ただΩというだけで。

さほり

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Ωが生まれない世界

1.

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  週が明けた月曜日、いつものように9時25分に出勤してきた津田の姿に、乾はホッと胸をなでおろした。
  津田はバッグを自分のデスクに置くと、席につかずにそのまま乾のところにやって来た。

「おはようございます。先週は休みをいただき、ありがとうございました」

  頭を下げた津田から、ふんわりと甘い匂いがする。まだ完全には発情期が終わっていないしるしだ。

「仕事がたまっていると思いますが、無理せず、休憩をとりながらやってください」

  乾がそう言うと、オフィスの空気がざわりと揺れた。視線を感じて顔を向けると、部下が一人残らず驚いた顔で乾を見ている。

(何かおかしいことを言ったか…… ?)

  隣に立つ津田も、普段は半開きの目を見開いていた。
  乾は先月までの自分が、発情休暇あけの津田にどんな言葉をかけて来たのかを考えたが、どうにも思い出せない。
  もう一度部下たちの方に顔を向けると、今度は全員が示し合わせたかのように一斉に目を逸らした。

「あの…… 」

  津田が遠慮がちに口を開いた。

「もし、よろしければ……  お話ししたいことがあるので、少しお時間いただけますか?」

「はい、大丈夫ですよ。何ですか?」

  乾が促すと、津田は居心地悪そうに視線を泳がせた。人がいるところでは話しにくい内容なのだろうか。顔を合わせるのは医務室の件以来だ。
  察した乾は肘掛け椅子のキャスターを下げて立ち上がり、副主任に声をかけた。

「応接か小会議室か、どこか空いているところにいます」

  空いていた第二応接室に入ると、津田はいきなり乾にしなだれかかって…… 来たりはしなかった。
  乾が促すと、「失礼します」と言ってソファに浅く腰かける。二人きりになったからと言って、口調がくだけるわけでもないらしい。
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