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第8章 収束への道のり
267. 緊急の話し合い
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ティオの話をすると、ハリーはものすごく怖いというか、表情が抜け落ちてしまったような顔をして、契約をしている妖精たちに魔法で手紙を出した。いつの間にそんな事が出来るようになったんだろう。ハリーはすごいな。
そう言うと「エディ兄様はもっとすごいですよ」という。僕のどこが凄いのかはちょっとわからないけど、それでも褒められたのは嬉しい、そう思っているとハリーは小さく笑いながら口を開いた。
「加護の力もとてもすごいです。でもそれをちっとも威張ったりしないで、どうやったら役に立つのかをいつも普通に考えているのがすごいです。僕も一時は少し悩んだんですよ。この力は何の役に立つのか、どうやって使っていったらいいのか。でも使っていくって考えるんじゃなくて、どんな事が出来るのか、それが何の役に立つのかって考えたら少し楽になって妖精たちがとても可愛くなりました。エディ兄様のように色んな事を試してみようって、そう思うと妖精たちとの契約が増えたんです。本当は妖精たちと関わりすぎると妖精になってしまうんじゃないかって心配になったりしたんですけど契約した妖精たちに「愛し子は人の子だよ」って言われたのと、母様が「連れて行かれそうになったら絶対に引き留めてあげる」って」
パティ母様らしいなって僕は思わず笑ってしまった。それにつられるようにハリーも笑った。
ハリーが契約をしている妖精たちは三人きてくれた。やっぱり大きな人から出歩いてはいけないと言われていたみたい。僕はその子たちの声は聞こえないし、ハリーが呼んだ子たちだから僕はその場には居られなかった。
話が終わるとハリーは難しい顔で温室から出てきた。
「よく分からない所があるのですが、やはり何か良くない事が起きているようです。お祖父様か父様にご相談をした方がいいと思います。兄様と契約をしたティオの話と大体同じですが」
「分かった。そうしたら、お祖父様と父様と兄様に魔導書簡を出すよ。妖精たちから今回の事件の手掛かりになるような話を聞いたので至急ご相談をしたいって」
「はい。急いだ方がいいような気がします」
僕はすぐに書簡を出した。
なかなか温室から戻ってこない僕たちを心配してウィルとマリーとジョシュアがやってきた。
勿論僕の護衛の一人ルーカスとハリーの護衛も一人、ちゃんとついていたんだけどね。
お祖父様は先ほど戻られたばかりなのに、すぐに来て下さった。
そして、兄様もやってきた。父様は今お城にいるので、兄様が代わりに聞いてくることになったという。
応接室にお祖父様と兄様とハリーと僕、そして「何が起きているのか話だけでも聞かせてほしい」ってウィルも部屋に入った。
ウィルは本当に大きくなった。体つきも全然違う。ちょっと見ただけだとハリーと双子には見えないほどだ。
「急にお呼びたていたしまして申し訳ございません。書簡でもお知らせ致しました通りに契約している妖精から聞いた話を至急お知らせした方がいいとハロルドと判断いたしました。まずは僕の方から。最近妖精の姿を見る事がなく少し気になっていました。今日もイチゴを用意していたのですが現れず、どうしたのかと思っていると僕が一人になっているのを見て声をかけてきました。彼らが『大きい人』と呼んでいる者が、出歩く事を制限しているようでした。こわいのがくるからあそびにいったらだめ。おおきいひとにいわれたと言っていました。以前もこわいのといわれた事がありその時は黒い何かに飲み込まれるような夢を見た後に魔人の騒ぎがあったので、同じこわいのなのかを確認すると、こわいのはちがうこわいのだと」
「違う怖いの? では魔人や魔素ではないという事なのかな」
兄様の問いに僕は「そんな感じでした」と答えた。
「それで、その後に気になる事を口にしたんです。「つかまるときえちゃう」と」
「捕まると消える? それは妖精が、なのかな」
「そこが少し曖昧だったのですが、その後「こわいのがつかまえるの。つかまったらきえちゃう。ともだちがつかまった。つかまえるのに、つかわれてきえちゃった」と言っていました。僕のお友達もどこかに消えちゃったと、急に影の中に落ちたんだってと話をしたら「かげにおちるのはようせいがつかわれたの」と」
「影に落ちるのは妖精が使われた?」
兄様が難しい顔をして言葉を繰り返した。
「はい。それでハリーが来たのでその話をしたところ、ハリーが自分の契約している妖精に連絡をしてくれました」
そこで僕はハリーを見た。ハリーはコクリと頷いて口を開いた。
「エディ兄様に話を聞いて良くない事が起きていると思って契約している子たちに手紙を出しました。来てくれたのは三人だけでした。やはり『大きい人』に出歩く事を注意されているようです。三人はとても怖がっていました。自分たちの仲間が何人も怖いのに捕まってしまったと。怖いのが何なのかは分かりませんでした。でもそれは妖精を捕まえて、その妖精をおそらくは犠牲にして何か呪術的な事を行っているように感じました。はっきりとは言いませんでしたが、怖いのから逃げようとする力を使われて消されてしまう。影に隠れると言っていました。「かげにかくれようとするとそれをつかわれる」だから友達は消えてしまった。影には人が落ちた。落ちた人がどうなったのか知らない。影に落ちても死なない」
「怖い人は妖精を使って人を集めているのかなって聞いたのですが、わからない、こわい、かえる、しか答えが返ってこなくて、もう無理だと思ってお土産を沢山持たせて、お礼を言って、怖いのをやっつけられるように僕も考えるよと言いました。今、各地で消息不明者が増えている事は耳に入ってきます。今回の話、何か手掛かりになればいいのですが」
「…………ふむ」
ハリーの言葉を聞き終えて、お祖父様は考え込むようにして小さな声を漏らした。
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そう言うと「エディ兄様はもっとすごいですよ」という。僕のどこが凄いのかはちょっとわからないけど、それでも褒められたのは嬉しい、そう思っているとハリーは小さく笑いながら口を開いた。
「加護の力もとてもすごいです。でもそれをちっとも威張ったりしないで、どうやったら役に立つのかをいつも普通に考えているのがすごいです。僕も一時は少し悩んだんですよ。この力は何の役に立つのか、どうやって使っていったらいいのか。でも使っていくって考えるんじゃなくて、どんな事が出来るのか、それが何の役に立つのかって考えたら少し楽になって妖精たちがとても可愛くなりました。エディ兄様のように色んな事を試してみようって、そう思うと妖精たちとの契約が増えたんです。本当は妖精たちと関わりすぎると妖精になってしまうんじゃないかって心配になったりしたんですけど契約した妖精たちに「愛し子は人の子だよ」って言われたのと、母様が「連れて行かれそうになったら絶対に引き留めてあげる」って」
パティ母様らしいなって僕は思わず笑ってしまった。それにつられるようにハリーも笑った。
ハリーが契約をしている妖精たちは三人きてくれた。やっぱり大きな人から出歩いてはいけないと言われていたみたい。僕はその子たちの声は聞こえないし、ハリーが呼んだ子たちだから僕はその場には居られなかった。
話が終わるとハリーは難しい顔で温室から出てきた。
「よく分からない所があるのですが、やはり何か良くない事が起きているようです。お祖父様か父様にご相談をした方がいいと思います。兄様と契約をしたティオの話と大体同じですが」
「分かった。そうしたら、お祖父様と父様と兄様に魔導書簡を出すよ。妖精たちから今回の事件の手掛かりになるような話を聞いたので至急ご相談をしたいって」
「はい。急いだ方がいいような気がします」
僕はすぐに書簡を出した。
なかなか温室から戻ってこない僕たちを心配してウィルとマリーとジョシュアがやってきた。
勿論僕の護衛の一人ルーカスとハリーの護衛も一人、ちゃんとついていたんだけどね。
お祖父様は先ほど戻られたばかりなのに、すぐに来て下さった。
そして、兄様もやってきた。父様は今お城にいるので、兄様が代わりに聞いてくることになったという。
応接室にお祖父様と兄様とハリーと僕、そして「何が起きているのか話だけでも聞かせてほしい」ってウィルも部屋に入った。
ウィルは本当に大きくなった。体つきも全然違う。ちょっと見ただけだとハリーと双子には見えないほどだ。
「急にお呼びたていたしまして申し訳ございません。書簡でもお知らせ致しました通りに契約している妖精から聞いた話を至急お知らせした方がいいとハロルドと判断いたしました。まずは僕の方から。最近妖精の姿を見る事がなく少し気になっていました。今日もイチゴを用意していたのですが現れず、どうしたのかと思っていると僕が一人になっているのを見て声をかけてきました。彼らが『大きい人』と呼んでいる者が、出歩く事を制限しているようでした。こわいのがくるからあそびにいったらだめ。おおきいひとにいわれたと言っていました。以前もこわいのといわれた事がありその時は黒い何かに飲み込まれるような夢を見た後に魔人の騒ぎがあったので、同じこわいのなのかを確認すると、こわいのはちがうこわいのだと」
「違う怖いの? では魔人や魔素ではないという事なのかな」
兄様の問いに僕は「そんな感じでした」と答えた。
「それで、その後に気になる事を口にしたんです。「つかまるときえちゃう」と」
「捕まると消える? それは妖精が、なのかな」
「そこが少し曖昧だったのですが、その後「こわいのがつかまえるの。つかまったらきえちゃう。ともだちがつかまった。つかまえるのに、つかわれてきえちゃった」と言っていました。僕のお友達もどこかに消えちゃったと、急に影の中に落ちたんだってと話をしたら「かげにおちるのはようせいがつかわれたの」と」
「影に落ちるのは妖精が使われた?」
兄様が難しい顔をして言葉を繰り返した。
「はい。それでハリーが来たのでその話をしたところ、ハリーが自分の契約している妖精に連絡をしてくれました」
そこで僕はハリーを見た。ハリーはコクリと頷いて口を開いた。
「エディ兄様に話を聞いて良くない事が起きていると思って契約している子たちに手紙を出しました。来てくれたのは三人だけでした。やはり『大きい人』に出歩く事を注意されているようです。三人はとても怖がっていました。自分たちの仲間が何人も怖いのに捕まってしまったと。怖いのが何なのかは分かりませんでした。でもそれは妖精を捕まえて、その妖精をおそらくは犠牲にして何か呪術的な事を行っているように感じました。はっきりとは言いませんでしたが、怖いのから逃げようとする力を使われて消されてしまう。影に隠れると言っていました。「かげにかくれようとするとそれをつかわれる」だから友達は消えてしまった。影には人が落ちた。落ちた人がどうなったのか知らない。影に落ちても死なない」
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