DANCING・JAEGER

KAI

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第1章

【残酷な現実】

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「・・・・・・ヤニ臭くても匂うで兄弟・・・・・・線香の匂いがのぉ・・・・・・」


「・・・・・・ッッ」


「誰の葬儀? 教えてくれや兄弟」


 振り返ると起立し、正々堂々と真正面から見つめてくる龍敏がいた。


 アクリル板越しにもかかわらず、絶対に逃がさないという気迫を感じる。


「・・・・・・龍敏・・・・・・」


「・・・・・・言うてくれや」


「・・・・・・お袋さんが・・・・・・亡くなった」


 短くなったタバコを吹かし、最後の煙を吐くと、龍敏は冷静そうな顔をしていた。


 だが・・・・・・


「・・・・・・ゥゥッッ」


 火のついたタバコをそのまま右手で握りつぶし、皮膚の焦げるジュゥという音がする。


 刑務官が何事かと慌てて近寄るが・・・・・・それがマズかった。


「触んなやボケェ!!」


 背後の刑務官のアゴに猿尻(肘)をめり込ませ、昏倒させる。


「兄弟!!」


「どんな顔やった・・・・・・最期は? 苦しんだか!?」


「・・・・・・穏やかな顔だった・・・・・・お前に・・・・・・」


「何をしている龍敏!!」


 外にいた刑務官が騒動を聞きつけ、龍敏を羽交い締めにしようとするが、殴る蹴るの抵抗によって思うようにはいかない。


「ワシに何を!? 何を言い残したんや!!」


「抵抗するな龍敏ッッ!!」


「聞かせてくれ兄弟ィ!!」


 クインはまさに世界の違うアクリル板の向こう側に近づき、こう言った。


「『待ってるけど、ゆっくりおいで』と・・・・・・」


「・・・・・・クソッタレェェ!!」


 応援に駆けつけた刑務官に頭突きを喰らわせ、握り拳で鼻を砕き、首に回された腕に噛みつく。


 だが、抵抗も虚しく両腕・腰・両脚をガッシリ掴まれ、龍敏の身体は宙に浮いた。


 そのまま、面会室から強制退室させられる龍敏。


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