ドラゴン騎士団

カビ

文字の大きさ
28 / 33

疑惑

しおりを挟む
「おーい!皆!」
「フリッグに……サンドラ!?無事だったのか!」
センクルが叫ぶ。
「フリッグのアメリアが魔法能力が発現して助けてくれたんだ!」
「魔法能力で助かるってことは、治癒魔法なのか?」
「うん。そうみたい。」
「すげぇ!今まで治癒魔法の発現者なんていなかったのに!レガーレできるようになったら医療隊の負担はかなり減るぞ!」
「それよりも、遺体を運ぼう。」
見ると、ジブルの遺体は布で巻かれていた。デザイルの遺体はドラゴン達の力を借りて共に運ぶ。
「よし、準備出来た!運ぼう!」
そして僕達は城に帰還した。
   ジブルとデザイルをサンドラのロースが焼いた。部隊長の務めだ。ドラゴンの鱗は火は効かない。そのため、鱗を数枚剥がし、燃えるようにする。騎士団の遺体をドラゴンの火で焼くのは、来世でもライダーとなり、また共に行動が出来るように。と願いが込められている。そして燃やした遺体は共に墓地に埋める。使っていた鎧も一緒に埋め、騎龍武器は埋めた場所に突き刺す。この葬儀を終えて皆で弔う。一般部隊全員が参加していた。そして王子も来ていた。王子、僕、サンドラと順番に話をし、僕達はジーラットとデザイルの墓に向かって膝を付いて弔った。ドラゴン達も体を低くする。
葬儀が終わると、皆コモンルームに戻った。
「はぁ、悲しくなるよ。」
「うん。僕は同じ部隊じゃないのに虚しい。」
「でも、いつまで経っても悲しんでいられない。ジブルはそんなの望んでないだろうし、明るくいこう!」
「はは、君らしいや。」
「もうこれ以上死者を出すもんか。オイラが頑張るしかない!」
   そして夜になり、僕はいつものバルコニーへ向かった。ステラに会えると思ったからだ。あと単純に僕もそこが気に入ったのもある。
「あ、ステラ。」
「あらフリッグ。……仲間が殺されて辛かったでしょうね。」
「うん。同じ部隊じゃないから深く感じれなかったけど、葬儀中は自分のことみたいに辛かった。」
「しばらくは心を休めた方がいいわ。サンドラや他の茶龍部隊もね。」
「ねぇ、村人達に支給していたお金ってあれは国から?」
「ん?自腹よ?」
「えっ?」
「私自分のためにお金使うことってほとんど無いの。食事は銀貨数枚で足りるし、生活必需品は国からの支給で部屋に全部揃ってるし。」
「そ、そうなんだ。」
「だからお金は貧困層や今日みたいな復興費用として民に支給してるわ。」
凄いなぁステラは。僕ならそこまで考えられない。
すると、僕の騎龍晶から、あの小さな竜が出てきた。
「あ、君。」
「その子、邪龍……よね。なんだかあなたに懐いてるみたいだけど。」
「うん。邪龍にしてはワイバーンっぽいけどね。」
小さな竜はキョロキョロと見回していた。
「ふふ、可愛い。名前は無いの?」
「そうだな……君はメランだ。」
「良いじゃない。不思議ね、邪龍なのに危険に感じない。あなたが扱うからかしら。でも、これはあなたは奴らの血族ってこと。これって相当やばいのよ?」
「なんか、実感が湧かない。バレたらやばいんだよね。」
「もちろんよ。迫害や追放を受けるだけでは済まされないかもしれない。あなたがどんなに良い人でも、皆には伝わらない。黒魔術を扱えるというだけでも危険だから。」
ステラは左目を擦りながら言った。
「どうしたの?」
「いや、さっきから痛痒くて。目に埃でも入ったのかしら。掃除は行き届いているはずなんだけどな。」
「念の為診てもらったら?」
「このくらい大したことないから大丈夫よ。」
「なら、いいんだけど。あ、ねぇずっと気になってたことがあるんだけど、君の騎龍晶ってどこにあるの?」
「それなら。」
ステラは後ろに振り向くと、後頂辺りの髪をまさぐって広げた。
「見える?ここにあるんだけど。」
よく見ると、鈍く輝く赤い騎龍晶があった。
「これ、ちょっと見えると瘡蓋と間違えられる時あるのよね。」
「なんでそんなところに?」
「グレイヴに後ろからどつかれたから。頭目掛けて。」
「え、気になる。」
ステラはグレイヴとの出会いを話してくれた。リビングに放置されていた黒い卵が孵化し、自室にいたステラに後ろから飛びかかったという。後頂に騎龍晶が出来たのもそれが理由。幼い頃のグレイヴはかなりやんちゃらしく、物をよく壊されたんだとか。さらにその時から既に炎ブレスを出すことができ、家が火事になりかけたこともあったという。
「生まれたばかりなのに火を吹けるなんて。」
「それだけじゃないのよ。大人になったと同時に魔法ブレスに魔法能力も発現したの。」
「え!はや!黒龍って凄いなー。」
「いいえ、グレイヴが凄いのよ。精鋭色って基本見習い生の内か、入隊してすぐに発現するの。でもグレイヴは強くなるのが何もかも早かった。」
「レガーレもすぐできるようになったり?」
「いいえ。レガーレを使えるようになったのは、多分私が一番遅かったと思うわ。」
「そうなの?あんなに息ぴったりなのに。」
「今はね。昔は喧嘩ばかりしてた。一週間以上顔も合わせなかった時だってあった。」
ステラは昔を思い出すように目を瞑って言った。
「ドラゴンの姿や性格ってね、その主人に合わせて決まるの。でもグレイヴと私はびっくりするくらい不釣り合いだった。」
「それでどうやってレガーレを?」
「グレイヴと息が合わないのは、お互い分かり合えてないからだと思って、それで……喧嘩真っ只中であまり気乗りしなかったけど、グレイヴに頼んだの。一緒に手合わせして欲しいって。」
「手合わせって、戦ったの?」
「そうよ。グレイヴはいつも通り呆れながら了承してくれたわ。何度も何度もグレイヴの攻撃が当たってノックダウンして……グレイヴの攻撃って凄く早いの。特に翼と尻尾の攻撃が。グレイヴは他のドラゴン達と違って肉弾戦に魔法ブレス……ブレスとは言えないかな。それを体から出して纏わせて素早く攻撃してくるの。こんな戦い方をするドラゴンは初めてよ。」
「確かに今まで見てきたドラゴンで、グレイヴだけ肉弾戦に特化してる気がする。翼で体を守ったりするのもそうだけど。」
「それでずっとやってるうちにグレイヴと戦うのが楽しくなって、気づいたらレガーレを使えるようになってたわ。……エルテノ・レガーレもね。」
エルテノ・レガーレ。見習い生の時に授業で習ったな。相棒と完全に一心同体になると発現するという特別な力。
「エルテノ・レガーレを使えるの、あなたに期待してる。」
「いや、僕は……あ、ねぇなんで今日駆けつけてくれたの?」
「移動中に見覚えある光が見えたから嫌な予感がしたのよね。そしたら案の定ルーシーだった。」
「移動中って君も任務だったんじゃ?」
「いや、私達は帰還するところだったから大丈夫よ。」
「そうなんだ。ありがとうステラ。助かったよ。」
「ふふ。眠くなっちゃったからそろそろ寝るわ。おやすみフリッグ。」
「うん。おやすみ。」

   次の日となり、僕は朝食を済ませて訓練の時間になるまで待機していた。
「紫龍部隊長!」
兵士が僕に手紙を渡してきた。
「ん?どうしたの?」
「総帥からです。」
「?ありがとう。」
恐る恐る手紙を開けて読む。
『総帥部屋で待つ。』
それだけだった。なんだろう。なんだか凄く、胸騒ぎがする。
僕は立ち上がり、総帥部屋に向かった。

   私はグレイヴの体を洗っていた。
「わ、ちょっと水飛ばさないでよ。」
  もう十分だろ。
「黒龍は汚れが目立たないから入念に洗わないと。鱗の隙間とかどんどん溜まっていくわよ?……いたっ!」
  ったく。尻尾は斬れるから気をつけろって言っただろ。……左目赤いぞ。擦ってるのか?
「え?あぁ。昨日から痛痒くて。多分埃がアレルギーかなんかになったんだと思う。」
  黒魔術か?直撃しただろ。目に入ったんじゃないのか。
「いやそんな、まさか。」
  浸透すると失明して廃人になるぞ。それか、死ぬか。
「ちょっとグレイヴ!怖いこと言わないでよ。もうおしまい!」
私は道具を片付けて、部屋を出ていった。
正直……痛痒いどころではなかった。昨日の夜、急に激痛になってあまり眠れなかったし。ナイフで自分の目を潰しそうになったくらいには。イーサンに止められたけど。凄く心配かけてしまったな。
すると、近くを歩いていた赤龍部隊から話し声が聞こえてきた。
「怖い怖い、仲間だと思ってたヤツがスパイとか。」
何の話をしているんだ?
「だよな。黒魔術使えてしかも邪龍も出せるとか。」
私は思わず立ち止まった。
「お前たち、その話……どういうことだ?」
「げ、黒龍部隊長……じゃなくて。司令官、聞いてないのですか?一般部隊の中にスパイがいるって話。」
「知らないが。誰がそんなことを?」
「我々もよく分からないんですが、そういう噂が黒龍部隊から流れてきたと。」
「俺の部隊から?」
「えぇ。」
嫌な予感がする。私は走って部屋まで向かった。
「イーサン!!」
「ん?おおステラか。昨日の夜から大丈夫か?」
「今はその話をしに来たんじゃない。言ったのか?」
「は?何を。」
「フリッグが黒魔術を使ったことだ!」
「おいおい落ち着けって。俺たちしかいないのになんでそんな普段な感じに……友人になら言ったが。それがどうしたんだ。」
「広まってるんだよこのアホ!!」
冷や汗が止まらない。まずい。久しぶりに焦り倒してる気がする。
「別にそんな焦るこたねぇだろ。平気だって噂なんて確定じゃねぇんだから。」
「お前は……フリッグが嫌いなのか?」
「……あぁ嫌いさ。」
「嫌いなら嫌いで構わない。だが、そんなくだらない理由で命を無駄にしていいと思ってるのか?俺が……私がイーサンを嫌いだったら殺してもいいの?」
「……。」
私はイーサンに背を向けて部屋を出ようと扉に手をかけた。
「お前にとってフリッグはなんなんだよ。」
「……大切な人。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...