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ルージュ
しおりを挟む聖教国は戦神女神アマルダを奉り、魔王討伐を掲げる国、民衆は常に神に祈りを捧げ、戦争となると一般兵として徴兵される。
国は疲弊し、勇者と言う神の使いが現れなければその信仰も無くなっていただろう。
「此度、勇者召喚で現れた十五名の勇者は一年後の魔王との決戦にて大義を成してくれるだろう」
「うおぉぉぉおぉぉぉ!」
聖教国に入った俺は街を見やるとそこかしこに戦争孤児がいて、敗戦国という名が相応しいと思ってしまう。
「何が勇者だよ」
聖教国とは名ばかりの国としての利益のみにとらわれた最悪の国だ。
宿を取り、街を散策すると魔法屋も武器、防具屋もない。反乱を恐れているのかギルドすらなかった。
「こんな国と赤の魔女はなぜ戦っているのだ?」
すぐにでも滅ぼすことができるのになぜしない?なにかしらわけがあるのではないか?
俺はもう一度城に入ることを決めた。
城内宝物庫、最悪はここの金を全て盗んでいき、戦争どころじゃ無くしてしまおう。
だがここに何かないかを探してみてからだが、これと言って出てくるのは金ばかり。
「ん?隠し扉?」
感知になにか反応があったのでさがしてみると、ある像に巧妙に隠されたボタンがあった。押すと像が反転して扉が開く。
「何が隠してあるんだ?」
据えた匂いがする廊下をゆっくり進んでいく。明かりがないので魔法で明かりをつけると、終わりが見えたが。そこには女の子が磔にされていた。痛々しい手足には杭が打ち付けられ、首輪からは血が流れている。
「ぁああ……あぁあ」
「だれがこんなことを『ヒール』」
杭を抜き、首輪を外すと倒れ込む女の子を支える。汚物に塗れ血に濡れてそれでもまだ生きている。
『転移』
宝物庫のボタンを押して扉を閉める。
『転移』
ルーには悪いがこの子を洗ってやらなければ。井戸である程度洗ってやると、今度はルーに頼んで風呂を沸かしてもらう。
「なんだい?今度は急に風呂を沸かせだなんて」
「この子を洗ってやってくれないか?」
「そ、その子は!何処にいたんだい?」
「聖教国の宝物庫の隠し扉だ」
「そうかい。これで」
「それよりも早く」
「あいよ!『洗浄』」
綺麗になっていくこの子を抱きしめる。
「よかったな」
「う、あぁ」
「気が付いたか?ここはもう大丈夫だからな」
金髪ロングで、赤い目をした女の子だ。
「貴方が助けてくれたの?」
「あぁ。助けられて良かった」
なぜか涙が溢れる。
「泣かないで」
彼女の小さな手はさっきまで大きな穴が空いていた。その手で俺の目元を拭う。
「あぁ。大丈夫だ。それより腹は減ってないか?」
「お腹空いた」
“カプッ”と俺の首に噛み付くと何かを吸われている気がする。
「これ、やめなさい!」
ルーが止めに入ると少し血色のよくなった彼女は、ルーを睨む。
「邪魔しないで」
「そのこは人間だよ!あんたが血を吸うと干からびちまうよ」
「え?人間?」
彼女の目は大きく開き、ビックリしている。
ルーの部屋に入るとユフィがすぐに寄ってくる。
「誰なの?女の子?」
目が座っているのが怖いので直ぐに説明しようとする。
「あの」
「その子はルージュ・ガルシア、赤の魔女の娘さ」
「「ええぇえぇー」」
「ルージュ・ガルシアです。お兄ちゃんの名前は?」
「俺?俺はコタロー」
「コタローは私のモノ!」
「だめ!私のコタローなの!」
ルージュとユフィでいがみ合っているが、俺はどうすればいいんだ?
「それよりこの子が赤の魔女の娘だったら」
「赤の魔女は憂なく聖教国を潰すでしょうね」
「それはまずい!まだ勇者達があの国にいるんだ」
どうやって助けるかもまだ決めていないのに、
「魔女会談を開催するわ」
ルナディア大陸の中央、ルナディア最大のダンジョン『バベル』が聳り立つ。その最上位層にて魔女会談は行われる。
「こんな短期間で二回目の魔女会談なんて何があったのかしら?」
青の魔女ミスティアがそう溢す。
「さあ?今回もルーが主催らしいわよ」
白の魔女メイフィが紅茶に口をつける。
「私は忙しいのになぜいまなんだ」
赤の魔女ライラが立ち上がり苛立ちをぶつける。
「あぁ、勇者召喚が行われたらしいわね?百年ぶりかしら?」
「今度の勇者は何日もつのか見ものね」
「すぐに捻り潰してやるさ」
「まぁまぁ、そう癇癪を起こしてもしょうがないさね」
「ルー!おま……え。」
ライラの瞳に映ったのは、金髪の赤い瞳をした自分が探して探してもう死んだものと思っていた。
「ルージュ!」
「お母様!」
抱き合う二人を置いてルーは椅子に座りコーヒーを魔法で出すと、眺めながらゆっくり口をつける。
「ルー!なぜここにルージュがいるんだ!」
「お母様!ルー様は私をここまで連れてきてくださったのです」
ルージュはライラを止めてこれまでの経緯を語る。
「聖教国め!ようやく潰す時がきたな!存分に暴れてくれようぞ!」
ライラの身体からゆらめきでるオーラに皆が静かになるが、
「ライラ?私になんの言葉もないのかしら?」
「あぁ、ルーよ。私の全てをやってもいいほど感謝している。だがまずは聖教国を潰してからだ」
「それを待って欲しいのよ」
「なぜだ!」
「それは、貴方から言いなさい」
俺はこの魔女会談に来ていた。
「お初にお目にかかります。人間のコタローです」
「なぜここに人間などいれた!ルーよ!」
「それはルージュを助けたのがコタローだからだ」
「なっ!」
「本当です。お母様」
ライラは身体を震わせながら椅子に腰掛ける。
「それで、なぜここに人間が来て聖教国を潰すなと言っているんだ?」
「勇者召喚で召喚された人間には罪はありません。そこでその勇者達を送り返すまでは聖教国に攻撃は待って欲しいのです」
俺は震える足を踏ん張り赤の魔女に話す。
「お前にはそれができるのか?ならいますぐにやれ!」
「勇者召喚された者たちを説得する時間をください」
「ならん!」
「お母様。コタロー様の言うことを聞いてあげてください」
「ルージュ……」
ルージュ援護射撃ありがとう。
「出来るだけ早く肩をつけます。それと」
「まだあるのか!」
「聖教国の城だけを狙って欲しいのです」
元凶は城に巣食う教王達だからだ。
「それもならん!こちらとの戦争には多くの民も参加しているではないか!」
「聖教国の現状をこの目で見てきました。そこは戦争孤児で溢れていて、大人達も生きるのに必死になっています。聖教国の上の人間だけが醜く超え太っているのが現状です」
「ならば城がなくなればどうなる?民は飢えて死ぬだけぞ?」
「お、俺がなんとか」
「出来ぬだろう!しかし、ルージュを助けたのだ。私がどうにかしてやる」
ライラは笑いながらこれからのことを思っているようだ。
「あ、ありがとうございます」
「さっさと勇者を帰らせろ!そしてルーよ、こちらに連絡をくれるか?」
「わかったわよ、ちゃんとうまいことやってね」
「あいわかった!」
魔女会談はこれで終わりを告げた。
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