悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

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第8章  収束への道のり

264. フィンレーでの勉強会

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 週末になって皆と一緒にフィンレーにやってきた。ユージーン君も一緒だ。

「何だか久しぶりのフィンレーだね」
「うん。色々お城で揉めていてお祖父様がいらっしゃらなかったからね」
「ふふふ、このサロンも懐かしい」
「ガチガチに緊張していた時を今でも思い出すよ」
「お互いにね」

 そんな話をしながら、温室に近い小サロンにいるとハリーがやってきた。

「エディ兄様、皆様本日はよろしくお願いします」

 ぺこりとお辞儀をしたハリーにトーマス君が「わぁ、ハロルド君はまた背が伸びたの?」と驚いたような声を上げた。

「はい。少しだけ」
「いいなぁ。僕ももう少し大きくなりたいなぁ」
「トム、一緒にって言ったでしょ。一人で大きくならないでね」
「うん。一緒に170ティンを超えようね!」
 
 二人で大きく頷いていると、ハリーがユージーン君に挨拶をしていた。
 あ、そうだった。お茶会でよく来ていたから顔は知っているかもしれないけれど、ハリーは初めての顔合わせになるんだ。

「フィンレー家四男のハロルド・フィンレーです。改めまして本日はよろしくお願い致します」
「ご挨拶頂きまして有難うございます。ロマースク伯爵家次男、ユージーン・ロマースクです。エドワード様には学園でも大変お世話になっております。本日は無理を言って勉強会に参加をさせていただきました」
「ロマースク領というと大きな港のある領ですね」
「はい」
「ハリー、ごめんね。僕からちゃんと紹介をしなければいけなかったね。ジーンもごめんね」
「ううん。大丈夫。エディ兄様のお友達と仲良くなれるのは嬉しいです。それに僕はこことグラディスの街と王都にしか行った事がないから、色々な所のお話を聞くのも楽しいし」
「ふふふ。そうだね。僕も同じようなものだけど。ああ、そうだ。トムが婚約をしたんだよ。しかもここにいる」
「ちょ、ちょっとエディ! まだ仮なんだよ」

 真っ赤になって慌てているトーマス君にハリーはビックリしたような顔をして「おめでとうございます」と言った。

「あ、ありがとう。まだね。仮婚約なんだよ。お互いに18になったら婚約して、卒業したら結婚するんだ」

 赤い顔のままそう言うトーマス君に、ハリーはもう一度笑って「おめでとうございます。それで、お相手は、その…………スティーブさんですか?」
「え……」

 僕は思わず固まってしまった。トーマス君も、そして突然名前が出たスティーブ君も、勿論ユージーン君も固まった。

「え? え? あの」
 
 ハリーの顔色が一気に蒼くなっていくのが判った。

「ご、ごめんね、ちゃんと言わなかった僕が悪いの。あのねハリー、トーマス君と婚約したのはユージーン君」
「!!! す、すみません!」
「いや、こちらもエディの言葉を遮るような感じになってしまったし、きちんと言わなかったのがいけないんだから気にしないで。そうだよね。ずっと一緒に勉強会に参加をしていたんだものね。えっと、僕が婚約をしたのはユージーン・ロマースクさんで、スティーブは学友で、勉強会友達で、お茶会友達だよ。エディもスティーブも僕にとってはとても大事な友達で、ジーンは、その……とても大事な人になったの」

 そう言ってトーマス君は笑ってユージーン君の隣に並んだ。

「本当にすみませんでした。そして、改めまして、お二人ともおめでとうございます」
「ありがとうございます」

 二人がそう言って笑ってくれて、僕はホッとした。スティーブ君もいきなり名指しされてびっくりさせちゃったな。ハリーがスティーブ君にも謝っていて、スティーブ君も「大丈夫だよ」って笑ってくれていて良かった。

 そんなドタバタの後、お祖父様がいらした。
 僕は書簡で参加をお願いしたユージーン君を紹介して、ユージーン君がお祖父様にご挨拶をして、そして今日のへ勉強会についての話を始めた。

「まずは温室内の薬草の状態などについて確認など。植え替えについてはどのようにすればよいかをご指示ください。それからロマースク様からの「水薬」についての取扱の要望がありますので、そちらは別に話し合いをお願い致します」
「父、ロマースク伯爵家当主より書状を言付かっております。よろしくお願い致します」
「うむ。確認をしよう」

 お祖父様はそう言ってユージーン君から書状を受け取った。

「そして、薬草の勉強会とは少し異なってしまうのですが、一昨日の書簡でお願い致しました通り、現在王国内を騒がせております消息不明者の件でお祖父様にお聞きしたい事があります。そのお時間もいただければ幸いです」
「うむ。また厄介な事が起こり始めているようだな。ロマースク伯爵家が先日王国に報告をした件も聞いている。後ほど時間を設けよう」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」


 こうして僕たちはまずは温室内の薬草と妖精がくれた枝の木の状態を確認する為に温室に移動をした。




「へぇ、これが妖精からもらった枝が育った木かぁ。すごく綺麗だね」
 「妖精?」

 トーマス君の言葉にユージーン君が不思議そうな声を出した。それを聞いてトーマス君が「あっ」っていう顔をした。うん。ここでは【緑の手】の魔法を使うし、温室には妖精が来る事が多いから、二人にはもう僕の加護の事やハリーの加護の事も知らせていたんだった。

「ジーン。ここに居る人には隠し様がないから知らせていたんだけど、僕もハリーも加護というものを頂いているんだ。一応後で他では話をしないっていう魔導誓約書にサインをしてもらってもいいかな?」
「勿論」
「うん。僕は【緑の手】という植物に関する加護と今どんな事が出来るのかを調べている【精霊の祝福】という加護があって、ハリーは妖精を見たり話が出来るような加護を持っているんだ。それで、そのエターナルレディの時の薬草も、この木の元になった枝も妖精にいただいた。この木は『首』を眠らせる為に妖精が持ってきてくれたんだ」
「…………はぁ、すごい。何だか今更だけど、エディはすごい。そしてハロルド様も」
「大きな力を頂いただけだよ。だから間違わないように使わないといけない」
「そういう風に思えるエディはほんとにすごい」
 
 ユージーン君とトーマス君にそう言われて僕は少しだけ顔を赤くして「ありがとう」と言った。
 力の事をちゃんと受け止めてくれる友人達には本当に感謝だ。

「お祖父様、この薬草はもう収穫してしまいますね。植え替えるのは同じものでいいでしょうか。それとも何かを試してみますか?」

 味の良いポーションに使う薬草の栽培は、そのポーションを扱う領内のフィンレーと契約をしている人たちが育てて、もう専属の薬師さんもいてそれぞれの扱いの契約をしているギルドやお医者様や騎士団などに卸すようにもうすっかり整っているので、ここではその薬草はほとんど育てていないんだ。今はまだ扱いの経路が完全に固まっていない例の「水薬」の薬草を少し多めに育てて足りない所にハリーが中心になって卸しているんだ。

「今回は同じものでいいだろう。他は順調にいっているようだ」
「分かりました」
「苗はある? 僕たちも手伝って植えちゃうよ」

 トーマス君とスティーブ君が慣れたように動き出して、ユージーン君も見様見真似で苗を植えだした。

「ふふふ、勉強会でまさか土いじりをするなんて思ってなかったでしょう?」
「いや、すごく貴重な体験をさせてもらっている。自分の領ではなかなか出来ないからね」

 ああ、やっぱり僕の仲間は皆素敵な人たちだ。


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皆で農業。。。。。

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