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第9章 幸せになります
351. これからも
「とりあえず考えてみなさい」って父様に言われて、僕は応接室を出た。すぐに兄様が追い駆けてきてくれた。
「エディ」
名前を呼ばれて立ち止まって振り返る。
「大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
それだけ答えて、廊下でする話ではないとそのまま僕の部屋へと向かった。そしてテーブルセットの椅子に座り、念のために遮音の魔法をかける。
「えっと、途中で泣いたりしてすみません。ちょっとびっくりしてしまって」
「ああ、私もびっくりしたよ。結婚できないと言われるとは思ってもいなかった」
「すすすみません! 何だかもうわけが分からなくなってしまって」
「うん。大丈夫、ちゃんと分かっているから」
兄様は笑って頷いてくれた。
「ありがとうございます。六の月になるまでにもう少しだけ時間があるので、よく考えます。ちゃんと何をどうしたらいいのか、考えます。だって、これは僕と兄様だけの話ではなくなってくるから……」
「……ああ、そうだね。ウィリアムやハロルド達も巻き込む事になる」
「はい……でも、王城の官吏の人達が、そして王様と父様達が色々と細かく考えて下さってすごいなぁと思いました。僕はフィンレーから離れてしまうのは嫌だっていう気持ちが強いけれど、でも、新しい領地っていうのも少し気になります」
「そう。それなら良かった。領主になると色々と考える事も出てくると思うけれど、エディなら良い領主になれると思うよ。私もシルヴァン様が公爵家に臣籍降下なされば、側近の役割は終了だ。実はダニエルはもう宰相府に入る事が決まっているんだよ」
「わぁ! そうなのですね」
「ああ、おそらくロイスもそちらへ引っ張られるだろうね。本人は公爵家の次男で悠々自適に暮らしたいなんて言っているけど、宰相府でなければシルヴァン様の方で何か役付きになるかもしれないな」
「ニールデン様ですね。そう言えば兄様達には褒賞とかはないのですか?」
「一応皆報奨金は出るみたいだね。大きな魔石があったらほしいなぁとは思っているんだ」
「魔石ですか?」
「そう。フレイム・グレート・グリズリーの真っ赤な魔石。ぜひとも記念に欲しい」
そう言って笑った兄様に、僕も一緒に笑った。笑えて良かったって思った。
「一応ね、マーティには叙爵の話もあるみたいなんだけど、少しレイモンド自体が揉めているらしくてね。その辺りはよく分からないな」
「そうなんですね」
「ああ、でもエディはまずはどうしたいのかよく考えて、少しでも不安な事があれば話をしてね。そして、結婚をしないっていうのは無しだよ?」
兄様は小さく笑いながら僕の顔を覗き込んできた。
「はい。け、結婚しないのは、ないです……」
「うん。約束だよ」
テーブル越しに手を引き寄せられて、小さなテーブルを挟んだままそっと口づけた。
一つ、二つ……啄ばむような口づけはやっぱり恥ずかしくて、けれど幸せだなって思う自分もいる事を僕は知っている。
「……っ……」
僕達は三つ目の口づけで名残惜し気に離れた。
「……ややややっぱり、恥ずかしいですね……」
「そう? 私は離せなくなりそうだけど」
「兄様!?」
「ふふ、真っ赤な顔のエディが可愛い」
「っ!」
そう言われて赤くなった顔を更に赤くした僕は、俯きながら「もう見たら駄目です!」と言った。
兄様は「じゃあ、紅茶でも飲んで機嫌を直して?」って僕のミルクティ色の髪にそっと触れてから、部屋の外にいたマリーに紅茶を頼んだ。
マリーが持ってきてくれたのは優しい香りのアップルティだった。一緒に小さなマカロンもついてきた。
「ああ、マカロンだ。久しぶり」
「最近はチョコレートのマカロンやマンゴー味のマカロンもあるみたいだよ?」
「ええ! それは美味しそうです」
「じゃあ今度一緒にお店に買いに行こうか」
「はい!」
一口で食べられる小さな赤いマカロンを口に入れて、ゆっくりと紅茶を飲みながら僕は考えていた。
爵位を、そして領地を授かる事はどういう事で、どんな事が必要になるのか。まずはそこから聞いてみようって。
「美味しいね」
初めて会った時と同じだって思った。
赤いマカロンを口にする僕を、大好きなブルーの瞳が真っ直ぐに見つめている。
「はい」
これからもずっと、こうしていたいなって思った。
------------
どんどん自覚&学習&慣れて?いくエディ。
六の月の発表の前に甘いのを入れてみました♪
「エディ」
名前を呼ばれて立ち止まって振り返る。
「大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
それだけ答えて、廊下でする話ではないとそのまま僕の部屋へと向かった。そしてテーブルセットの椅子に座り、念のために遮音の魔法をかける。
「えっと、途中で泣いたりしてすみません。ちょっとびっくりしてしまって」
「ああ、私もびっくりしたよ。結婚できないと言われるとは思ってもいなかった」
「すすすみません! 何だかもうわけが分からなくなってしまって」
「うん。大丈夫、ちゃんと分かっているから」
兄様は笑って頷いてくれた。
「ありがとうございます。六の月になるまでにもう少しだけ時間があるので、よく考えます。ちゃんと何をどうしたらいいのか、考えます。だって、これは僕と兄様だけの話ではなくなってくるから……」
「……ああ、そうだね。ウィリアムやハロルド達も巻き込む事になる」
「はい……でも、王城の官吏の人達が、そして王様と父様達が色々と細かく考えて下さってすごいなぁと思いました。僕はフィンレーから離れてしまうのは嫌だっていう気持ちが強いけれど、でも、新しい領地っていうのも少し気になります」
「そう。それなら良かった。領主になると色々と考える事も出てくると思うけれど、エディなら良い領主になれると思うよ。私もシルヴァン様が公爵家に臣籍降下なされば、側近の役割は終了だ。実はダニエルはもう宰相府に入る事が決まっているんだよ」
「わぁ! そうなのですね」
「ああ、おそらくロイスもそちらへ引っ張られるだろうね。本人は公爵家の次男で悠々自適に暮らしたいなんて言っているけど、宰相府でなければシルヴァン様の方で何か役付きになるかもしれないな」
「ニールデン様ですね。そう言えば兄様達には褒賞とかはないのですか?」
「一応皆報奨金は出るみたいだね。大きな魔石があったらほしいなぁとは思っているんだ」
「魔石ですか?」
「そう。フレイム・グレート・グリズリーの真っ赤な魔石。ぜひとも記念に欲しい」
そう言って笑った兄様に、僕も一緒に笑った。笑えて良かったって思った。
「一応ね、マーティには叙爵の話もあるみたいなんだけど、少しレイモンド自体が揉めているらしくてね。その辺りはよく分からないな」
「そうなんですね」
「ああ、でもエディはまずはどうしたいのかよく考えて、少しでも不安な事があれば話をしてね。そして、結婚をしないっていうのは無しだよ?」
兄様は小さく笑いながら僕の顔を覗き込んできた。
「はい。け、結婚しないのは、ないです……」
「うん。約束だよ」
テーブル越しに手を引き寄せられて、小さなテーブルを挟んだままそっと口づけた。
一つ、二つ……啄ばむような口づけはやっぱり恥ずかしくて、けれど幸せだなって思う自分もいる事を僕は知っている。
「……っ……」
僕達は三つ目の口づけで名残惜し気に離れた。
「……ややややっぱり、恥ずかしいですね……」
「そう? 私は離せなくなりそうだけど」
「兄様!?」
「ふふ、真っ赤な顔のエディが可愛い」
「っ!」
そう言われて赤くなった顔を更に赤くした僕は、俯きながら「もう見たら駄目です!」と言った。
兄様は「じゃあ、紅茶でも飲んで機嫌を直して?」って僕のミルクティ色の髪にそっと触れてから、部屋の外にいたマリーに紅茶を頼んだ。
マリーが持ってきてくれたのは優しい香りのアップルティだった。一緒に小さなマカロンもついてきた。
「ああ、マカロンだ。久しぶり」
「最近はチョコレートのマカロンやマンゴー味のマカロンもあるみたいだよ?」
「ええ! それは美味しそうです」
「じゃあ今度一緒にお店に買いに行こうか」
「はい!」
一口で食べられる小さな赤いマカロンを口に入れて、ゆっくりと紅茶を飲みながら僕は考えていた。
爵位を、そして領地を授かる事はどういう事で、どんな事が必要になるのか。まずはそこから聞いてみようって。
「美味しいね」
初めて会った時と同じだって思った。
赤いマカロンを口にする僕を、大好きなブルーの瞳が真っ直ぐに見つめている。
「はい」
これからもずっと、こうしていたいなって思った。
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どんどん自覚&学習&慣れて?いくエディ。
六の月の発表の前に甘いのを入れてみました♪
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