ただΩというだけで。

さほり

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Ωの人生

5.

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  凛花は自分の身体に何が起こっているのかに気づいてからも、それをひた隠しにした。大きめの服を着て、母親である津田との接触を避け、ダイエットと称してつわりによる食欲不振をごまかした。

  膨らんでいく腹に、その恐怖に耐えられず、凛花が妊娠を津田に伝えたときには、法的に堕胎可能な時期をすでに過ぎていた。
  幼い身体に負担を強いる無理な出産に踏み切るしか、道がなかった。

  事情を知った津田は、凛花の中学校に事件の調査と相手の男子生徒の処罰を求めた。ほどなくその男子生徒は特定されたが、ヒート中の事故ということで責任を問えなかったばかりか、津田と凛花には彼の名前も教えてもらえなかった。

  律という名は、凛花がつけた。

  αでも、自分を律して人を傷つけずに生きるようにと。
  胎にいる子がαだと知らされた凛花が、たった一人で考え抜いてつけた名だった。

  凛花は妊娠8ヶ月で男児を早産し、出血性ショックで意識を失ったまま戻らなかった。
  13歳だった。
  自分が名付けた息子の顔を見ることなく、凛花は旅立った。

  津田は、凛花が残した律を一人で育てることになった。

  津田は凛花の葬式の後に、自らを佐伯の籍から抜いて津田に戻ったのだという。

「凛花まで死なせて…… さすがに佐伯の両親に申し訳なくてね」
「その、佐伯さんのお父さんが…… 」
「佐伯常務。俺のしゅうと…… だった、かな」

  愛人などではなかった。乾の想像よりもはるかに複雑な事情を、津田は抱えていたのだ。

「いい人達なんだよ。俺が使いものになんなかったから、凛花の葬式も佐伯の両親が出してくれた。律を抱えて、まともに働くところも金もなかった俺を、会社ここに入れてくれて……  」
「そう、ですか……  」

  乾は胸が痛かった。
  ただ気になるという理由で、踏み込んでいい話だったのだろうか。
    
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