ただΩというだけで。

さほり

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何かのはじまり

3.

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  物理的には、発情したαとΩでも、つがいにならずに情事を行うことは可能だ。番は行為の最中にαがΩのうなじを噛むことで成立する。ヒート中のαは噛みたくて、Ωは噛まれたくてたまらないので、本人たちが自力で取り除けない物理的な障害を挟めば番の成立を防ぐことができる。もっとも一般的なものは、Ωのうなじを保護する首輪だ。

(でも、Ω風俗じゃあるまいし…… )

  稀に、自衛のために普段から首輪をつけている若いΩを見かけることがある。でも津田はそうではないし、そもそも愛人関係にあるαと番になりたがらないΩなどいるだろうか。

  津田は佐伯の愛人ではないのか。
  子どもができたのは発情中の事故で、佐伯が責任を取って子どもを認知し、津田に職を与えたのだとしたら、なおさら番が成立していないことの説明がつかない。

(分からん…… )

  分からないことだらけだ。
  津田の経歴は謎に満ちている。
  考えても答えの出ない問題に、乾は強いフラストレーションを感じた。生まれついての理系だ。定まった解のない問題に取り組むことに耐性がない。

  乾は知らなかった。
  人には歴史がある。誰の人生だって、多少はミステリアスでドラマチックだ。
  乾は今までの人生で、他人に興味を持ったことがなかったから知らなかったのだ。
  そして、その人のことをもっと知りたいと思うことが、「何の」始まりなのかも、当然、知らなかった。
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感想 18

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