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アストルム騎士団創立編
第45話 悪役令嬢 王女に一目惚れされる
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翌年 3月
長い冬が終わり鮮やかな花が咲き始める春をディシュタイン王国は迎える。
この季節に10年前に春に咲く花のように可憐な王女が誕生した。
ディシュタイン王家が代々受け継ぐ金色の美しい髪に蜂蜜のような瞳。
この王女が誕生し10年の月日が経った。
そのめでたい日を国中で祝おうとお祭り騒ぎだ。
王宮で行われる誕生日パーティー会場では既に多くの貴族が集まっていた。
そこに噂のアストルム騎士団がブランディーヌ王女の馬車を警護しながら現れた。
12歳になったダリア、そしてアストルム騎士たちはまた少し成長していた。
ダリアは顔つきが段々と大人びていき物憂げな瞳に王都中の女性は心奪われていた。
王女の馬車が王宮内に到着すると馬車の中でふくれっ面で不貞腐れる王女が侍女に駄々をこねていた。
「わたくし、もうパーティーなんて嫌だってお父様に言ったわ!」
「王女様のお誕生日をお祝いするパーティーですよ、みんな王女がこれまでご無事に成長なさったことを嬉しく思っているのです。」
「、、、そんなの頼んでないわ。」
「ですがもう着いてしまいました、皆に顔を出さなければ。」
「嫌ったら嫌!」
コンコン。
ブランディーヌ王女がパーティーに飽き飽きし駄々をこね続けていると馬車の扉が叩かれる。
「妃殿下、王宮に着きましてございます。」
凛とした透き通るような声に王女は不貞腐れながらも「今降ります!」と怒りを声に乗せる。
馬車の扉が開かれるとこちらに手を差し伸べる美少年が深い青の瞳で王女を見据えていた。
「妃殿下、どうぞお手を。」
目の前の美少年、、、ダリアに見蕩れながら手を取ると馬車を降りる。
ダリアから目が離せずに歩いていると案の定ドレスの裾を踏み転んでしまいそうになる。
大勢の貴族の前でしかも誕生日パーティーで転ぶのは大変縁起の悪いことであった。
しかし、そこは見事ダリアが手を上に引き腰を抱きバランスをとった。
その見事なエスコートに誰もが目を離せずにいた。
「妃殿下、ダンスにはまだお早いかと。」
耳元で囁かれた言葉に顔を真っ赤にする王女。
「なっ!だ、誰がダンスを!」
反射でダリアの方を見上げるといたずらっ子のように「シィーッ」と人差し指で自分の唇に当てて笑っていた。
「っ!」
無事に会場にたどり着き事なきを得ると国王のお言葉が終わり歓談の時間となった。
警護としてきているので会場全体に目を光らせながら腕を組んで植木に寄りかかって立っていると目の前に王女がやってきた。
「あ、あの!」
「これは妃殿下。楽しまれていますか?」
ダリアの言葉に王女は表情を曇らせた。
そしてつまらなそうに「別に、」と答えると顔をそっぽに向けてしまう。
「いつもと同じよ。わたくしのためと言っておきながらわたくしの言葉を聞いてくれる人なんて誰もいやしない。だからつまらない。」
少し悲しそうに言う王女をしばらく黙って見ていると背後の生垣に咲いている黄色の薔薇を取り見つめ始めた。
「?」
「私は妃殿下がこのように美しく健やかに成長されたことをこの上なく喜ばしいことだと思っていますよ。」
そう言うと手に持っている黄色い薔薇を王女の髪に飾ってやり、優しく微笑む。
「このパーティーのおかげで妃殿下にお会いすることができたのですから。」
王女は顔を赤らめると嬉しそうに「それはよかったわ!」と笑顔で答えた。
パーティーが終わり貴族達が続々と帰っていく中ダリアのもとにヒナが駆け寄る。
「お兄様!ようやく会えました!」
「淑女が走るものでは無いよ。」
「も、申し訳ありません。お兄様、もうお帰りになるなら一緒に馬車で帰りませんか?」
「いや、私は騎士団と共に帰るよ。お前は先にお父様たちと別邸にお帰り。」
「で、ですが!」
「いい子だから。」
そう言って額にキスを落とすとヒナはまだ少し不満げにしながら大人しく言うことを聞いた。
「ダリア・クロウリー、、、なんて素敵な騎士なの。」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
長い冬が終わり鮮やかな花が咲き始める春をディシュタイン王国は迎える。
この季節に10年前に春に咲く花のように可憐な王女が誕生した。
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この王女が誕生し10年の月日が経った。
そのめでたい日を国中で祝おうとお祭り騒ぎだ。
王宮で行われる誕生日パーティー会場では既に多くの貴族が集まっていた。
そこに噂のアストルム騎士団がブランディーヌ王女の馬車を警護しながら現れた。
12歳になったダリア、そしてアストルム騎士たちはまた少し成長していた。
ダリアは顔つきが段々と大人びていき物憂げな瞳に王都中の女性は心奪われていた。
王女の馬車が王宮内に到着すると馬車の中でふくれっ面で不貞腐れる王女が侍女に駄々をこねていた。
「わたくし、もうパーティーなんて嫌だってお父様に言ったわ!」
「王女様のお誕生日をお祝いするパーティーですよ、みんな王女がこれまでご無事に成長なさったことを嬉しく思っているのです。」
「、、、そんなの頼んでないわ。」
「ですがもう着いてしまいました、皆に顔を出さなければ。」
「嫌ったら嫌!」
コンコン。
ブランディーヌ王女がパーティーに飽き飽きし駄々をこね続けていると馬車の扉が叩かれる。
「妃殿下、王宮に着きましてございます。」
凛とした透き通るような声に王女は不貞腐れながらも「今降ります!」と怒りを声に乗せる。
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「妃殿下、どうぞお手を。」
目の前の美少年、、、ダリアに見蕩れながら手を取ると馬車を降りる。
ダリアから目が離せずに歩いていると案の定ドレスの裾を踏み転んでしまいそうになる。
大勢の貴族の前でしかも誕生日パーティーで転ぶのは大変縁起の悪いことであった。
しかし、そこは見事ダリアが手を上に引き腰を抱きバランスをとった。
その見事なエスコートに誰もが目を離せずにいた。
「妃殿下、ダンスにはまだお早いかと。」
耳元で囁かれた言葉に顔を真っ赤にする王女。
「なっ!だ、誰がダンスを!」
反射でダリアの方を見上げるといたずらっ子のように「シィーッ」と人差し指で自分の唇に当てて笑っていた。
「っ!」
無事に会場にたどり着き事なきを得ると国王のお言葉が終わり歓談の時間となった。
警護としてきているので会場全体に目を光らせながら腕を組んで植木に寄りかかって立っていると目の前に王女がやってきた。
「あ、あの!」
「これは妃殿下。楽しまれていますか?」
ダリアの言葉に王女は表情を曇らせた。
そしてつまらなそうに「別に、」と答えると顔をそっぽに向けてしまう。
「いつもと同じよ。わたくしのためと言っておきながらわたくしの言葉を聞いてくれる人なんて誰もいやしない。だからつまらない。」
少し悲しそうに言う王女をしばらく黙って見ていると背後の生垣に咲いている黄色の薔薇を取り見つめ始めた。
「?」
「私は妃殿下がこのように美しく健やかに成長されたことをこの上なく喜ばしいことだと思っていますよ。」
そう言うと手に持っている黄色い薔薇を王女の髪に飾ってやり、優しく微笑む。
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「いや、私は騎士団と共に帰るよ。お前は先にお父様たちと別邸にお帰り。」
「で、ですが!」
「いい子だから。」
そう言って額にキスを落とすとヒナはまだ少し不満げにしながら大人しく言うことを聞いた。
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