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二章「結婚の儀」
四十一話「守護者の家族」後編
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「こんにちは、新しい雇い主さん達」タッカの兄弟姉妹だと名乗る『影』のメンバー十名が、『裏口』からやって来た。獣道を通って山を登り、結界を兼ねた壁を乗り越える道だ。
上は二十二歳、下は三歳だそうだ。離宮の結界を通っても警告がなく、闇の精霊の歓びが伝わってくるから、信頼できるということ。タッカに隠れて招くなんて、精霊の悪戯までして。
「本気だったの?」タッカが目を見開く。
「当たり前じゃない。私達のリーダーはタッカよ。貴方がこの国に付くなら、みんなも一緒」年長のスーティー。濃い赤紫の髪とピンクの目、褐色の肌の美女だ。
髪か目、肌のどれかに濃い色を含む子ども達。ゲームでは『黒衆』と呼ばれて蔑まれていた。この国では見たことがなかったけど。黒衆の殆どが実は、闇の加護を持っている。
光の信仰により影の立場にいるけど、この国では神殿に保護され、隠れ里の様な所でのんびりと暮らしていた。前世のRPGに出てきた『黒エルフ』みたいな感じだ。
「ようこそ、みんなに会えて嬉しいわ。タッカの兄弟なら、私達の家族ね」私は笑って腕を広げ、近寄ってくれた一番小さな子を抱きしめる。震える体を膝に抱えて黒髪に口付けた。名を訊くとアトロス、と教えてくれる。
守護者達も寄ってきて、抱き上げたり抱きしめたり。パースランとパクレットはあっという間に、大きな子達と友達の顔で話し始めた。
「まだ数十人程、こちらに来るつもりでいるそうなんだけど」タッカが困った顔で言うのに、笑顔を向けた。
「王配に連絡して貰いましょうよ。これまでの報酬がわりに、暮らす場所くらい手配してくれるでしょ?」
タリーを見ると、こちらも小さな子を抱いてご機嫌だ。聾唖らしく、タリーの口を触ってゴルディ、と名を練習している。
「本当は離宮にいて欲しいけど。騎士団の警戒には穴があるらしい。タッカの補助を頼めるとありがたいな」タリーの言葉に頷く。
「聖域でいいんじゃない? 精霊に愛されてる子達なんだから、大丈夫でしょう」
タリーと話していると、子ども達が仰天したり、ぽかんと口を開けている。
「どうかした?」守護者達と首を傾げた。来た途端仕事を頼んじゃ、まずかったかしら。
「精霊に愛されてるって?」最初に話していた女の子が、唖然とした顔で呟いた。
「言っちゃダメだった?」知らなかったんだ。側に立つタッカを見上げる。
「ここへ来た子には言っても大丈夫。すぐに分かる事だから」タッカが笑顔で答えて、口付けてくれた。
「精霊達に会いに行こう」タッカに招かれて、子ども達が伴侶の間へ入って行く。闇がふわっと広がった後に、気配が消えた。
次に現れたのは、パクレットとパースランの両親。職人のパースランの両親は来るのを渋って、商人であるパクレットの両親が、強引に引っ張って来てくれたようだ。
「父さん、母さん」パースランが二人の前で目を潤ませて俯く。
「……反対などせんのに、なんで言わん」お父さんがぶっきらぼうに呟く。
「だって、職人の子は職人だって父さんはいつも……」パースランは小声で答えた。
「やりたい事ができたと言えばええ。嫌がるのに強制したりはせん」手は器用でも、話すのは不器用な親子なのね。
「父さん、お前が心配で仕事が手に着かなかったんだ。その後もお前は手紙一つくれないから、へそ曲げちまって。あたしも心配してたよ」お母さんが涙を溢す。
「……ごめん。何て言ったらいいか分からなくて」お母さんは親戚のパクレットが家族に連絡したのに、パースランはしないのが寂しかったのかも。
パースランは年の離れた末子で、親兄弟が忙しくて余り構って貰えず、同じような境遇のパクレットと二人で、庇い合って育ってきたと聞いた。愛されてはいたのね。
ぽつりぽつりと言葉をやり取りする親子を、みんな見ない振りで気にしている。
私はパクレットの家族に挨拶した。
「うちの末っ子はまだまだひよっこで……本当に大丈夫ですか?」お母さんは不安そうだ。
イオの出番ね、もの柔らかにパクレットの事を褒めて宥めている。
「父さん、北の辺境伯領に行きたいんだけど」恋する兄ラッセルは、それどころじゃないらしい。
「あちらにはツテがないが」突然の発言に、お父さんが困惑している。
「実は今、次期辺境伯である姉が来ていまして……」コレウスが畳み掛ける。お姉さんのファレンは後ろで困っているけど。まぁ、お任せしましょう。
ヒビスクスの案内で敷地内を散策していた、私とタリーの家族が帰って来た。
タッカも見違える様に明るく笑う、黒衆の子ども達を連れて戻っている。
騎士団の副長が、父とヒビスクスの隊の騎士達と一緒に現れた。
そこへ巫女姫と御子が世話係と護衛、神官や巫女達に付き添われてやって来る。
みんなが揃い夕食の準備も整った。公的な行事の準備というけど、実際は顔合わせと内輪の食事会だ。
「この度は私達の為にお越し頂き、ありがとうございます」みんなに促され、立ち上がった。
「こうして結婚の儀を迎えられるのは、私達を支えて下さった皆さんのお陰です」
こういうのは、前もって言っておいてほしいわ。守護者達も立ち、揃って頭を下げた。
乾季の空に小雨が降り、小さな虹が架かる。素敵な晩餐会となった。
上は二十二歳、下は三歳だそうだ。離宮の結界を通っても警告がなく、闇の精霊の歓びが伝わってくるから、信頼できるということ。タッカに隠れて招くなんて、精霊の悪戯までして。
「本気だったの?」タッカが目を見開く。
「当たり前じゃない。私達のリーダーはタッカよ。貴方がこの国に付くなら、みんなも一緒」年長のスーティー。濃い赤紫の髪とピンクの目、褐色の肌の美女だ。
髪か目、肌のどれかに濃い色を含む子ども達。ゲームでは『黒衆』と呼ばれて蔑まれていた。この国では見たことがなかったけど。黒衆の殆どが実は、闇の加護を持っている。
光の信仰により影の立場にいるけど、この国では神殿に保護され、隠れ里の様な所でのんびりと暮らしていた。前世のRPGに出てきた『黒エルフ』みたいな感じだ。
「ようこそ、みんなに会えて嬉しいわ。タッカの兄弟なら、私達の家族ね」私は笑って腕を広げ、近寄ってくれた一番小さな子を抱きしめる。震える体を膝に抱えて黒髪に口付けた。名を訊くとアトロス、と教えてくれる。
守護者達も寄ってきて、抱き上げたり抱きしめたり。パースランとパクレットはあっという間に、大きな子達と友達の顔で話し始めた。
「まだ数十人程、こちらに来るつもりでいるそうなんだけど」タッカが困った顔で言うのに、笑顔を向けた。
「王配に連絡して貰いましょうよ。これまでの報酬がわりに、暮らす場所くらい手配してくれるでしょ?」
タリーを見ると、こちらも小さな子を抱いてご機嫌だ。聾唖らしく、タリーの口を触ってゴルディ、と名を練習している。
「本当は離宮にいて欲しいけど。騎士団の警戒には穴があるらしい。タッカの補助を頼めるとありがたいな」タリーの言葉に頷く。
「聖域でいいんじゃない? 精霊に愛されてる子達なんだから、大丈夫でしょう」
タリーと話していると、子ども達が仰天したり、ぽかんと口を開けている。
「どうかした?」守護者達と首を傾げた。来た途端仕事を頼んじゃ、まずかったかしら。
「精霊に愛されてるって?」最初に話していた女の子が、唖然とした顔で呟いた。
「言っちゃダメだった?」知らなかったんだ。側に立つタッカを見上げる。
「ここへ来た子には言っても大丈夫。すぐに分かる事だから」タッカが笑顔で答えて、口付けてくれた。
「精霊達に会いに行こう」タッカに招かれて、子ども達が伴侶の間へ入って行く。闇がふわっと広がった後に、気配が消えた。
次に現れたのは、パクレットとパースランの両親。職人のパースランの両親は来るのを渋って、商人であるパクレットの両親が、強引に引っ張って来てくれたようだ。
「父さん、母さん」パースランが二人の前で目を潤ませて俯く。
「……反対などせんのに、なんで言わん」お父さんがぶっきらぼうに呟く。
「だって、職人の子は職人だって父さんはいつも……」パースランは小声で答えた。
「やりたい事ができたと言えばええ。嫌がるのに強制したりはせん」手は器用でも、話すのは不器用な親子なのね。
「父さん、お前が心配で仕事が手に着かなかったんだ。その後もお前は手紙一つくれないから、へそ曲げちまって。あたしも心配してたよ」お母さんが涙を溢す。
「……ごめん。何て言ったらいいか分からなくて」お母さんは親戚のパクレットが家族に連絡したのに、パースランはしないのが寂しかったのかも。
パースランは年の離れた末子で、親兄弟が忙しくて余り構って貰えず、同じような境遇のパクレットと二人で、庇い合って育ってきたと聞いた。愛されてはいたのね。
ぽつりぽつりと言葉をやり取りする親子を、みんな見ない振りで気にしている。
私はパクレットの家族に挨拶した。
「うちの末っ子はまだまだひよっこで……本当に大丈夫ですか?」お母さんは不安そうだ。
イオの出番ね、もの柔らかにパクレットの事を褒めて宥めている。
「父さん、北の辺境伯領に行きたいんだけど」恋する兄ラッセルは、それどころじゃないらしい。
「あちらにはツテがないが」突然の発言に、お父さんが困惑している。
「実は今、次期辺境伯である姉が来ていまして……」コレウスが畳み掛ける。お姉さんのファレンは後ろで困っているけど。まぁ、お任せしましょう。
ヒビスクスの案内で敷地内を散策していた、私とタリーの家族が帰って来た。
タッカも見違える様に明るく笑う、黒衆の子ども達を連れて戻っている。
騎士団の副長が、父とヒビスクスの隊の騎士達と一緒に現れた。
そこへ巫女姫と御子が世話係と護衛、神官や巫女達に付き添われてやって来る。
みんなが揃い夕食の準備も整った。公的な行事の準備というけど、実際は顔合わせと内輪の食事会だ。
「この度は私達の為にお越し頂き、ありがとうございます」みんなに促され、立ち上がった。
「こうして結婚の儀を迎えられるのは、私達を支えて下さった皆さんのお陰です」
こういうのは、前もって言っておいてほしいわ。守護者達も立ち、揃って頭を下げた。
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