悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

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第8章  収束への道のり

257. 僕が考えた事

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 ハワード先生から書簡が届いた。
 そこには今現在『首』の封印場所の候補地と、その理由がぎっしりと書かれていた。さすがハワード先生だ。
 友人達には相談をしてもかまわないという事が書かれていたが、この書簡自体を見せるのではなくあくまでも僕が相談をするという形で口頭での説明にしてほしいと記されていた。
 書簡を見せるとハワード先生が僕の友人たちに依頼をしたように思われる可能性があるかもしれないからね。現時点で揉めている事にも関係してくるのであくまでも友人に相談をして意見を聞いてみるという風にした方がいいんだ。
 その事を書いて返事を出すとハワード先生は「いつも頭が柔らかい」と短い返事を寄越した。

 説明をするとなると、この内容をしっかりと頭に入れなければならない。
 そして自分の中に疑問に思う事や、足りないなと感じる事も書き出しておこう。
 実はこういう作業的なものは好きなんだ。数術みたいに答えがパンッって出るものも好きだけど、与えられたヒントの事柄の中で色々と考えていく事も好きだ。
 
 兄様にも勿論ハワード先生の事を伝えたよ。だって兄様がお話してくれたと思うから。
 ハワード先生が調べてくれたものだからそれを調べなおすような事はしないけれど、見てこれはどうなのかなって思ったところを伝えたり、分かる範囲内で調べたりしてみたいって言ったら「頑張って」って言ってくれた。

 という事で今は『首』の候補地のお勉強。でもその前に気になっている事があるんだよね。

 二の『首』<死>は伝説では魔法使いが封じた事になっている。<死>という首はどういう禍を呼ぶのかだろうか。そして王族が封じたと言われている、三の『首』の<絶望>と禍の違いはあるんだろうか。

 『首』がもたらす禍の予兆というか始まりって、西の国でもルフェリットと同じような事が起きていたと思うんだよね。天候不順、作物の収穫量の減少、エターナルレディみたいな病気、魔素や魔物の増加。
 それを西の国の先々王は『禍』が起きているから神に『供物』を捧げなければならないと軍隊を動かしたり、魔力を持つ人たちに禁術にを使って魔力暴走を起こさせたりしたんだ。
 そしてルフェリットでは僕と兄様が『記憶』を持っていたから、その禍を『バランスの崩壊』って呼んだ。

 『首』ごとに何か禍の変化があるとするならば、その封印を解いた、あるいは解いた原因となるその人に関わってくるのだろうか。西の国で封印を解いた可能性があるのは勿論先々王だ。
 先々王はその『首』の名の通りに狂っていったように思えるのは僕だけだろうか。

 だとすると、ハーヴィンにあった<呪い>の『首』の封印を解く原因となったのは誰だろう。そして<呪い>の『首』自身がもたらした禍とは一体何だったんだろう。
 あの頃、ハーヴィンに関わった者達が次々におかしな死を遂げたと言われていた。
 そして噂になったアンデッドは、当主の弟とも言われていたけれど、実際にアンデッドになったのかは分からないし、ベウィック公爵の所にはハーヴィンの元伯爵夫人、つまり僕の祖母が訪ねていてその時にアンデッドになった当主の弟が現れて祖母とベウィック公爵の息子と、そして護衛が亡くなっていたり行方不明になっている。
 封印を解くカギになったのは弟? それとも亡くなった伯爵? 『首』の名の通り呪われたのは誰だったんだろう?

 その辺りの事がわかれば、場所の特定はともかく、『首』それぞれの禍を特定する事も出来るだろうか。
 そんな事を思いながら僕はノートにメモを残していく。

 ハワード先生が挙げていた第二の『首』の候補地は2か所。旧レイモンド領内とモーリス領内だった。
 レイモンド領が王国の始まりの頃に拝領したのは旧ディンチ領とその隣の侯爵領の境辺りの土地だった。今は管理領扱いになっている。
 そしてもう一つの候補地であるモーリス領は言わずと知れたダンジョンのある領だ。どうしてここが? と思ったら、レイモンド家は代々大魔導師を出していると言われる家系だが、大魔導師の称号と初めて受けたのは今から300年ほど前の事になるらしい。
 魔力量の多さからレイモンド家に嫁いできたモーリス伯爵家の長女。彼女が生んだ子供が初めて大魔導師の称号を得ている。この称号を得てから、レイモンド家は今の場所に領地替えをされているんだって。だからモーリス領もレイモンドと関りがある土地なんだな。
 
 二つの領地内にはいずれも守塚と呼ばれ、領主が守るべき場所になっているらしいが、どうしてそこに在るのか、何を守っているのかは全く分かっていないという。もっとも旧ディンチ領の方は管理領扱いになっている今、その守塚を守る者はいない。
 
「ディンチ領にモーリス領か……」

 どちらも一癖のある場所だなと僕は思った。



 次に三の『首』<絶望>の場所の候補地。ここは三つあった。
 王家の者が封じたとあるから王宮の近くなのかもしれないと思ったら、やはり王都内にそれらしい所があったらしいんだけど、いずれもそれらしくて特定しづらいみたい。
 王都は王国の中心にあって、菱形に近い形をしている。王城はその中心にあり、王城の周りは壁と森と、騎士団の詰め所などがありさらにその周りに街が広がり、各領のタウンハウスや市場などがひしめき合っている。高位の貴族たちの屋敷があるのはやや東寄り。西寄りはそれより爵位が低い者や官僚たちの屋敷街。北側は平民の街。南に商人の街がある。もっともそれほど明瞭に区切られているわけでもない。

 菱形の上下には首都を守るという森がある。
 北の森、南の森と呼ばれるそこには鎮守の塚がある。昔から王室が管理をしている場所である。
 何を祀っているのかははっきりしないが、昔から鎮守の塚と呼ばれ、ルフェリットの神ルーフェリス様の像が置かれている。そこに首が封じられている可能性があるらしい。
 ちなみに北の森の先には旧オルドリッジ公爵領があり、南の森の先には旧べウィック公爵領がある。

 そして三つめは王城の周囲に広がる森の中。ここには聖神殿に繋がっている王宮神殿があり、その横に王家の墓廟がある。王城に一番近いので何か変化があれば分かる筈だが、それでも廟自体は地下の為、念のために確認をすると書かれていた。
 王家が鎮守として置いている場所はこの他にもあって、ハワード先生はこの三つに絞り込むのにかなり時間をかけたようだった。

「それにしても王都の中に首が封じられているかもしれないって言うのは怖いな」

 もしかしたら、あの王都の街中に魔素が湧いて魔獣が出たのはその先駆けのようなものだったんだろうか?
 ハワード先生の書いたものを何度も読み返して、僕はこれをどうやって皆に伝えたらいいのかを考えていた。だって、場所の自体はかなり絞られていて、そこを直接確かめた方がいいくらいになっているんだ。それでもそうしないのは『首』の状況が分からないからなのかなって思う。
 元ハーヴィンにあった『首』は封印が解けかけているのがはっきり分かって色々な事が起きていたから早くどうにかしなければならないっていう事があった。

「その辺りの事をどう思うかってみんなに聞いてみようかな。あと、王都内の封印場所について、場所とかでなく、どう思うか。もしもここが解けたらどうなってしまうのか。その時に何ができるのか」

 それは今の時点ではあまり現実的ではないような気がしたけれど、それでも少し聞いてみたいなと思った。

「鎮守か……鎮めて、守るんだから、やっぱり暴れたり悪さをしたものを封じるとか、そういう事なのかなぁ」

 答えの出ない事をぐるぐると考えている感じがして、僕はうんと伸びをして、椅子から立ち上がりながらプチお茶会を開けるといいなと思った。



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少し王国内の位置的なものを……。
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