム】を取得出来なかったけれど、こんな風に違った形で作る事が出来るものもあるんだな。

「この次はバナナとアボガドというのをやってみます!」

 うん、それは栄養価が高そうだ。

 とりあえずテントとかまどを片付けて、この場所も念のためにマッピングした。
 この先に泊まるのに適した場所がなければその場をマッピングしていったんここに戻り、翌朝はその場所まで転移をして先に進む。または山芋とタケノコの里のように気に入った場所に戻って食料探しをしてから進んだ場所まで転移して先に進んで泊まる場所を探す。
 進んだり戻ったりになるけれど、コパンの転移が使える範囲なら可能な方法だ。それにジグザグかもしれないけれど確実に進んではいるしね。

「さて、じゃあ今日は昨日出来なかったウォーターをものにしてから昨日の場所に行こう。コパンよろしくね」
「はい! では今日こそお水を出せるようになりましょう。ウォーターは飲み水だけでなく、実は攻撃にも使えます。今は高ランクの魔物はいませんが、森の端に近くなってくれば強い魔物も出る可能性がありますからね」
「うん? どういう事? 確かこの森は女神の神気が強いから魔物がいないんじゃなかった?」
「はい。この辺は女神様の神気が強いので魔の力が強い魔物は住む事が出来ないのです。ですが、森の端に近くなればその神気も弱くなってきます。そうなると強い魔物も住む事が出来ます。なので、周辺の国からは深層の森と恐れられて人の手が入らない聖域のようになっているのです」
「…………神気が強いと強い魔物は住めないのか」
「はい。強い魔物ほど魔の力が強いので、神気が多いと苦しいのだと思います」
「ふぅ~ん、面白いな。普通は森の奥の方が強い魔物がいるイメージだけど、反対なんだな。奥の方が神の力に守られているのか」

 俺がそう言うとコパンはコクリと頷いた。

「なので、この辺りは弱い生き物は存在していると思います。力が弱いものは神気にあてられるというよりは神気に守られていると感じるのかもしれませんね」
「なるほど」

 という事はこの辺りは弱い魔物や普通の動物は暮らしている可能性があるのか。ああ、だから最初の時、テントやかまどに防御の結界を張っていたのかもしれないな。これだけ食べられるものがみつかる豊かな森は、俺達だけでなく弱い動物たちにとっても楽園になるのだろう。

「アラタ様? 何か心配な事でもありますか?」

 コパンが心配そうな顔をしておれを覗き込んできた。

「ああ、いや、何となく今まで何も出会わなかったから、この森の中には俺達しかいないのかもしれないなんて勝手に思っていた」
「ああ、そうですね。でも確かにここまで普通の人間たちが入ってくるというのは難しいと思います。それに弱いもの達は自分たちから姿を現すような事はしないでしょうし。でも動物や魔物達がいないわけではないので、念のために攻撃が出来る魔法も取得をしておいた方がいいでしょうね。それに森を出るなら、いずれは高ランクの魔物に遭遇する可能性もありますし」

 う~~~~ん。なんだか重要な情報が後から来るな。要するにこの森はどこか他の場所で暮らすためのある意味チュートリアル的なものなのかもしれないな。
 
「では、改めて、ウォーターですよ。頑張りましょう!」

 コパンの声を聞きながら俺は一つ息を吸って、吐いて、両手を前に伸ばして「ウォーター」と声を出した。

 十一度目の挑戦で俺の手から水が飛び出し、俺はとりあえず生活魔法の『ウォーター』を取得した。ただ、何となく子供の頃に遊んだ水鉄砲を想像してしまったため、飲み水として扱うのはもう少し時間がかかった。


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