お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k

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三章 進め進め

71 食欲は力!

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「沢山来ましたね! アラタ様、頑張りましょう!」

 近づいてくるオークを前にコパンはやる気満々だ。
 でもきっと今のコパンには、目の前のオークが食材にしか見えないんだろうなぁ。

「私は手っ取り早く頭を狙います。アラタ様はこの前の『ウォーターウォール』からの『ウォーターボール』で仕留めるのが一番お肉が傷つかないかと思います!」

 そう言ってコパンはフヨフヨと俺の肩を離れた。そして集団から早めに抜けてこちらへ向かってきた先頭のオークの頭を『ウィンドカッター』でスパッと切った。ドオッと倒れた体。
 一瞬だけひるんだオークたちは、次の瞬間怒ったように足を速める。

「行きますよ、アラタ様!」
「了解、コパン」

 オークと俺たちの戦いが始まった。


   ◆ ◆ ◆ 


「ブヒィィィィィ‼」

 森の中にオークの悲鳴? が響く。
 弱い人間の気配を察知してやってきたオークの集団は、今想定外の返り討ちにあっている。
 まぁ、コパンにしてみれば、これもある意味<リベンジマッチ>。たとえメイジやアーチャーなどの上位種や、ジェネラルという高位種の統率者がいなくても、オークはオークだ。

「『ウィンドカッター』!」

 コパンは二匹目のオークの首も容赦なく跳ね飛ばした。それに怒ったオークがブンと子供の頭ほどもあるような石を投げつけてくる。けれどそれは俺にぶつかる前に弾けて飛んだ。
 コパンは忘れずに俺自身に防御結界を張っているんだ。もちろんこれは敵の攻撃を弾いたり、やわらげたりするだけでなく、実は虫よけにもなるんだよね。
 だって戦闘中に足に何かがよじ登ってきたら……まずいでしょ。

「アラタ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫。ほら、来たよ。『ウォーターウォール』『ウォーターボール』」

 オークたちは水の壁にぶつかって、そのまま頭を水球に閉じ込められる。うん。見ているとちょっときついから穴の中に入ってもらおう。

「『フォール』」

 頭に水球を被った何体かのオークが足元に開いた穴に落ちた。
 俺はそのまま次の標的に同じ魔法を繰り返す。コパンも同じように短く転移をしながら『ウィンドカッター』を繰り出す。
 そして、十二体いたオークは全て倒れたのだった。
 リベンジマッチはコパンと俺の圧倒的勝利となった。


   ◆ ◆ ◆

 
「解体は拠点に帰ってからにしましょう」
「うん。その方がいいだろうね」

 アイテム魔法の【解体】と使えば一瞬なんだけど、十二体もいれば多少時間はかかるし、そうしている間に新たに何か来るとまずいのでサクッとそのまま収納をした。
 インベントリの中に魔物の死体をそのまま入れるのは未だに抵抗がある事が分かっているのでコパンが「入れておきます」とさっさと収納してくれた。本当に有能な『お助け妖精』だ。

 オークが倒された後、森はとても静かで、多分動物たちに俺たちがオークよりも上位の者だと判断されたんだろうね。ずっと息を殺すように隠れているのも可哀想なのでこれ以上は進まずに引き返す事にした。
 道の方に戻りながらクルミを見つけた。それから欲しいと思っていた雑穀も。
 ここでコメが見つかれば万々歳だったんだけどなかなかそううまくはいかないな。
 それでも雑穀のいくつかがまさか森の中で見つかるとはね。もしかしたら『神気(低)』まで来たご褒美かもしれないな。

「アラタ様、それは草ですよ」
「うん。でもほら実が生っているだろう? 食べられるんだよ。パンとはまた違った味だよ。いつか、米を見つけたいけれどね」

 見つけたのはもち麦・あわ・きび・ひえ・キヌア。
 普通は白米に混ぜて炊くんだけど肝心の白米がないからね。
 だけど 俺は『自給自足生活をはじめよう』を今までに何度も読み返していた。だから見つけたこの五種がどんなものだか分かるし、なんなら詳しくなった【鑑定】もざっくりとした調理方法を教えてくれる。
 それにもち麦があったのはとてもラッキーだった。もち麦だけでもそれなりに美味しいみたいだし、あわ・きび・ひえはイネ科の植物だ。キヌアは単独でも主食になるって書かれていたと思う。
 まぁ、何事もやってみるしかないね。

 コパンは収穫しながらも不思議な顔をしていた。それでも「オークのお肉、楽しみだね」というと、ものすごくキラキラとした目をして「はい!」と元気よく返事をした。
 あまりに素直で良い返事だったので、俺はおかしくて、楽しくて、そして俺の『お助け妖精』が本当に可愛らしくて、頭の中で『豚の角煮』が何に載っていたかを思い出していた。


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