悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

tamura-k

文字の大きさ
111 / 303
第8章  収束への道のり

279. 妖精の道

しおりを挟む
 お祖父様はすぐにいらして下さった。
 僕たちは一旦解散をして、その間に魔導誓約書を交わしてもらう事にした。そしてくれぐれも自分だけで動くような事はしないようにと念を押した。勝手に動かれてしまうと色々な所で連携して動いているので状況が変わってしまう事があると説明をした。
 少し顔色が悪いようなエリック君にはレナード君とユージーン君が「ちょっと話をしないかい」と声をかけてくれていた。

 トーマス君とスティーブ君は薬草の手入れをしたいと申し出てくれて、ミッチェル君がそれに付き合う様な形になり、護衛とマリーが一緒に行ってくれた。温室は今ハリーと妖精が話をしていると思うんだけど、沢山のお部屋みたいになっているから多分大丈夫かな。
 そのまま部屋に向かおうとしていたクラウス君は途中で会ったウィルと手合わせをする事になったという。ウィルが嬉しそうだった。




「勝手に加護の事、それから妖精に関わる事を話してしまって申し訳ございません」
 
 僕とお祖父様は少しだけ話をすると言ってリビングに残った。頭を下げてそう言った僕に、お祖父様は「大丈夫だろう」と言った。
 うん。今までにも色々な話をして、協力をしてきた仲間たちだもの。きっと大丈夫だって僕も思っている。それに加護の力の事は知ってもらっていた方がこれからはお互いに動きやすくなると思ったんだ。

 唯一気になるのはエリック君だ。多分父様から話を聞いて念を押されているとは思うけど、少し思いつめたような顔をしているのが心配だ。もっとも自分の大事な人が何かの呪術に使われるかもしれないなんて聞いたら冷静ではいられないよね。

「…………呪術師の消息は分かったのでしょうか?」
「まだ何も連絡はないな」
「そうですか」
「だが、エドワード。これは一人の呪術師がやる事にしては、事が大きすぎると思わんか? 我々が疑っているのはそれだ。万が一何か大きな組織の様なものがそれに関わっているとすれば、その者がトカゲの尻尾切りになる。最悪囚われている人間たちが元に戻らなくなるような事は何としても避けたい。その為には消息を掴むと共に、それほどの人間を集めて、一体どんな呪術を使おうとしていたのかを突き止めておかねばならん」
「はい」
「その辺りはアルフレッドたちも動いている」
「兄様たちが」
「うむ。彼らの知り合いも巻き込まれているらしい」
「そんな……」

 知らなかった。被害は確実に広がっていたんだ。僕は何だか悔しいような悲しいような気持ちになりながら、妖精が捕まえられず、そのまま人を誘拐するというような被害はどうなのかを聞いてみた。

「今の所無理矢理連れ攫われたと言う様な報告は入ってきてはいない。相手が多いのか少ないのかすら分からんのは我らが不利だ。呪術師さえ押さえればいいわけではないのが厳しいな」

 そうなんだ。その人さえ押さえれば後ろも横のつながりも見えてくると思うのは甘いんだな。

「さて、そろそろ行こう。温室だけ結界を薄くするわけにはいかん。何か向こうが来られるような道を作る事が出来ればよいのだが」

 お祖父様はそう言って僕と一緒に温室へと転移をした。


-*-*-*-


 温室は今8つの部屋がある。
 今年になってまた新しく増えて父様が頭を抱えていた。
 花の部屋、薬草の部屋は2つ。眠りの樹だけを別にした部屋は春になったら樹を外に植え替える事になっている。ハーヴィンでそのまま育っていても問題がないと判断したからだ。それにいつまでも植木鉢の中では窮屈で可哀そうだものね。樹が無くなったらその後は何にしようかな。
 あとは果物の部屋も二つ。イチゴの様な果物と木になる果物に分かれているんだ。そして暗い所が好きな植物の部屋。さらに、実験をしている部屋がある。これはお祖父様と父様、そして兄様とハリーと僕しか知らない。でもこれが成功したらとてもすごい事になると思うんだ。

「みんなは薬草の部屋の方にいるみたいですね。ハリー達は木に生る果物の部屋の方かな」
「うむ」
 
 僕とお祖父様はハリーと妖精がいると思われる部屋の方に向かった。

「あ、お祖父様、エディ兄様」

 部屋に入ると笑顔のハリーが振り向いた。それにホッとして僕はハリーの方に近寄った。

「遅くなってごめんね。でもその顔だとちゃんと話が出来ているのかな」
「はい。どうやら「おおきいひと」が力を貸してくれたみたいです」
「え? 大きい人がきてくれたの?」
「いえ、妖精が捕まえられているという事が悲しくて、一生懸命調べている事と、魔力量が多い人を影に落とそうとしているみたいなので、フィンレーは妖精の被害がないように人も気をつけて結界を強化しているって事、そして来てくれるのはとても嬉しいし、話もしたいので今どうしたらいいのか相談をしているから蜂蜜とか果物とかを食べて少し待っていてほしいって説明をしたら、この子が大きい人に相談してみるって言ってくれて、それで結界を崩さずに妖精しか通れない道を温室に一本だけ繋げてくれるって。これだけしっかりとした結界なら大丈夫だろうって。だからずっと遊びに来られなかった子も来てくれたんです。お陰で兄様の蜂蜜は空っぽです」

 ハリーはそう言って嬉しそうに笑った。
 そして僕の耳にも久しぶりの声が響いた。

「えでぃー!」

 緑の髪の金色の妖精ティオ。肩から斜めにかけているバッグがとてもよく似合っているね。



-----------

しおりを挟む
感想 945

あなたにおすすめの小説

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。