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第1章
【塀の中】
しおりを挟む塀の中でも龍敏は変わらなかった。
初日に雑居房で気に食わない、そんな理由で暴れて騒ぎを起こし、即座に独居房へ移された。
結局、どこにいようとも、龍敏は龍敏なのだった。
二ヶ月後ーーーー
「兄弟。元気そうだな」
「おおっ兄弟! お前も達者そうでなによりや!」
面会室では、アクリル板を隔ててスーツ姿のクインと、丸坊主になった龍敏が顔を突き合わせていた。
龍敏は灰色の囚人服だが、余裕綽々の顔で、指を二本立てる。
すると後ろで筆記係の刑務官がタバコを一本取り出し、指に滑り込ませて火をつけた。
「ふぅ~」
面会室に紫煙が漂う。
あり得ない光景だった。
だが、これはクインのおかげだ。
「一見すると真面目に見える刑務官でも、バクチ好きなのが災難だったな」
刑務官が苦い顔をしながらも無言で机へ戻る。
彼はギャンブル依存症で、方々に借金があった。
複数の筋から借りては返しての、借金雪だるま男を救ったのがクインだった。全ての借金を返し、釣りもやった。
その代わりに、塀の中の兄弟にある程度の自由を与えたのだった。
「ヒヒヒ、兄弟のおかげで上げ膳据え膳の快適な別荘や」
とは言っているが、頬のこけ具合、目の隈などを見てみると刑務所内の生活がどれほど人間を痛めつけるのかが分かる。
それでも、苦労の影を見せないように気丈に振る舞う龍敏だった。
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