49 / 127
アストルム騎士団創立編
第41話 悪役令嬢の報告
しおりを挟む
たった10歳で領地で行われていた不正横領、王宮で禁止されている薬物取引、密輸武器の取り締まり。
荒れ果てた街を復興させた功績でこれに関与した騎士見習いは全て騎士として認められ、ダリアはこの騎士たちをまとめる騎士団創立を許された。
【アストルム騎士団】
それは騎士団長であるダリアが夜空の星々のように何人たりともかけることは許されないと口々に言っていたためこの名前になった。
大きな特徴は五大属性全ての人材が揃っていること。
普通の騎士団は何かに偏っていることが多く、炎で固まっている騎士団もあれば風で固まる騎士団もいる。
アストルム騎士団はそんな中全ての属性が揃っており設立後も団員は増えていく。
そして、騎士団が作られたことである噂が囁かれる。
「ダリア・クロウリーは聖女候補選抜を辞退するのではないか。」
というものだ。
当の本人はもちろんそのつもりだ。
しかし世間は「まさかそんな、」というまだ疑いだけで本当に辞退するつもりとは思ってもいなかったのだ。
数ヶ月ぶりに本邸に戻ったダリアの元に妹のヒナが駆けつける。
「お兄様っ!」
「ヒナ」
嬉しそうなヒナの頭を優しく撫でてやると顔を赤らめて俯く。
数ヶ月しか経っていないがやはり成長期なのだろう背も少し伸び髪質も改善されて所作も更に磨きがかかっていた。
ダリアは順調にレディとして育っているとうんうん唸りながら感心していた。
「変わりはないか?」
「はい、お兄様もお疲れではございませんか?」
「そうだね、少し疲れたな。」
何時間も馬に乗っていたためダリアの腰は石のように固まっている。
ヒナに手を引かれながら部屋に向かうとどこからかアルベルトの声が近づいてくる。
「ダリア!」
「あ、アルベルト、、、様。」
酷く拗ねた様子でダリアを睨みつけるアルベルトにダリアは内心ため息をついていた。
「何ヶ月も留守にしていると思えば手紙もよこさないなんて!」
「お兄様はお疲れなのです、そんなに大声出さないでください。」
「これは婚約者としての問題だ、妹は引っ込んでろ。」
「っ!わ、私はお兄様の妹として!」
ふたりがぎゃいぎゃいと騒いでるうちにダリアは1人部屋に入りベッドに飛び込んだ。
(疲れた、、、、帰れば休めると思ったんだけど。)
ゆっくりと手を伸ばし手のひらに風や水の魔法を使って弄ぶ。
(本来、他の属性を扱うことなど不可能だ。しかし、わたしは扱える。世界を跨いだ記憶を持つ者の特権ということか。なんにしろこの力についても調べなければ。)
この数ヶ月で成し遂げたことは領地復興だけではなかった。
自分が五大属性全てを扱えることがわかった。
もちろんその中でいちばん得意なのは闇属性の魔法だ。
しかし、このことは誰にも明かしてはいない。
そんなことを知られようものなら聖女候補にすぐさま祭り上げられてしまうだろう。
ダリアはこのことを話すのは少数に限ろうと考えていた。
魔法について仰向けになりながら考えていてもなお部屋の外は騒がしかった。
やすむのはもう少しあとだと悟ったダリアは騎士の制服からシャツに着替えると部屋の外に顔を出した。
「騒がしくて休めたものじゃないよ。」
分かりやすくため息を着くとヒナは大変申し訳なさそうに謝罪をする。
アルベルトはフンっと鼻を鳴らしながらそっぽを向くと「まずは婚約者に報告が先だろう。」
と言った。
「わかったわかった、ではアフタヌーンティーにするとしよう。ヒナ、お前もどうだ?」
「はい!お兄様!」
3人はアフタヌーンティーを楽しみながらダリアを中心として元クロース領で起こったことについて話した。
「そんな悪行が、、、」
「この国では横行していることさ。だが皆目を瞑っている。」
「今回のことでお兄様が誰かに恨まれるようなことはありませんか?」
「今回は自身の領内でした事だ。ほかの貴族の領地は我々の領分では無いからね。手も出せないし、向こうだって今回のことで恨む筋合いがないから大丈夫だよ。」
「しかし、気をつけろよ。少なからずお前が騎士団を作ったことは誰かにとっては面白くないはずだからな。」
「見ない間に随分賢くなったねアル。」
「お前な、仮にも王子だぞ。」
「殿下の教養の深さには感服致します。」
「お前、、、思ってないな。」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
荒れ果てた街を復興させた功績でこれに関与した騎士見習いは全て騎士として認められ、ダリアはこの騎士たちをまとめる騎士団創立を許された。
【アストルム騎士団】
それは騎士団長であるダリアが夜空の星々のように何人たりともかけることは許されないと口々に言っていたためこの名前になった。
大きな特徴は五大属性全ての人材が揃っていること。
普通の騎士団は何かに偏っていることが多く、炎で固まっている騎士団もあれば風で固まる騎士団もいる。
アストルム騎士団はそんな中全ての属性が揃っており設立後も団員は増えていく。
そして、騎士団が作られたことである噂が囁かれる。
「ダリア・クロウリーは聖女候補選抜を辞退するのではないか。」
というものだ。
当の本人はもちろんそのつもりだ。
しかし世間は「まさかそんな、」というまだ疑いだけで本当に辞退するつもりとは思ってもいなかったのだ。
数ヶ月ぶりに本邸に戻ったダリアの元に妹のヒナが駆けつける。
「お兄様っ!」
「ヒナ」
嬉しそうなヒナの頭を優しく撫でてやると顔を赤らめて俯く。
数ヶ月しか経っていないがやはり成長期なのだろう背も少し伸び髪質も改善されて所作も更に磨きがかかっていた。
ダリアは順調にレディとして育っているとうんうん唸りながら感心していた。
「変わりはないか?」
「はい、お兄様もお疲れではございませんか?」
「そうだね、少し疲れたな。」
何時間も馬に乗っていたためダリアの腰は石のように固まっている。
ヒナに手を引かれながら部屋に向かうとどこからかアルベルトの声が近づいてくる。
「ダリア!」
「あ、アルベルト、、、様。」
酷く拗ねた様子でダリアを睨みつけるアルベルトにダリアは内心ため息をついていた。
「何ヶ月も留守にしていると思えば手紙もよこさないなんて!」
「お兄様はお疲れなのです、そんなに大声出さないでください。」
「これは婚約者としての問題だ、妹は引っ込んでろ。」
「っ!わ、私はお兄様の妹として!」
ふたりがぎゃいぎゃいと騒いでるうちにダリアは1人部屋に入りベッドに飛び込んだ。
(疲れた、、、、帰れば休めると思ったんだけど。)
ゆっくりと手を伸ばし手のひらに風や水の魔法を使って弄ぶ。
(本来、他の属性を扱うことなど不可能だ。しかし、わたしは扱える。世界を跨いだ記憶を持つ者の特権ということか。なんにしろこの力についても調べなければ。)
この数ヶ月で成し遂げたことは領地復興だけではなかった。
自分が五大属性全てを扱えることがわかった。
もちろんその中でいちばん得意なのは闇属性の魔法だ。
しかし、このことは誰にも明かしてはいない。
そんなことを知られようものなら聖女候補にすぐさま祭り上げられてしまうだろう。
ダリアはこのことを話すのは少数に限ろうと考えていた。
魔法について仰向けになりながら考えていてもなお部屋の外は騒がしかった。
やすむのはもう少しあとだと悟ったダリアは騎士の制服からシャツに着替えると部屋の外に顔を出した。
「騒がしくて休めたものじゃないよ。」
分かりやすくため息を着くとヒナは大変申し訳なさそうに謝罪をする。
アルベルトはフンっと鼻を鳴らしながらそっぽを向くと「まずは婚約者に報告が先だろう。」
と言った。
「わかったわかった、ではアフタヌーンティーにするとしよう。ヒナ、お前もどうだ?」
「はい!お兄様!」
3人はアフタヌーンティーを楽しみながらダリアを中心として元クロース領で起こったことについて話した。
「そんな悪行が、、、」
「この国では横行していることさ。だが皆目を瞑っている。」
「今回のことでお兄様が誰かに恨まれるようなことはありませんか?」
「今回は自身の領内でした事だ。ほかの貴族の領地は我々の領分では無いからね。手も出せないし、向こうだって今回のことで恨む筋合いがないから大丈夫だよ。」
「しかし、気をつけろよ。少なからずお前が騎士団を作ったことは誰かにとっては面白くないはずだからな。」
「見ない間に随分賢くなったねアル。」
「お前な、仮にも王子だぞ。」
「殿下の教養の深さには感服致します。」
「お前、、、思ってないな。」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
70
あなたにおすすめの小説
本の通りに悪役をこなしてみようと思います
Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。
本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって?
こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。
悪役上等。
なのに、何だか様子がおかしいような?
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!
あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】
小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。
その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。
ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。
その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。
優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。
運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。
※コミカライズ企画進行中
なろうさんにも同作品を投稿中です。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
【完結】あなたの色に染める〜無色の私が聖女になるまで〜
白崎りか
恋愛
色なしのアリアには、従兄のギルベルトが全てだった。
「ギルベルト様は私の婚約者よ! 近づかないで。色なしのくせに!」
(お兄様の婚約者に嫌われてしまった。もう、お兄様には会えないの? 私はかわいそうな「妹」でしかないから)
ギルベルトと距離を置こうとすると、彼は「一緒に暮らそう」と言いだした。
「婚約者に愛情などない。大切なのは、アリアだけだ」
色なしは魔力がないはずなのに、アリアは魔法が使えることが分かった。
糸を染める魔法だ。染めた糸で刺繍したハンカチは、不思議な力を持っていた。
「こんな魔法は初めてだ」
薔薇の迷路で出会った王子は、アリアに手を差し伸べる。
「今のままでいいの? これは君にとって良い機会だよ」
アリアは魔法の力で聖女になる。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる