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第二章 旅人から冒険者へ
39 虫は嫌いなんだってば
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真っ直ぐに向かってくるキラーマンティスを、見るのも嫌だけど、ちゃんと見て、俺はその顔と羽をめがけて『ファイヤーボール』を飛ばした。
草原で火を飛ばしても大丈夫なのかって心配もあるけど、当たれば他へは燃え広がらないんだって。当たらないで明後日の方に着弾するとまずいらしい。でもその時はコパンが水の魔法で対応してくれる事になっている。コパンもレベルが上がっているからね。
あれから色々と【アイテム】じゃない魔法も練習したんだよ。コパン先生と一緒にね。
とにかくコパンは自分がついていながら、俺が魔力切れを起こして倒れたっていうのが『お助け妖精』として許せなかったらしい。
なので、効率的に魔力を使いながら相手に致命傷を負わせるために、使える攻撃魔法を増やしていきましょうとなったわけだ。あとは使える魔法を強化する。
まぁ、街に行くのに高ランクの魔物を倒さないといけないかもしれないし、『攻撃は最大の防御』という俺の世界の言葉もあるしね。
魔力の炎は顔はよけられたけど羽には当たって、キラーマンティスは俺のところまで飛んでくる事は出来なかった。
それがむかついたらしく、ウィンドカッターらしいものを投げつけてきたけれど、俺の身体にはコパンが防御の結界を張っている。魔力の風の刃は俺に当たる前に結界に弾かれて消えた。
「ふふふふふふ、アラタ様の身体には傷をつけさせませんよ」
コパン、何だか怖いよ?
「ちょうどいい、実践的な練習が出来そうです。この前みたいに乱発したら駄目ですよ。明確に思い浮かべて強く放ってください!」
俺は頷いて、コパンが言っていた通りに『ウォーターカッター』を発動させた。
「アラタ様、魔法は想像力です!」
コパン先生はなかなかスパルタだ。でもやらなければ、これ以上虫と対峙するのは嫌なんだ! あの目も、鎌も、そして虫特有の足も……
「無理! もう無理無理無理無理!! ウォーターカッターァァァァァ!!」
アニメで見たように渾身の力を込めて俺は水の刃を放った。刃は綺麗にキラーマンティスに当たって、その体をスパッと切り裂く。その状態に俺は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「うえぇぇぇぇぇぇ! 見たくない、もう、見たくないぃぃぃぃ」
「やりましたよ! アラタ様! 練習は無駄ではなかったですね」
「コパン…………」
「何ですか?」
「回収は任せたから、俺に見せないで」
「分かりました! おまかせあれ~~~~!」
機嫌よくキラーマンティスの倒れた方に向かうコパンを見送って、俺は半泣きのままよろよろとオリーブの木に向かった。
良い事はコパンにとってだったのかな。だってでかい虫を見て、でかい虫と戦うなんて、俺にとっては全然良い事じゃなかったもん。
「……エキストラバージンオリーブオイルが出来たら何に使おうかな」
現実逃避をしながら俺は黙々と熟している実を集めた。するとキラーマンティスの処理が終わったらしいコパンが傍にやってきた。
「アラタ様、ハニービーの女王がお礼を言いたいそうです」
「! 無理だから、もう、無理だから!」
もうこれ以上虫を見るのは勘弁してほしい。
「蜂蜜を分けてくれるそうです!」
「…………蜂蜜……」
「あと、菜の花のタネも集めてくれました。欲しいのは種なんですよね?」
「うん。そう。菜種油も作れそうだね。きっと」
少し泣きたいような気持ちと、素直に蜂蜜は嬉しい気持ちが俺の中でせめぎあう。
そして、ハニービーの女王に会ったよ。うん。俺と同じくらいの背丈の蜂でした。
気を失わなかった俺を褒めてほしいって思った。
疲れ切って道に戻り、少し先にテントが張れるような場所を見つけて本日はもう終了。
夕食は蜂蜜をたっぷりとつけたパンとイノシシのステーキだ。もちろん塩気はほんのりプチプチ触感のアイスプラント。でも蜂蜜のお陰なのか、塩気がいつもよりも効いていたよ。
そしてキラーマンティスとの闘いのお陰か、この日、俺の全体的なレベルは四になった。
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草原で火を飛ばしても大丈夫なのかって心配もあるけど、当たれば他へは燃え広がらないんだって。当たらないで明後日の方に着弾するとまずいらしい。でもその時はコパンが水の魔法で対応してくれる事になっている。コパンもレベルが上がっているからね。
あれから色々と【アイテム】じゃない魔法も練習したんだよ。コパン先生と一緒にね。
とにかくコパンは自分がついていながら、俺が魔力切れを起こして倒れたっていうのが『お助け妖精』として許せなかったらしい。
なので、効率的に魔力を使いながら相手に致命傷を負わせるために、使える攻撃魔法を増やしていきましょうとなったわけだ。あとは使える魔法を強化する。
まぁ、街に行くのに高ランクの魔物を倒さないといけないかもしれないし、『攻撃は最大の防御』という俺の世界の言葉もあるしね。
魔力の炎は顔はよけられたけど羽には当たって、キラーマンティスは俺のところまで飛んでくる事は出来なかった。
それがむかついたらしく、ウィンドカッターらしいものを投げつけてきたけれど、俺の身体にはコパンが防御の結界を張っている。魔力の風の刃は俺に当たる前に結界に弾かれて消えた。
「ふふふふふふ、アラタ様の身体には傷をつけさせませんよ」
コパン、何だか怖いよ?
「ちょうどいい、実践的な練習が出来そうです。この前みたいに乱発したら駄目ですよ。明確に思い浮かべて強く放ってください!」
俺は頷いて、コパンが言っていた通りに『ウォーターカッター』を発動させた。
「アラタ様、魔法は想像力です!」
コパン先生はなかなかスパルタだ。でもやらなければ、これ以上虫と対峙するのは嫌なんだ! あの目も、鎌も、そして虫特有の足も……
「無理! もう無理無理無理無理!! ウォーターカッターァァァァァ!!」
アニメで見たように渾身の力を込めて俺は水の刃を放った。刃は綺麗にキラーマンティスに当たって、その体をスパッと切り裂く。その状態に俺は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「うえぇぇぇぇぇぇ! 見たくない、もう、見たくないぃぃぃぃ」
「やりましたよ! アラタ様! 練習は無駄ではなかったですね」
「コパン…………」
「何ですか?」
「回収は任せたから、俺に見せないで」
「分かりました! おまかせあれ~~~~!」
機嫌よくキラーマンティスの倒れた方に向かうコパンを見送って、俺は半泣きのままよろよろとオリーブの木に向かった。
良い事はコパンにとってだったのかな。だってでかい虫を見て、でかい虫と戦うなんて、俺にとっては全然良い事じゃなかったもん。
「……エキストラバージンオリーブオイルが出来たら何に使おうかな」
現実逃避をしながら俺は黙々と熟している実を集めた。するとキラーマンティスの処理が終わったらしいコパンが傍にやってきた。
「アラタ様、ハニービーの女王がお礼を言いたいそうです」
「! 無理だから、もう、無理だから!」
もうこれ以上虫を見るのは勘弁してほしい。
「蜂蜜を分けてくれるそうです!」
「…………蜂蜜……」
「あと、菜の花のタネも集めてくれました。欲しいのは種なんですよね?」
「うん。そう。菜種油も作れそうだね。きっと」
少し泣きたいような気持ちと、素直に蜂蜜は嬉しい気持ちが俺の中でせめぎあう。
そして、ハニービーの女王に会ったよ。うん。俺と同じくらいの背丈の蜂でした。
気を失わなかった俺を褒めてほしいって思った。
疲れ切って道に戻り、少し先にテントが張れるような場所を見つけて本日はもう終了。
夕食は蜂蜜をたっぷりとつけたパンとイノシシのステーキだ。もちろん塩気はほんのりプチプチ触感のアイスプラント。でも蜂蜜のお陰なのか、塩気がいつもよりも効いていたよ。
そしてキラーマンティスとの闘いのお陰か、この日、俺の全体的なレベルは四になった。
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