ドラゴン騎士団

カビ

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ウィケルネクロ

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   サンドラはカウンターにスタスタと歩いていき、担当してる人に本を出してもらっていた。
「これこれ!図書室の利用者少なくて助かった~。」
「『邪龍 ウィケルネクロ』へ~。邪龍について?」
「そうなんだよ!邪龍についてどこを探しても無かったんだ!聞いたら、その本はまだ出てないってさ。未だに邪龍について、黒魔術で作れるってことぐらいしか知らされてないんだよ。」
「ふーん。」
サンドラは本を開いて読み始めた。僕も横目で少し見た。

   ジュンブレス王国の軍勢、厭世部隊が扱う邪龍ウィケルネクロ。こいつらと戦い、研究していくうちに色々と分かってきたことがある。これは私の主観で感じたことなので、参考程度に読んでもらいたい。

「お前、何のメモ取ってんだー?」
「ん?あぁ、厭世部隊と邪龍について色々と。最近昼でもあいつら動いているだろ?それで今日は総師に頼んで昼夕夜深夜の邪龍の相手してる。何か情報掴めないかと思って。すまないな、付き合ってもらって。深夜帯は帰っていいから。」
「別にいいけどよ。なんでラーブルと一緒なんだ。あいつヘマばっかすんじゃねぇか。」
イーサンは小声で言った。
「なぜミスをするのか見極めるのも上の勤めだ。」
次の場所に向かいながら言った。
ラーブル。私よりも後に入団した黒龍部隊の1人。ラーブルとは数回しか共に任務に出ていない。他の者からミスをするとよく私に相談してくるため、今回しばらく連れるつもりだ。
   目的地に着くと、辺りを見回して厭世部隊がいないか確認する。
「いないな。」
「……どうなってる?確かにここのはずなのだが。グレイヴは分かるか?」
  気配も感じないな。お前達は?
  全然。
  私も。
  レイラ、お前の魔法能力で分からないか?
  うーん。試してみるわ。……ダメね。なにも帰って来ない。
「もう移動しちまった可能性がある。少し先にピク村があったはずだから、無事か確かめに行かないか?」
「そうだな。」
到着し、様子を見る。
「大丈夫そうだな。」
ピク村の少し離れたところに降り立つと、別の鎧に付け替えた。
「ついでに聞き込み調査に行こうと思う。」
「ん、了解。」
「了解。」
「ドラゴン達、見張りを頼む。」
  あぁ。
村に着くと、声色を変えて村長に聞いた。
「厭世部隊がこの辺りに来ているという報告があった。何か知らないか?」
「あぁ兵士の皆様。うーむ。特に見かけておりませんね。」
「そうか。ありがとう。時間を取らせてしまってすまないな。」
「いえいえお気になさらず。私からも村の者に聞いておきましょうか?」
「いいのか?」
「えぇもちろんですとも。」
「すまない。助かる。」
   村長と別れると、村の広間で少し休憩した。
「あの、買い物に行ってもいいですか?」
「何かあるのか?」
「ピク村には名物の黄金煎餅があるんですよ。」
「へ~、美味いのか?」
「はい。イーサンも気に入るかと。」
……マイペースだな。
「まぁいいだろう。イーサン、一緒に行け。」
「えぇ……はいはい。」

「きゃァーーッ!!」
「なんだ?」
突然甲高い悲鳴が上がった。私は声のする方へ走った。女性が立ち尽くしている。
「どうした!?」
見ると、男性が血を出して倒れていた。脈を確認したが、死亡していた。遅かったか。
肉体は生暖かく、血もまだ新しい。殺されたばかりか。……ん?これは。男性の傍に黒煙のようなモヤがあった。見覚えがあるな。これ、邪龍の体を形成するものと同じものか?同じものだとしたら、この村に厭世部隊が入り込んでる可能性がある。まずいな。
「死ね。」
私はすぐに身を翻して回避した。あの女性を見ると、村人特有の素朴な服装から、少々豪華な黒い服装に変わっていた。
「さすが、兵士と言ったところね。いや、身のこなしが常人じゃ無いわ。あなた、ライダーでしょ?」
さっきから邪心を薄々感じていたが、やはりか。それに、死体を前にしているのにすぐ離れないのも妙だと思った。
「なぜ分かる。」
「兵士の中に女は前代未聞。ライダーもそう。私の名前はルーシー。覚えておきなさい。」
バレてる?今まで仲間以外で女であると見抜かれたことなどなかった。
ルーシーは軽く手を振るうと、黒煙を纏いながら邪龍が作り出された。……やはり白い。
「鎧を変えちゃったからドラゴンを呼べなくて大変でしょ?可哀想だから手加減してあげる。女同士仲良くしましょ?」
なんだこのクソ女。舐め腐りやがって。私は無言で武器を構えて、ルーシーに突っ込んだ。しかし、邪龍はルーシーを守るようにして私を攻撃した。邪龍の攻撃は慣れている。すぐに回避した。
「あたし以外の能無し共は邪龍に守るよう指示しないからすぐ死んじゃうのよねー。他の幹部は荒っぽいし。あたしみたいに優雅にやらないと。」
黒煙を手に纏わせると、一気に長くなり、棒が形成された。その先は木のように枝分かれし、真ん中には緑色の結晶が浮いていた。
「あぁそうそう、あなた達ドラゴン騎士団の情報、全部筒抜けよ。」
「どういうことだ?」
いや待て待て、油断させるためにわざとそういうことを言った可能性がある。
「でも変ね。あたしらと同じ血族の者がライダーみたい。」
スパイがいるということか?でも、ライダーなら、ドラゴンに選ばれているということになる。なら……ドラゴン側に悪い心を持っているということか。悪人を選ぶほどの。というか、こいつに全く近づけない。邪龍が邪魔過ぎる!!クソ。いや、イラつくな。落ち着け。
   私は武器にレガーレで炎を纏わせると、邪龍に切りつけた。
「バカね。邪龍は死なないっつーの。」
「バカはどっちだ。このクソ女。」
「は?」
隙間を通り、ルーシーの首を切断した。
「はぁ。」
にしても、切断する時、一瞬笑った?それに、さっき言っていたことも引っかかる。血族……同じ血族の者が邪龍を扱えるのか?
「ステラ!すげぇ音したけど。」
「あぁ、イーサン。厭世部隊の1人がいてな。仕留めたから大丈……」
「どうした?」
見ると、死体が消えていた。跡形もなく。
「また1つ奴らについて謎が増えたな。死体が消えてる。」
「今まで残ってたのにか?」
「黒魔術で作られた存在かもしれない。困ったな。今後厭世部隊の中に偽物が含まれるとかなり面倒だぞ。ところで、ラーブルは?」
「あー、広場で待たせてる。荷物あるしな。」
ひとまず、先の事を村長に話し、亡くなった男性を火葬した。
「色々調査したが、もうここにはいないみたいだな。」
「ったく、どこ行ったのやら。」
すると、手紙が届いた。緊急を要する場合、魔法で手紙を送るのだ。普段から魔法で送りたいところだが、失敗しやすく別のところに送られてしまうことがあり、あまり使われていない。
「緑龍部隊が厭世部隊に苦戦中。全員邪龍の使い手だってよ。」
   その場所にやってきた。荷物は魔法を使って部屋に送った。もう辺りは薄暗くなっていた。
邪龍は……黄色になっている。夜の任務では青く、深夜は緑色だった。やはり時間帯で変わるのか?
「めんどくせー。5人もいるのに一般部隊はやっぱ弱っちぃなー。」
私は無言でイーサンを睨んだ。
「わーったよ。行くぞ。」
私達は緑龍部隊の救援に向かった。結果はあっという間に終わった。
「なんだよ全然弱ぇじゃねぇか。おめぇら何やってんだ。」
「すみません、助かりました。」
「ほとんど俺一人でやったんだが。」
「あー、知らん。覚えてねぇよんな事。」
「やれやれ。」
…なんかグレイヴの口癖移ってきてる?
   邪龍は黒魔術の塊。作り主にのみ従い、背に乗せられる。目、口、鼻が不気味に発光している。噛み付いたり、ブレスを吐く。噛む力というよりかは黒魔術の圧縮によるため、強さは噛む力以上である。そのため、噛み付かれると簡単に体が引きちぎれてしまう。これのせいで数多くのライダーが殺された...父を含めて。中にはドラゴンの頭部が潰された話もある。慣れてなければまず勝てない。
緑龍部隊と別れると、メモを取った。
邪龍は時間帯によって発光する色が変わる。それに比例して強さも変わる。邪龍を作り出せる者は同じ血族でないと出せない可能性あり。
「他に厭世部隊の報告は……変だな。特に無い。いつもならこの時間帯が活発なのだが。」
厭世部隊は腐っても人間だ。深夜が1番黒魔術が強くなるとはいえ、そこまでは起きれない。
「なぁ、一旦帰ろうぜ。腹減った。」
「そうだな。そろそろ夕食時だし。ラーブル、お前もそれでいいか?」
「はい。」
私は軽く頷くと、城下町に向かった。
「夜の街も悪くねぇな。」
「あぁ。」
街は中心部が商店街。城に近づくほど富裕層が暮らし、離れると中間層が。貧困層は城壁のすぐ傍だ。厭世部隊との戦闘のため基本ライダーは夕方から夜出かける。そのためライダー達は、空から見た夜の街を『民の星』と呼んでいる。
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