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第8章
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「バンドのほうはどうなんだ?」
ハルは梅酒のソーダ割りを飲んでいた。俺はビールを飲むとサークルには顔を出していないことを話した。
「なんで」
「……なんでってことはないけど、なんかさ、違うんだよ」
ほうと言うと、ハルは梅酒をすすった。
「みんなさ、音楽がやりたいんじゃなくて、誰かと一緒にいられればいい、って感じがするんだよ」
ハルは黙って聞いている。俺は続けた。
「俺は……俺は、そうやって誰かと適当にいるくらいなら、一人でギターを弾いていたほうが楽しいし、もっとちゃんと音楽をやりたいんだよ」
ハルは煙草に火をつけた。煙を吐くと、灰皿に煙草を置いた。
「ハルは?」
「俺?」
「小説のほうはどうなんだ」
俺かあとハルは腕を組んだ。
「まあ、小説書くのは個人プレーだからなあ。そのへんはバンドより楽かもね」
そんなもんかと俺は言った。
「でも小説なんて、どう書きゃいいかわかんねえな」
ハルは笑った。
「そりゃお前、俺がギターを弾けないのと一緒だよ。俺だってギターをどう弾きゃいいかなんてわかんねえよ」
俺も笑った。
「俺はお前のギター、好きだけどな」
どう言えばいいのかわからずビールをすすった。
「詳しくないからうまく言えないけど、なんかさ、いいんだよ。落ち着くっていうのかなあ。聴いてるとさ」
俺は煙草に火をつける。自分のギターを評されるなんて、滅多にないことだったからかなり気恥ずかしかった。
「作曲はやんないの?」
言われてみれば俺はただ好きな曲を弾いているだけだった。最近では適当に曲ともいえない曲を弾いてみたりしていたが、ちゃんと曲を作ってライブに出るなんてことは考えたことがなかった。
「聴いてみたいな」
確かに面白そうではあった。
「ハルの小説読んでみたいんだけど」
ハルはああ、と言ってバッグから紙を出した。
「習作だけど一応、書いたよ」
A4のコピー用紙で十枚あった。タイトルは『ツィゴイネルワイゼン』
「読んでいい?」
ハルが頷いたので俺は煙草を消して読み始めた。
ハルは梅酒のソーダ割りを飲んでいた。俺はビールを飲むとサークルには顔を出していないことを話した。
「なんで」
「……なんでってことはないけど、なんかさ、違うんだよ」
ほうと言うと、ハルは梅酒をすすった。
「みんなさ、音楽がやりたいんじゃなくて、誰かと一緒にいられればいい、って感じがするんだよ」
ハルは黙って聞いている。俺は続けた。
「俺は……俺は、そうやって誰かと適当にいるくらいなら、一人でギターを弾いていたほうが楽しいし、もっとちゃんと音楽をやりたいんだよ」
ハルは煙草に火をつけた。煙を吐くと、灰皿に煙草を置いた。
「ハルは?」
「俺?」
「小説のほうはどうなんだ」
俺かあとハルは腕を組んだ。
「まあ、小説書くのは個人プレーだからなあ。そのへんはバンドより楽かもね」
そんなもんかと俺は言った。
「でも小説なんて、どう書きゃいいかわかんねえな」
ハルは笑った。
「そりゃお前、俺がギターを弾けないのと一緒だよ。俺だってギターをどう弾きゃいいかなんてわかんねえよ」
俺も笑った。
「俺はお前のギター、好きだけどな」
どう言えばいいのかわからずビールをすすった。
「詳しくないからうまく言えないけど、なんかさ、いいんだよ。落ち着くっていうのかなあ。聴いてるとさ」
俺は煙草に火をつける。自分のギターを評されるなんて、滅多にないことだったからかなり気恥ずかしかった。
「作曲はやんないの?」
言われてみれば俺はただ好きな曲を弾いているだけだった。最近では適当に曲ともいえない曲を弾いてみたりしていたが、ちゃんと曲を作ってライブに出るなんてことは考えたことがなかった。
「聴いてみたいな」
確かに面白そうではあった。
「ハルの小説読んでみたいんだけど」
ハルはああ、と言ってバッグから紙を出した。
「習作だけど一応、書いたよ」
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「読んでいい?」
ハルが頷いたので俺は煙草を消して読み始めた。
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