お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k

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三章 進め進め

76 ラノベの定番

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 ミスリルがある壁の前でポヨンポヨンと揺れているような球体というか軟体? を【鑑定】すると『ミスリルスライム』と出た。スライムのレア種らしい。

「やっぱりスライムか。という事は酸を吐くのかな」
「攻撃をしてきたらそうかもしれませんね。でもさすがによく分かりません」

 うん。鑑定でもあまりにレア過ぎて生態はよく分かっていないみたいだ。

「そうか……じゃあ、どうしようか」
「とりあえず、捕まえましょう」
「え⁉」
「ミスリルを食べているんですから、ミスリルを蓄えているんでしょう。分裂するのは面倒なのでカッター系は使わないでくださいね」

 そう言うとコパンはスライムを大きな水球の中に閉じ込めてしまった。
 水の中でゆらゆらと揺れていた銀色の物体はやがてパタリパタリと水の底に沈む。

「うわぁ……」
「怒って攻撃を始める前に終わらせてしまいましょう。ミスリルを溶かすような酸を吐かれたらひとたまりもありませんよ」
「! 分かった!」

 俺とコパンは銀色のスライムたちをひたすら水に閉じ込めた。もしかしたら洗濯機のように回した方が早いかなと思ってそれも試してみた。もちろんコパンも「やってみます!」と嬉しそうに真似をしていた。
 そして数分後…………

「ほんとにミスリルだ……」

 辺りは銀色のミスリル鉱石が沢山転がっていた。スライム自身は死んでしまうと溶けてしまうので、身体に取り入れていたミスリルだけが残るのだ。それをコパンが風魔法で収納していく。

「それにしてもすごいなぁ。こんなものを好んで取り込むなんて」

 青白く光るミスリル鉱石が埋まっている土壁。スライムたちがいなくなったそこに近づいて、俺はそっと壁に触れた。その瞬間。

「え…………」
「アラタ様⁉」

 壁の中からゴトンと音を立てて、銀色の塊が落ちてきた。

「…………まさか」

 俺はもう一度壁に手をついて、今度は声に出して『ミスリル抽出』と言ってみた。すると再びゴロンと銀色の塊が壁から落ちてくる。

「す、すごいです! アラタ様はすごいです! 何も使わずにミスリルを壁の中から取り出すなんて、アラタ様は天才です!」

 コパンがものすごい勢いで声を上げた。

「…………『抽出』、ほんとに取得出来たのか」

 俺は呆然と呟いた。なんかもう、びっくりするっていうか、本当に…………

「魔法は想像力だね! コパン」
「! はい! その通りです! でも魔力量は大丈夫ですか? 初めての魔法は結構魔力を使うはずです」
「あ、ああ、うん。大丈夫かな」

 俺はそう答えて、二十センチ四方もあるような塊を持って

「おも!」

 即座にインベントリに入れた。そう言えば金のインゴットだって、スマホくらいのサイズで一キロとかあるんだよな。ミスリルの重さってどれくらいなんだろう。
 そう思いつつ、あと三回ほど同じように抽出をしてから、今度は【補充】をして試してみた。

「金や銀と違ってこれは【補充】出来るのか。まぁ【補充】が出来るなら。これ位で十分かな。コパンが集めてくれたスライムの分もあるしね。色々試したり出来そうだ。よしコパン、そろそろ帰……」
「何か来ます」

 そう言うとコパンが素早く俺の肩に戻ってきた。

「うん……」

 嫌な予感がする。洞窟という閉鎖されたような空間の中で戦うのは不利かもしれないってそんな事が頭をよぎった。あのオークの集団の時ほどではないけれど、肌がピリピリとするような不安感があるんだ。

「とりあえず、洞窟の入り口まで転移しよう。それくらいの距離なら俺にも出来る。ここにいるのが何か確かめてから道までマッピング転移をしてもいいような気がする」
「分かりました」

 グァッという不気味な音が聞こえた瞬間俺たちは洞窟の入り口に向かって走り出した。それに気づいて追いかけてくるいくつもの気配。

「コパン!」
「おまかせあれ!」

 その瞬間俺たちは洞窟の入口へ転移をした。
 これで暗くて狭い空間の中で何か分からないものと戦う事はなくなった。
 森の弱い生き物たちは、多数のコウモリが飛び出してきたという事だけではなく、異様な何かを感じていたようで、洞窟の出口の周りはシンと静まり返っていた。

 ギイ、ググァァ……

「追いかけてきたな」
「はい」
「さて、洞窟の中にいたのは何かな」

 そう言いながら俺は、もしかしたらミスリルを餌にネズミたちにうまく利用されたのかもしれないなと思っていた。まぁそれでもこの気配は確かに小動物たちにとっては脅威なんだろう。ただ、このバランスを俺が崩してしまってもいいのかなっていう気はするんだけどね。

「…………来ました。『リザードマン』です」

 穴の中からゆっくりと姿を現したのは二足歩行のトカゲだった。
 だけど、緊張する場面の筈なのに、俺の【鑑定】はちょっとおかしな情報を伝えてきたんだ。

 『リザードマン』 トカゲの魔物。攻撃力は高く、俊敏性もある。武器を使用する個体もいる。尻尾を切ると攻撃力が下がる。火に弱い。噛みつきによる毒に注意。食用可だが肉は硬め。皮は水をはじき、防御力を上げるため高額で取引される。

「…………食べられるのか」

 というかどうして俺の【鑑定】は必ずそれを書くのかな。

「え! 食べられるのですか!」

 そしてどうしてコパンはそこに食いつくのかな。

「でも硬いって」
「…………そうですかぁ」

 もう、一気に緊張感がなくなっちゃったよ。


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