ドラゴン騎士団

カビ

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審判

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   私は勢いよく総帥部屋に入った。
見ると、フリッグは総帥の部下に連れていかれるところだった。
「ステ……司令官!?」
「何用か。」
「あの、彼は何かしたんですか?」
「こいつが黒魔術を使うと報せが入った。」
「しかし総帥!」
「こいつを庇うのか?少しでも国に脅威をもたらす可能性がある以上、異物は排除せねばならん。それはお前も分かっていることだろう?」
「……。」
「それに、お前からすれば一般部隊1人の命などくだらんものだろう。」
「彼が黒魔術を使って何か悪いことをしたという確証はあるんですか?私は目の前で見たから分かります。邪龍に押されていた仲間を彼は救ってくれました。確かに彼は黒魔術を使います。ですが、黒魔術を使うからと言って悪用するとは限りません。」
すると、珍しく総帥が笑った。
「だが、お前はそういう優しいヤツが、敵の中にいたとしても容赦なく殺すんだろう?上からの指示で抵抗も出来ないようなヤツを。」
「それは……。」
返す言葉も無かった。何を言い返しても全て無駄な気がする。フリッグが優しいだとかは所詮私の感情論でしかない。彼を知らない人々からすれば脅威をもたらしかねない。これは冤罪とは訳が違う。それに、あの時を見返してもフリッグの黒魔術は明らかに暴発していた。
見ると、フリッグは不安そうに私を見ていた。
「あの、彼を処刑するんですか。」
「当然だろう。」
「なら、私も処刑してください。」
「……は?」
「ステラ?」
「今までずっと黙っていましたが、彼をここまで強く育てたのはこの私です。なら、私にも責任があります。」
かなり賭けに出たが、私がいなくなることは国にとってかなり痛手なはずだ。おそらくまともに政治は回らなくなる。現に今総帥は表情に出ては無いが焦っているのが分かる。
最悪本当に殺されるかもしれない。でも、絶対にそんなことはできないと言い切れる自信がある。
「……はぁ。なら、明日審判でこいつが白であると証明してみせろ。」
「了解しました。」
「それまでこいつは牢暮しだ。」
総帥が合図すると、部下がフリッグを連れて行ってしまった。待ってて。絶対に助けるから。

   まずはフリッグの素性を知ることから始めた。
私は彼と初めて会った時のことを思い出した。彼の御両親は彼が物心着く頃に厭世部隊に殺害されている。そして彼は石の加工屋。
私は城下町中を走り回った。時には私と彼の故郷でもあるケナル村にまで赴いた。
   夜になり、部屋では全然落ち着きがなかった。
「お前大丈夫かよ。」
「誰のせいでしょうね!」
むしゃくしゃする。このままだとイーサンを殺してしまいそうだ。しかもまた左目が痛くなってきた。思わず私は涙が溢れてきた。これは痛みのせいではない。
「どうしよう、どうしよう。彼のことが、分からなさすぎる。」
「お前大切っていう割になんも知らないんだな。」
イラッと来るはずなのに、事実だからか何も言い返せなかった。私は彼のことを何も分かってない。
「……黒魔術を使うという決定的証拠と優しくて悪いことはまだしていないという曖昧な感情論。どっちが負けるかなんて一目瞭然だろ。」
「……。」
「だが、その決定的証拠を曖昧にはできるぞ?」
「ど、どうやって?」
「元々は俺からの噂が事の発端だ。つまり、国民や総帥は直に見てない。総帥のことだ。黒魔術を使うという情報が入っても、これが単なる他の部隊からの噂って知ったら信じなくなるぜ?あいつは噂なんか信じねぇからな。」
「で、でも。」
「俺は1度あいつのやり方を否定した。あいつにとって俺は反抗するウザイやつ。そんな奴からの噂なんて尚更信じねぇよ。」
「協力……してくれるの?」
「……まぁ、あのガキは嫌いだが、お前には嫌われたくねぇし。」
「ありがとう。」
「礼なんか……元はと言えば俺のせいだし。」
イーサンが協力してくれるおかげで荒んでいた心は大分落ち着きを取り戻した。ひとまず、明日のためにも早めに寝てしまおう。左目が激痛で眠れないなんてことにならないように。

   朝になり、目を覚ますとイーサンがいなかった。彼が早起きなんて珍しい。それに審判は基本昼過ぎだ。そんなに早くに起きて何をしに行ったんだろうか。
今日は頭の回転を良くするためにしっかりと朝食をとった。審判が始まるまで不安で仕方無かった。
「ステラ。」
「グランクおじさん!?」
「昨日は訓練にも出ずに、任務にも出向かなかったと聞いている。何かあったのか?今日も、荒れているようだが。」
「い、いや……何も。」
審判は基本関係者しか知らない。理由は無実であった場合、釈放後に世間から疑いがかからないようにするためだ。
グランクおじさんは私の肩に手をかけて言った。
「何か思い悩むことがあるなら話すといい。気が楽になるぞ。」
「……フリッグについてなんだけど。」
「あの小僧か。」
「彼が、疑いをかけられてて。今日審判があるの。」
「どんな疑いをかけられているんだ?」
「えっと、その、黒魔術。彼が黒魔術を使うっていう疑いが。」
「それは難しいかもな……いや、微力だが助けられるかもしれんな。総帥に伝わればの話だが。どんなプランで行くんだ?」
私はイーサンとのやり取りを話した。
「なるほどな。なら、その噂作戦が破綻した時に助けてくれるよう頼んでおこう。」
「え?誰に?」
「それは審判の時までお楽しみだな。」
「わ、分かった。」
「1つ気になるんだが、何故そこまでしてあの小僧を?」
「……るから。」
「うん?」
「何でもない!」
そう言うと私は立ち上がってそそくさとグランクおじさんから離れた。
   ひとまず気を紛らわすために特訓することにした。
  ねぇ、グレイヴ。
  どうした。
  ごめん、やっぱり何でもない。
  ……フリッグのことだろう。
  話してないのに。なんで?
  ドラゴンの情報網を舐めるな。それに、お前の精神的になんとなく察せる。
  そう。
  別に心配する必要は無いだろ。
  どうして?
  あいつにはアメリアがいる。ドラゴンが決まった人を選ぶのはそいつの特徴を見据えているからだ。アメリアがフリッグを選んだという事実が決定的証拠になる。
  ……グレイヴ。

   数時間が経ち、遂に審判が始まった。
参加者は、総帥にフリッグ、国王陛下、王子にお付の騎士達、その他貴族階級の方々にイーサン……シャンク?なんでシャンクが。グランクおじさんが言ってた助っ人?そして私。
   私はフリッグの今までの功績を話した。短期間で司令官にまで上り詰めた優秀さに加え、攻め入られた村や村人の方々への対応、負傷者等の対応等。これだけではまだ足りない。ひとまず総帥と陛下の反応を見る。
「例えその功績があったとしても、嘘をついている可能性があるぞ。突然裏切る可能性も大いにある。」
「はい。もちろん分かっています。ですが彼の功績を踏まえた上でまず知って欲しいことがあります。イーサン。」
「ん、了解。ダレス総帥、1つ確認しておきたいことがあるのですが、彼の黒魔術を扱うという情報は事実ですか?」
「そういう報せが入っているからな。」
「変ですね。彼が黒魔術を扱うというのは、私が友人にそれっぽいものを見かけた。と話しただけですので、それが本物かどうかは知らないんですよ。」
「なんと。ダレスよ。お主がただの噂話を信じる…」
「なら、今ここでやってみせればいい。本当にそれっぽいものが黒魔術かどうか。」
まずい、実践させるなんて想定していなかった。
「あの、もし本物であると仮定した場合、ここで行うのは危険では?黒魔術の中には煙のように充満するものもあります。ここにいる全員に被害が出ると思うのですが。」
王子が言った。すると、総帥は一瞬目を緑色に光らせると、フリッグの周りにシールドのようなものが展開された。
「これでいいか?」
フリッグは諦めたのか言われた通りに力を出そうと手を伸ばした。黒魔術が出ないことを願うしかない。騎龍晶が薄紫色に光り、魔法ブレスのレガーレを放った。黒魔術は出なかったようで安堵した。しかし、安堵したのもつかの間、騎龍晶から小さな竜のメランが飛び出してしまった。フリッグが慌てているのが分かる。私も焦った。
「ふん。これでもまだ黒魔術を扱わないと言い張る気か?奴らの血族であるならば潰しておくべきであろう。」
「1ついいか。」
シャンクが手を挙げた。
「俺はこいつの親を知ってる。」
どういうことだ?なんでシャンクがフリッグの御両親を?
「こいつの親は厭世部隊でかつて俺の弟子に成りすまし、裏切った。」
あの時の。城から緑色の火……黒魔術が吹き上がり、商店街までに回った時の。黒魔術を魔法でなんとか除去することに成功したが、後に黒魔術の汚染によって死者が大勢出た。
「あの一件に関わった者のガキならば余計生かす必要も無い。」
「あぁ。だが俺は成長した子供、フリッグを見て分かった。こいつはあいつらとは違う。そもそも、こいつの親は後に罪を償った。そういう思考に至る時点でまだまともだ。まぁ、そのせいであいつらに殺されたみたいだが。」
「ほう?だが白にするにはまだ足りん。最初に述べた裏切る可能性を否定できていない。善悪の判断を感情論だけで語るな。」
イラッとくるが、ごもっともだった。黒魔術は幾度となく我々を苦しめ、数多くの命を弄び、奪った。裏切る裏切らない以前に暴発の危険性がある。そうなる前に今のうちに始末するというのは理にかなってるのだ。
「あの、いいですか?」
今度は王子が発言する。すると、何か紙を取り出した。
「シャドウからなのですが。彼のドラゴン、アメリアについて彼からあるようです。」
「アメリアは20世紀も前のライダーの相棒として王国で活躍していたそうです。さすがに黒龍白龍とまでは行きませんが、精鋭部隊である赤龍青龍部隊でさえ1目置かれるほどに優秀なライダーだったようです。そして、国に大きく貢献するほどの。一部地域では英雄として語られた時もあったと。」
周りがしんと静まり返った。すると、総帥が口を開く。
「……あいつか。レファータ。確かに優秀な奴だった。」
何千年と生きている総帥だからこそ言えるセリフだ。総帥は実際にその優秀なライダーが生きていた時代を知っている。
『ドラゴンが決まった人を選ぶのはそいつの特徴を見据えているからだ。』
これが正しいのなら、アメリアは最初からフリッグが厭世部隊の血族であり、黒魔術を扱えることを知っているはずだ。そんな優秀なライダーの相棒だったドラゴンがフリッグを選んだ。グレイヴの言った通りだった。ドラゴンの存在が決定的証拠だった。そのせいか総帥は諦めたようにため息をついた。
「今回だけだ。」
「本当です…」
「ただし、今後疑わしい事をすれば処刑だ。」
「……了解しました。」
そして陛下が少し話をし、フリッグは一旦無罪ということになった。そして審判が終わり、皆解散した。
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