お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k

文字の大きさ
76 / 123
三章 進め進め

75 なぜか洞窟探検に

しおりを挟む
 前に進むはずだったんだけど、なぜか俺たちは森の中を野ネズミたちに案内されて進んでいる。

「…………なんだっけなぁ。連れていかれたら「娘を嫁にって」いやいや、あれは風とか壁とかで、人間は出てこない。ええっと……人がネズミに招かれるのは……おむすびころりんだったかな」
「アラタ様、おむすびってなんですか?」

 俺の独り言をしっかりと聞き取って尋ねてくるコパンに「今度作ってみよう」って答えて、俺は意外と早く進んでいくネズミたちの後を追った。そして…………

「ちゅ!」
「ここですって言っています」
「…………ここかぁ」

 目の前には今までこの森の中では見た事がなかった洞窟があった。当たり前だけど中は暗い。

「どうやらミスリル鉱がある穴みたいですね」
「ああ、そうなんだねぇ」
「アラタ様、頑張っていきましょう!」
「…………暗い所には沢山いそうだよね」
「え?」
「俺、ミスリルは」

 どうでもいいかもしれない、そう言いかけた瞬間、目の前にいたネズミたちがパーッと散った。

「え? 何? どうした?」
「何かの気配があります。…………なんだろう、何だかものすごい音が……」

 そう言った途端洞窟から飛び出してきたのは無数のコウモリだった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「大丈夫です、アラタ様には防御の魔法がかかっています! それにコウモリは虫ではありません!」

 力強い言葉をありがとう、コパン……
 確かに大量のコウモリたちは俺には当たらない。当たろうとするとはじき返されている。ううう、ここまで守られていて行きたくないなんて言えないよね。

「よし、コパン。中に入ってみよう」
「分かりました! 灯りはおまかせあれ~!」

 そう言うとコパンはボールのような光を空中にふわふわと浮かせた。

「へぇ、面白い」
「えへへへ、ライトを少し小さくしてウォーターボールみたいにいくつも作ってみました」
「うん。いいね。さすがコパン」
「私はアラタ様の『お助け妖精』ですからね。それにしてもすごいコウモリの数でしたね。でもあれだけコウモリがいたら虫はいないと思いますよ」
「…………それは何より」

 俺はその言葉に励まされるように洞窟を進んだ。
 時折小さなトカゲのようなものがいたけれど、特に身体にくっつかれなければ大丈夫。これが虫だったら叫んでいるけどね。
 壁沿いにミスリル鉱がないか【鑑定】をかけながら歩きつつ、ネズミたちはどうしただろうかって思った。
 ものすごいスピードで逃げ出したから大丈夫だと思うけど。まあ出てきたのは普通のコウモリみたいだったからネズミは食べないと思う。さっきコパンが言っていたように、虫や果物なんかを食べるんだよね。
 でも世の中には肉食の蝙蝠もいると昔テレビで見た事があったな。

『お兄ちゃんってさ、虫が駄目なのに、こういうのは見られるんだよね』

 ふとそんな環の言葉を思い出して、小さく笑いが漏れた。

「アラタ様?」
「なんでもない。虫だらけじゃなくてよかったよ。ああ、あのあたりがほんのり光っている。あれがそうなのかな」

 視界の中にコパンのライトボールとは異なる光が浮かび上がった。
 ほんのりと青白いような、不思議な光だ。

「……綺麗だなぁ」

 ミスリルっていうのはどんなものになるんだろう。よくラノベでは剣とかになっていたような気がするけど。俺に剣は必要ないしなぁ。金属なんだから別に何にしてもいいんだよね。

「ええっとどうやって採ろうか。ツルハシなんてないもんねぇ。大体あってもミスリルに太刀打ちは出来ないんじゃなかな。あ、サハギンの銛があるけど土の部分ならどうにかなるかな」
「そうですね。後は魔法で土の部分だけをとばしてみるとか」
「う~~~~ん、それなら水圧上げて水をぶつけてみるか」

 こういう時に『抽出』とか出来たらいいのにな。その物質だけを取り出すような力。金鉱石とか鉄鉱石とか見つけた時もチラッとそう思ったんだよね。こうさぁ、吸い出すみたいなイメージでね……。

 ピロン……とスマホが鳴った。

「え? レベルアップ?」

 でもこの洞窟の中でスマホを取り出すのは危険だよね。後で確認をしてみる事にしよう。まずはせっかく見つけたミスリルをどうにかして…………

「…………こ、コパン、あれ、何だと思う?」

 視界の端に映ったのは銀色のつるんとしたものだった。なんだろう。なんだかとても見覚えがあるような気がする。でも、ラノベに出てきて、漫画やアニメになっていたものは銀色ではなかった、ような気がする。

「……あれは……スライムではないでしょうか。多分、鉱物性のスライムで……えっと……ミスリルをとってますね……」

 さすがのコパンの声がちょっと強張っていた。



-----------------





 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...