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青年編
第62話 旅立ち
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出発の朝、アメリアは食事が喉を通らず不安などの様々な感情を抱えて身支度を済ませた。
ウンディーネは無表情でアメリアの後ろに仕えている。
そんな彼女にアメリアは前を見据えたまま声をかけるとウンディーネが透き通るような声で返事をする。
「わ、わたくしはここで待っていればいいの?」
「はい、お嬢様。間もなくダリア様がいらっしゃるかと。」
ウンディーネの言葉と共に部屋のドアからノックが聞こえる。
「アメリア?支度はできた?」
ダリアの声に弾くように反応すると部屋のドアが開きシックなドレスに身を包んだダリアが姿を現す。
あまりの美しさにアメリアは言葉を失っていた。
(同じ顔だとしても、こんなに大人っぽく見えるのは夕だからだわ。)
「さぁ、アメリア。心の準備はいいかい?新しい人生の始まりだ。」
城の外に出ると街に続く水路に飾り付けられたゴンドラが浮いていた。
ダリアはアメリアを乗せると自分も乗り込み従者に出発させる。
街に続いていく水路には沢山の花びらが散りばめられており水路脇の街にはたくさんの人々がアメリアとダリアを人目見ようと集まっていた。
「ダリア様がまた才能ある方を養女に迎え入れられたぞ!」
「ヒナ様の姉君になられるそうだ!」
「可愛らしいヒナ様とは違ってダリア様のようにお美しい方ね!」
血筋を慮る国の公爵家とは思えないダリアの行動に平民は感心し、貴族たちは白い目を向けていた。
しかしダリアのおかげで違法薬物の流れ元が割れたのも事実、王室はこれを評価しないわけにはいかなかった。
アメリアは慣れない賛美の声に俯いて顔を赤らめていた。
それに気が付いたダリアは指で顎を持ち上げて上を向かせる。
「これからアウェーに向かうんだ。今のうちにしっかりと覚えておきなさい。貴女を認めている人がちゃんと存在しているのだと。」
「、、、はい。」
ゆったりと流れていくゴンドラはまるでこれから新たな船出に向かうようだった。
ベルメール領の公道に出ると馬車に乗り換え待っていたアストルム騎士団と共にクロウリー領へと歩みを進めた。
表情を曇らせたまま俯くアメリアにダリアは変わらず窓の外を見つめながら淡々と言葉を口にしていく。
「ベルメールは私が最初に作り上げた城だ。いつでも帰ってくればいいさ。」
「わたくしがクロウリー家に帰ってくることであなたが何か言われないかと心配しているのよ?」
アメリアの言葉に沈黙するダリアを更に詰める。
「わたくしより心が強いのかもしれないけれど、それでも傷は残るものなの。」
「ねぇ、ダリア。」
ダリアが夕として語りかけ始めた。
「私はね、ダリア。この世界に転生してもなお、心が満たされたことは一度もない。嬉しいと思ったことも悲しいと思ったことも、、、その瞬間は感じこそすれ、それが本物だと信じることが出来ないんだよ。」
(夕は昔から感情があるように見えて無関心なことが多かった。だからこそ何故わたくしに固執するのかがわからない。いっときの感情でわたくしに慈悲をかけたのならいつかわたくしの手を離してしまうんじゃないだろうか。)
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
ウンディーネは無表情でアメリアの後ろに仕えている。
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「ダリア様がまた才能ある方を養女に迎え入れられたぞ!」
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それに気が付いたダリアは指で顎を持ち上げて上を向かせる。
「これからアウェーに向かうんだ。今のうちにしっかりと覚えておきなさい。貴女を認めている人がちゃんと存在しているのだと。」
「、、、はい。」
ゆったりと流れていくゴンドラはまるでこれから新たな船出に向かうようだった。
ベルメール領の公道に出ると馬車に乗り換え待っていたアストルム騎士団と共にクロウリー領へと歩みを進めた。
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アメリアの言葉に沈黙するダリアを更に詰める。
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「私はね、ダリア。この世界に転生してもなお、心が満たされたことは一度もない。嬉しいと思ったことも悲しいと思ったことも、、、その瞬間は感じこそすれ、それが本物だと信じることが出来ないんだよ。」
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