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第8章
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合コンは大学近くの居酒屋で行われた。可もなく不可もない、そんな店だった。俺は下座に座って、真ん中がハル、一番奥がハルと同じ学部だという男が座った。向かいには女の子が三人。
飲み物が来て乾杯をした。ビールを三分の一くらい飲んだ。ジョッキを置くとすることがなかった。話題がなかった。なにを話せばいいのだろう、それが全員が共通して思っていることだろうと思った。
俺はまたジョッキに手をつけた。すると一番端に座っている男が学部はどこなの? と質問をした。女の子が右端から順に答える。それが終わるとまた沈黙が訪れた。右端の女の子が今度は俺たちの学部を訊いた。奥の男から答えていった。俺も答えた。そしてまた沈黙。俺はビールを飲んだ。
あ、と奥の男が言った。「自己紹介がまだだったね」
奥から順に名前を言った。俺も言った。女の子たちも順に言った。それだけだった。
女の子は三人で顔を合わせて苦笑いをしていた。奥の男がそれに気づいて「お通しおいしいよ」なんてことを言っていた。
なんでそんなに沈黙を恐れるのか俺にはわからなかった。そりゃ、和気あいあいと話が弾めばそれに越したことはないのだろうが、初対面でそれを求めるのも求められるのも、それは無理ってものだろう。
休みの日はなにをしてるの、高校のときの部活は、好きな男性のタイプは、いまはなんのバイトをしてるの……奥の男がどうにか場を盛り上げようと必死で質問を作り出していた。女の子が答えて、男がさらに新しい質問をする……。
俺とハルは一応、愛想笑いを浮かべながら相槌を打っていた。そうしながらも俺もなにかしら話そうと思っていたのだがとっかかりがなかった。奥の男は質問をしたり自分の話をしたりと頑張っていた。これもひとつの才能だよなと感心した。
酒が進むにつれて奥の男の話が長くなった。しまいには政治の話になった。国政についての持論を延々と話していた。ほとんど演説に近かった。話はとどまることを知らなかった。女の子のグラスはとっくに空になっていた。
ついに真ん中の女の子が、あっそうだとわざとらしくカバンから時間割表を出した。「明日、一限あるんだった」
言うが早いか女の子は三人とも席を立った。テーブルには千円札が三枚置かれていた。
それからまもなく俺たちは勘定を済ませて俺とハルは電車に乗って地元へ帰った。飲み足りなかったから二人で飲むことにした。
飲み物が来て乾杯をした。ビールを三分の一くらい飲んだ。ジョッキを置くとすることがなかった。話題がなかった。なにを話せばいいのだろう、それが全員が共通して思っていることだろうと思った。
俺はまたジョッキに手をつけた。すると一番端に座っている男が学部はどこなの? と質問をした。女の子が右端から順に答える。それが終わるとまた沈黙が訪れた。右端の女の子が今度は俺たちの学部を訊いた。奥の男から答えていった。俺も答えた。そしてまた沈黙。俺はビールを飲んだ。
あ、と奥の男が言った。「自己紹介がまだだったね」
奥から順に名前を言った。俺も言った。女の子たちも順に言った。それだけだった。
女の子は三人で顔を合わせて苦笑いをしていた。奥の男がそれに気づいて「お通しおいしいよ」なんてことを言っていた。
なんでそんなに沈黙を恐れるのか俺にはわからなかった。そりゃ、和気あいあいと話が弾めばそれに越したことはないのだろうが、初対面でそれを求めるのも求められるのも、それは無理ってものだろう。
休みの日はなにをしてるの、高校のときの部活は、好きな男性のタイプは、いまはなんのバイトをしてるの……奥の男がどうにか場を盛り上げようと必死で質問を作り出していた。女の子が答えて、男がさらに新しい質問をする……。
俺とハルは一応、愛想笑いを浮かべながら相槌を打っていた。そうしながらも俺もなにかしら話そうと思っていたのだがとっかかりがなかった。奥の男は質問をしたり自分の話をしたりと頑張っていた。これもひとつの才能だよなと感心した。
酒が進むにつれて奥の男の話が長くなった。しまいには政治の話になった。国政についての持論を延々と話していた。ほとんど演説に近かった。話はとどまることを知らなかった。女の子のグラスはとっくに空になっていた。
ついに真ん中の女の子が、あっそうだとわざとらしくカバンから時間割表を出した。「明日、一限あるんだった」
言うが早いか女の子は三人とも席を立った。テーブルには千円札が三枚置かれていた。
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