15 / 26
愛の昇華
01
しおりを挟む
『そういわれても…』
育ての親のようなシリウスと俺がセックスするなんて想像できない。
「今日やるという話ではない。だが早いうちに聖痕を付けなければ、盗み見られるだけじゃすまされない。普通の悪魔ならアドニスの身体をつかって人を傷つけることをしたり犯罪を犯すかもしれない」
『そんな………』
「そのときに傷つくのは周りの人間。お前も傷つくことになるんだぞ」
シリウスの厳しい言葉が心に突き刺さる。
そして急に脳裏に血の海に沈むシリウスの姿が浮かんだ。
何故こんな大事なことを忘れていたのだろう。ゲームで刻印を付けられた主人公が悪魔から助けようと駆け付けたシリウスに怪我を負わせる場面があった。スチルを描いたからわかる。でもその後シリウスがどうなったのかわからない。死んでしまったのか、無事なのか。そのルートがある攻略対象の顔が名前が思い出せない。
冷水を浴びたような恐怖に打たれる。
『…………』
「アドニス?」
俺を心配するシリウスの声。見上げればこわばった頬を掌で撫でられた。
「どうした…強張っている」
俺はシリウスの肩を押しながら身体を起こした。自分の身体の上に座るような格好になったシリウスを見上げる。今、目の前にいるシリウスが怪我をするかもしれない。俺のせいで…。血に濡れ、最悪死ぬかもしれない。それで、いいのか。
『………わかった』
よくない。
俺の考えすぎかもしれない。でもこの世界がゲームの「DAMAGE」そのままだったら刻印された俺がまわりの人をシリウスを傷つける可能性があるのだ。
『シリウス……俺に聖痕をつけてくれ』
頬を撫でていたシリウスの手に自分の手を重ね、彼を見つめた。
「いいのか……嫌だったんだろう」
『嫌だけど……シリウスが傷付くほうがもっと嫌だから』
「そうか……では、今日はもう休もう。時間はもう遅い、腹はすいてないか?」
そう言うとシリウスは俺の上から降りて背を向けると床に落ちていたタオルを拾い自分の腰に巻き付けた。そのまま部屋を出ていこうとする。なぜか俺は無性に切なくなってシリウスの手をつかんだ。
『……聖痕、今つけてくれ』
「だが…」
『じゃなきゃ…気が変わるかもしれない』
シリウスは探る様に俺の顔と掴まれた自分の手を交互に見つめ、空いている方の手で目頭を押さえてため息をついた。
「わかった………」
『………ごめん』
「謝るな、お前は悪くないのだから」
シリウスは不安に苛まれている俺をなだめる様に頭を撫で横に座った。僅かに俺の横のベッドが沈む。
「シャワー浴びてくるか」
『してくる……』
「ゆっくり入ってきなさい。待っているから」
優しいシリウスに瞼があつくなる。
これから聖痕をつけるためにシリウスに抱かれることに対する羞恥か、いや違う。
今になって思い知ったのだ。
死ねば元の世界に戻れるのではと考える自分とシリウスに対してゲームのキャラクターだからと軽んじる気持ちが。そんな自分に対してひたむきな愛情を向けてくれるシリウスに、俺は自分が恥ずかしくなっていた。
育ての親のようなシリウスと俺がセックスするなんて想像できない。
「今日やるという話ではない。だが早いうちに聖痕を付けなければ、盗み見られるだけじゃすまされない。普通の悪魔ならアドニスの身体をつかって人を傷つけることをしたり犯罪を犯すかもしれない」
『そんな………』
「そのときに傷つくのは周りの人間。お前も傷つくことになるんだぞ」
シリウスの厳しい言葉が心に突き刺さる。
そして急に脳裏に血の海に沈むシリウスの姿が浮かんだ。
何故こんな大事なことを忘れていたのだろう。ゲームで刻印を付けられた主人公が悪魔から助けようと駆け付けたシリウスに怪我を負わせる場面があった。スチルを描いたからわかる。でもその後シリウスがどうなったのかわからない。死んでしまったのか、無事なのか。そのルートがある攻略対象の顔が名前が思い出せない。
冷水を浴びたような恐怖に打たれる。
『…………』
「アドニス?」
俺を心配するシリウスの声。見上げればこわばった頬を掌で撫でられた。
「どうした…強張っている」
俺はシリウスの肩を押しながら身体を起こした。自分の身体の上に座るような格好になったシリウスを見上げる。今、目の前にいるシリウスが怪我をするかもしれない。俺のせいで…。血に濡れ、最悪死ぬかもしれない。それで、いいのか。
『………わかった』
よくない。
俺の考えすぎかもしれない。でもこの世界がゲームの「DAMAGE」そのままだったら刻印された俺がまわりの人をシリウスを傷つける可能性があるのだ。
『シリウス……俺に聖痕をつけてくれ』
頬を撫でていたシリウスの手に自分の手を重ね、彼を見つめた。
「いいのか……嫌だったんだろう」
『嫌だけど……シリウスが傷付くほうがもっと嫌だから』
「そうか……では、今日はもう休もう。時間はもう遅い、腹はすいてないか?」
そう言うとシリウスは俺の上から降りて背を向けると床に落ちていたタオルを拾い自分の腰に巻き付けた。そのまま部屋を出ていこうとする。なぜか俺は無性に切なくなってシリウスの手をつかんだ。
『……聖痕、今つけてくれ』
「だが…」
『じゃなきゃ…気が変わるかもしれない』
シリウスは探る様に俺の顔と掴まれた自分の手を交互に見つめ、空いている方の手で目頭を押さえてため息をついた。
「わかった………」
『………ごめん』
「謝るな、お前は悪くないのだから」
シリウスは不安に苛まれている俺をなだめる様に頭を撫で横に座った。僅かに俺の横のベッドが沈む。
「シャワー浴びてくるか」
『してくる……』
「ゆっくり入ってきなさい。待っているから」
優しいシリウスに瞼があつくなる。
これから聖痕をつけるためにシリウスに抱かれることに対する羞恥か、いや違う。
今になって思い知ったのだ。
死ねば元の世界に戻れるのではと考える自分とシリウスに対してゲームのキャラクターだからと軽んじる気持ちが。そんな自分に対してひたむきな愛情を向けてくれるシリウスに、俺は自分が恥ずかしくなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
悪役未満な俺の執事は完全無欠な冷徹龍神騎士団長
赤飯茸
BL
人間の少年は生まれ変わり、独りぼっちの地獄の中で包み込んでくれたのは美しい騎士団長だった。
乙女ゲームの世界に転生して、人気攻略キャラクターの騎士団長はプライベートでは少年の執事をしている。
冷徹キャラは愛しい主人の前では人生を捧げて尽くして守り抜く。
それが、あの日の約束。
キスで目覚めて、執事の報酬はご主人様自身。
ゲームで知っていた彼はゲームで知らない一面ばかりを見せる。
時々情緒不安定になり、重めの愛が溢れた変態で、最強龍神騎士様と人間少年の溺愛執着寵愛物語。
執事で騎士団長の龍神王×孤独な人間転生者
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる