64 / 123
三章 進め進め
63 ピンチ!
しおりを挟む
何事もなく進んでいた。けれどピンチというのは突然やってくるものだ。
秋の実りの森があった拠点から次の拠点が見つかったのは五日後だった。そしてその翌日。
「何となく良いものが手に入る気がしますが、同時に何か困った事が起きるような気もします」
朝起きてそう告げてきたコパンに俺は「う~ん」と小さく唸って、とりあえず行ってみようと、その日の拠点を後にした。もちろん次のセーフティーゾーンが見つかるまでは、この拠点に戻ってくる事になるからマッピングも忘れないよ。
「もう少しレベルが上がれば、どんな事が起きるのかまでもっとはっきり分かるようになるのかもしれません」
今日は飛ばず、肩に載ったままでコパンがそう言った。何かが起こるのは分かっているからね。俺達は慎重くらいがちょうどいい。
まぁ、魔物たちが道に出てきた事は現時点でもないので、起きるとしたら道を逸れてからなんだけど、どんな場合でも万が一を考えるに越した事はない。
「レベルは仕方がないよ。大体どのタイミングでアップするのかも分からないしさ。毎日地道に使っていくしかないかなぁ」
「アラタ様は何かアップしたいスキルがあるのですか?」
「あ~、うん。俺はねぇ【模倣】のスキルをアップしたいんだよね。出来るかどうかは分からないんだけさ、もしもレベルがアップしていったら、【アイテム】の本に載っているものがそのまま【模倣】出来ないかなぁって」
「ええええ! それは出来たらすごいですね!」
さすがのコパンも肩の上で立ち上がってしまった。おお、三十センチが肩の上で立つとやっぱり存在感があるな。でも重さはほとんどないけど。これで重かったらとても肩の上は無理だからね。
「出来たらね。あると便利なグッズとかも載っていたし。まぁ魔法があるから、その辺りはごり押しでどうにかなっちゃうんだけどさ」
「そうですね。でもまだ食べた事のないものも沢山載っていましたからね! それが【模倣】で食べられるならすごい事です!」
う、うん。そうだね、コパン。色々載っていたけど、食べ物一択なんだね! でもそんなに食べても太らないなんて妖精っていいなぁ。人間だったら毎日どこに入るんだ? っていうくらい食べていたら確実にヤバい事になるよ。
あ、話が逸れた。
「まぁ、街に行ってから売れるものが増えたらいいなとも思っているしね」
「ああ、なるほど! ではアラタ様のレベルがアップするようにお祈りしますね」
「ありがとう」
そんな事を話しながら昼近くなり、そろそろどこか道を逸れてみようかって思っていた時だった。
「あ……」
「コパン?」
「この先を左に言った方に何かありそうな感じです」
「よし分かった。左だな。大丈夫、コパンの『予見』はよく当たるからね。今日もよろしくね!」
「はい、おまかせあれ~~~~!」
俺とコパンは左側の森の中に入っていった。
◆ ◆ ◆
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「アラタ様! 大丈夫です! アルクタランチュラは、タランチュラだけど毒のない魔物ですから!」
「そういう事じゃないんだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「あれの糸は貴重なんですよ。高く売れるし、お洋服だって作れます!」
「それとこれとは別ぅぅぅぅぅ!」
俺はものすごい勢いで森の中を走っていた。コパンはその背中にしがみついて俺を説得しているんだ。
だけどいくらオークのような凶暴なものではないと言われても、無理なものは無理だ。だって、だって、だって!
タランチュラなんだよ! しかも魔物だからでかいの! 毛がワサワサしているような巨大な蜘蛛だ。
しかも赤い目が四つもある! そいつが八本の足で移動するなんて見るのも考えるのも嫌なんだってば!
「水の鎖で縛り付けてしまいましょう! バラバラにしちゃうと糸が駄目になっちゃいますから」
「無理!」
「あ! アラタ様! そっちにはシルクタランチュラがいます!」
言われて前を見ると森の中に大きな蜘蛛の巣が張られていて、青い目が光っているのが見えた。
「く、蜘蛛の森だなんて聞いてないよ!」
「すみません。そこまでは分からなかったんです。でも糸はとてもいい布になりますから、きっといい事っていうのはお洋服の素材が取れるって事だったんだと思います」
ここまで言われて俺はガクリと膝をついた。まさしく前門の虎後門の狼だ。どっちも巨大な蜘蛛だけど。
「……解体は無理だから……」
「分かりました。解体はおまかせあれ~!」
「収納もコパンがしてくれ。俺のインベントリに入れるのは嫌だ」
「それもおまかせあれ~~!」
子供か! って言葉を口にしながら俺は迫ってくる巨大な蜘蛛たちを次々と『ウォーターチェイン』で縛り上げ、その頭をコパンが水球に閉じ込めてしまった。しばらくバタバタしていた体は動かなくなり、俺たちは綿麻の糸を吐くアルクタランチュラと絹の糸を吐くシルクタランチュラをゲットしたのだった。
----------
アラタさん…………
秋の実りの森があった拠点から次の拠点が見つかったのは五日後だった。そしてその翌日。
「何となく良いものが手に入る気がしますが、同時に何か困った事が起きるような気もします」
朝起きてそう告げてきたコパンに俺は「う~ん」と小さく唸って、とりあえず行ってみようと、その日の拠点を後にした。もちろん次のセーフティーゾーンが見つかるまでは、この拠点に戻ってくる事になるからマッピングも忘れないよ。
「もう少しレベルが上がれば、どんな事が起きるのかまでもっとはっきり分かるようになるのかもしれません」
今日は飛ばず、肩に載ったままでコパンがそう言った。何かが起こるのは分かっているからね。俺達は慎重くらいがちょうどいい。
まぁ、魔物たちが道に出てきた事は現時点でもないので、起きるとしたら道を逸れてからなんだけど、どんな場合でも万が一を考えるに越した事はない。
「レベルは仕方がないよ。大体どのタイミングでアップするのかも分からないしさ。毎日地道に使っていくしかないかなぁ」
「アラタ様は何かアップしたいスキルがあるのですか?」
「あ~、うん。俺はねぇ【模倣】のスキルをアップしたいんだよね。出来るかどうかは分からないんだけさ、もしもレベルがアップしていったら、【アイテム】の本に載っているものがそのまま【模倣】出来ないかなぁって」
「ええええ! それは出来たらすごいですね!」
さすがのコパンも肩の上で立ち上がってしまった。おお、三十センチが肩の上で立つとやっぱり存在感があるな。でも重さはほとんどないけど。これで重かったらとても肩の上は無理だからね。
「出来たらね。あると便利なグッズとかも載っていたし。まぁ魔法があるから、その辺りはごり押しでどうにかなっちゃうんだけどさ」
「そうですね。でもまだ食べた事のないものも沢山載っていましたからね! それが【模倣】で食べられるならすごい事です!」
う、うん。そうだね、コパン。色々載っていたけど、食べ物一択なんだね! でもそんなに食べても太らないなんて妖精っていいなぁ。人間だったら毎日どこに入るんだ? っていうくらい食べていたら確実にヤバい事になるよ。
あ、話が逸れた。
「まぁ、街に行ってから売れるものが増えたらいいなとも思っているしね」
「ああ、なるほど! ではアラタ様のレベルがアップするようにお祈りしますね」
「ありがとう」
そんな事を話しながら昼近くなり、そろそろどこか道を逸れてみようかって思っていた時だった。
「あ……」
「コパン?」
「この先を左に言った方に何かありそうな感じです」
「よし分かった。左だな。大丈夫、コパンの『予見』はよく当たるからね。今日もよろしくね!」
「はい、おまかせあれ~~~~!」
俺とコパンは左側の森の中に入っていった。
◆ ◆ ◆
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「アラタ様! 大丈夫です! アルクタランチュラは、タランチュラだけど毒のない魔物ですから!」
「そういう事じゃないんだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「あれの糸は貴重なんですよ。高く売れるし、お洋服だって作れます!」
「それとこれとは別ぅぅぅぅぅ!」
俺はものすごい勢いで森の中を走っていた。コパンはその背中にしがみついて俺を説得しているんだ。
だけどいくらオークのような凶暴なものではないと言われても、無理なものは無理だ。だって、だって、だって!
タランチュラなんだよ! しかも魔物だからでかいの! 毛がワサワサしているような巨大な蜘蛛だ。
しかも赤い目が四つもある! そいつが八本の足で移動するなんて見るのも考えるのも嫌なんだってば!
「水の鎖で縛り付けてしまいましょう! バラバラにしちゃうと糸が駄目になっちゃいますから」
「無理!」
「あ! アラタ様! そっちにはシルクタランチュラがいます!」
言われて前を見ると森の中に大きな蜘蛛の巣が張られていて、青い目が光っているのが見えた。
「く、蜘蛛の森だなんて聞いてないよ!」
「すみません。そこまでは分からなかったんです。でも糸はとてもいい布になりますから、きっといい事っていうのはお洋服の素材が取れるって事だったんだと思います」
ここまで言われて俺はガクリと膝をついた。まさしく前門の虎後門の狼だ。どっちも巨大な蜘蛛だけど。
「……解体は無理だから……」
「分かりました。解体はおまかせあれ~!」
「収納もコパンがしてくれ。俺のインベントリに入れるのは嫌だ」
「それもおまかせあれ~~!」
子供か! って言葉を口にしながら俺は迫ってくる巨大な蜘蛛たちを次々と『ウォーターチェイン』で縛り上げ、その頭をコパンが水球に閉じ込めてしまった。しばらくバタバタしていた体は動かなくなり、俺たちは綿麻の糸を吐くアルクタランチュラと絹の糸を吐くシルクタランチュラをゲットしたのだった。
----------
アラタさん…………
213
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる