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第8章 収束への道のり
279. 妖精の道
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お祖父様はすぐにいらして下さった。
僕たちは一旦解散をして、その間に魔導誓約書を交わしてもらう事にした。そしてくれぐれも自分だけで動くような事はしないようにと念を押した。勝手に動かれてしまうと色々な所で連携して動いているので状況が変わってしまう事があると説明をした。
少し顔色が悪いようなエリック君にはレナード君とユージーン君が「ちょっと話をしないかい」と声をかけてくれていた。
トーマス君とスティーブ君は薬草の手入れをしたいと申し出てくれて、ミッチェル君がそれに付き合う様な形になり、護衛とマリーが一緒に行ってくれた。温室は今ハリーと妖精が話をしていると思うんだけど、沢山のお部屋みたいになっているから多分大丈夫かな。
そのまま部屋に向かおうとしていたクラウス君は途中で会ったウィルと手合わせをする事になったという。ウィルが嬉しそうだった。
「勝手に加護の事、それから妖精に関わる事を話してしまって申し訳ございません」
僕とお祖父様は少しだけ話をすると言ってリビングに残った。頭を下げてそう言った僕に、お祖父様は「大丈夫だろう」と言った。
うん。今までにも色々な話をして、協力をしてきた仲間たちだもの。きっと大丈夫だって僕も思っている。それに加護の力の事は知ってもらっていた方がこれからはお互いに動きやすくなると思ったんだ。
唯一気になるのはエリック君だ。多分父様から話を聞いて念を押されているとは思うけど、少し思いつめたような顔をしているのが心配だ。もっとも自分の大事な人が何かの呪術に使われるかもしれないなんて聞いたら冷静ではいられないよね。
「…………呪術師の消息は分かったのでしょうか?」
「まだ何も連絡はないな」
「そうですか」
「だが、エドワード。これは一人の呪術師がやる事にしては、事が大きすぎると思わんか? 我々が疑っているのはそれだ。万が一何か大きな組織の様なものがそれに関わっているとすれば、その者がトカゲの尻尾切りになる。最悪囚われている人間たちが元に戻らなくなるような事は何としても避けたい。その為には消息を掴むと共に、それほどの人間を集めて、一体どんな呪術を使おうとしていたのかを突き止めておかねばならん」
「はい」
「その辺りはアルフレッドたちも動いている」
「兄様たちが」
「うむ。彼らの知り合いも巻き込まれているらしい」
「そんな……」
知らなかった。被害は確実に広がっていたんだ。僕は何だか悔しいような悲しいような気持ちになりながら、妖精が捕まえられず、そのまま人を誘拐するというような被害はどうなのかを聞いてみた。
「今の所無理矢理連れ攫われたと言う様な報告は入ってきてはいない。相手が多いのか少ないのかすら分からんのは我らが不利だ。呪術師さえ押さえればいいわけではないのが厳しいな」
そうなんだ。その人さえ押さえれば後ろも横のつながりも見えてくると思うのは甘いんだな。
「さて、そろそろ行こう。温室だけ結界を薄くするわけにはいかん。何か向こうが来られるような道を作る事が出来ればよいのだが」
お祖父様はそう言って僕と一緒に温室へと転移をした。
-*-*-*-
温室は今8つの部屋がある。
今年になってまた新しく増えて父様が頭を抱えていた。
花の部屋、薬草の部屋は2つ。眠りの樹だけを別にした部屋は春になったら樹を外に植え替える事になっている。ハーヴィンでそのまま育っていても問題がないと判断したからだ。それにいつまでも植木鉢の中では窮屈で可哀そうだものね。樹が無くなったらその後は何にしようかな。
あとは果物の部屋も二つ。イチゴの様な果物と木になる果物に分かれているんだ。そして暗い所が好きな植物の部屋。さらに、実験をしている部屋がある。これはお祖父様と父様、そして兄様とハリーと僕しか知らない。でもこれが成功したらとてもすごい事になると思うんだ。
「みんなは薬草の部屋の方にいるみたいですね。ハリー達は木に生る果物の部屋の方かな」
「うむ」
僕とお祖父様はハリーと妖精がいると思われる部屋の方に向かった。
「あ、お祖父様、エディ兄様」
部屋に入ると笑顔のハリーが振り向いた。それにホッとして僕はハリーの方に近寄った。
「遅くなってごめんね。でもその顔だとちゃんと話が出来ているのかな」
「はい。どうやら「おおきいひと」が力を貸してくれたみたいです」
「え? 大きい人がきてくれたの?」
「いえ、妖精が捕まえられているという事が悲しくて、一生懸命調べている事と、魔力量が多い人を影に落とそうとしているみたいなので、フィンレーは妖精の被害がないように人も気をつけて結界を強化しているって事、そして来てくれるのはとても嬉しいし、話もしたいので今どうしたらいいのか相談をしているから蜂蜜とか果物とかを食べて少し待っていてほしいって説明をしたら、この子が大きい人に相談してみるって言ってくれて、それで結界を崩さずに妖精しか通れない道を温室に一本だけ繋げてくれるって。これだけしっかりとした結界なら大丈夫だろうって。だからずっと遊びに来られなかった子も来てくれたんです。お陰で兄様の蜂蜜は空っぽです」
ハリーはそう言って嬉しそうに笑った。
そして僕の耳にも久しぶりの声が響いた。
「えでぃー!」
緑の髪の金色の妖精ティオ。肩から斜めにかけているバッグがとてもよく似合っているね。
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僕たちは一旦解散をして、その間に魔導誓約書を交わしてもらう事にした。そしてくれぐれも自分だけで動くような事はしないようにと念を押した。勝手に動かれてしまうと色々な所で連携して動いているので状況が変わってしまう事があると説明をした。
少し顔色が悪いようなエリック君にはレナード君とユージーン君が「ちょっと話をしないかい」と声をかけてくれていた。
トーマス君とスティーブ君は薬草の手入れをしたいと申し出てくれて、ミッチェル君がそれに付き合う様な形になり、護衛とマリーが一緒に行ってくれた。温室は今ハリーと妖精が話をしていると思うんだけど、沢山のお部屋みたいになっているから多分大丈夫かな。
そのまま部屋に向かおうとしていたクラウス君は途中で会ったウィルと手合わせをする事になったという。ウィルが嬉しそうだった。
「勝手に加護の事、それから妖精に関わる事を話してしまって申し訳ございません」
僕とお祖父様は少しだけ話をすると言ってリビングに残った。頭を下げてそう言った僕に、お祖父様は「大丈夫だろう」と言った。
うん。今までにも色々な話をして、協力をしてきた仲間たちだもの。きっと大丈夫だって僕も思っている。それに加護の力の事は知ってもらっていた方がこれからはお互いに動きやすくなると思ったんだ。
唯一気になるのはエリック君だ。多分父様から話を聞いて念を押されているとは思うけど、少し思いつめたような顔をしているのが心配だ。もっとも自分の大事な人が何かの呪術に使われるかもしれないなんて聞いたら冷静ではいられないよね。
「…………呪術師の消息は分かったのでしょうか?」
「まだ何も連絡はないな」
「そうですか」
「だが、エドワード。これは一人の呪術師がやる事にしては、事が大きすぎると思わんか? 我々が疑っているのはそれだ。万が一何か大きな組織の様なものがそれに関わっているとすれば、その者がトカゲの尻尾切りになる。最悪囚われている人間たちが元に戻らなくなるような事は何としても避けたい。その為には消息を掴むと共に、それほどの人間を集めて、一体どんな呪術を使おうとしていたのかを突き止めておかねばならん」
「はい」
「その辺りはアルフレッドたちも動いている」
「兄様たちが」
「うむ。彼らの知り合いも巻き込まれているらしい」
「そんな……」
知らなかった。被害は確実に広がっていたんだ。僕は何だか悔しいような悲しいような気持ちになりながら、妖精が捕まえられず、そのまま人を誘拐するというような被害はどうなのかを聞いてみた。
「今の所無理矢理連れ攫われたと言う様な報告は入ってきてはいない。相手が多いのか少ないのかすら分からんのは我らが不利だ。呪術師さえ押さえればいいわけではないのが厳しいな」
そうなんだ。その人さえ押さえれば後ろも横のつながりも見えてくると思うのは甘いんだな。
「さて、そろそろ行こう。温室だけ結界を薄くするわけにはいかん。何か向こうが来られるような道を作る事が出来ればよいのだが」
お祖父様はそう言って僕と一緒に温室へと転移をした。
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温室は今8つの部屋がある。
今年になってまた新しく増えて父様が頭を抱えていた。
花の部屋、薬草の部屋は2つ。眠りの樹だけを別にした部屋は春になったら樹を外に植え替える事になっている。ハーヴィンでそのまま育っていても問題がないと判断したからだ。それにいつまでも植木鉢の中では窮屈で可哀そうだものね。樹が無くなったらその後は何にしようかな。
あとは果物の部屋も二つ。イチゴの様な果物と木になる果物に分かれているんだ。そして暗い所が好きな植物の部屋。さらに、実験をしている部屋がある。これはお祖父様と父様、そして兄様とハリーと僕しか知らない。でもこれが成功したらとてもすごい事になると思うんだ。
「みんなは薬草の部屋の方にいるみたいですね。ハリー達は木に生る果物の部屋の方かな」
「うむ」
僕とお祖父様はハリーと妖精がいると思われる部屋の方に向かった。
「あ、お祖父様、エディ兄様」
部屋に入ると笑顔のハリーが振り向いた。それにホッとして僕はハリーの方に近寄った。
「遅くなってごめんね。でもその顔だとちゃんと話が出来ているのかな」
「はい。どうやら「おおきいひと」が力を貸してくれたみたいです」
「え? 大きい人がきてくれたの?」
「いえ、妖精が捕まえられているという事が悲しくて、一生懸命調べている事と、魔力量が多い人を影に落とそうとしているみたいなので、フィンレーは妖精の被害がないように人も気をつけて結界を強化しているって事、そして来てくれるのはとても嬉しいし、話もしたいので今どうしたらいいのか相談をしているから蜂蜜とか果物とかを食べて少し待っていてほしいって説明をしたら、この子が大きい人に相談してみるって言ってくれて、それで結界を崩さずに妖精しか通れない道を温室に一本だけ繋げてくれるって。これだけしっかりとした結界なら大丈夫だろうって。だからずっと遊びに来られなかった子も来てくれたんです。お陰で兄様の蜂蜜は空っぽです」
ハリーはそう言って嬉しそうに笑った。
そして僕の耳にも久しぶりの声が響いた。
「えでぃー!」
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