ただΩというだけで。

さほり

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Ωが生まれない世界

2.

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  言い淀む様子に、もしかして辞意を表明されるのかと不安になったが、津田の要件は河野かわのとの会食だった。医務室での失態を詫びた後、津田は伏し目がちに話し始めた。

「河野…… 教授のお誘いの件ですが、先週は失礼な態度をとってすみませんでした。週末に考えてみたんですが…… 子どももいるので、業後に飲みに行ったりするのは、やっぱり俺には難しいんです。
  でもたとえば、ランチとか、食事を伴わない帯同訪問なら、ご一緒できるかと思います。でも、わがままな話、それも仕事の一部と考えていただけるなら、その時間も勤務時間としていただきたいですし、その…… 食事代も、自腹で捻出するのは、正直厳しいです」

  目を伏せたまま、津田は薄い唇をそっと舐めた。

「こういう申し出をすること自体、自意識過剰だと思われるかもしれませんが、先方が昼間の時間を割いてでも俺と話したいと思っているのかとか、接待交際費の条件とか…… そういうのが折り合えば、ですが…… どうしてもおつきあいできないわけではないんです。
こちらの都合で、わがままばかりですが…… 俺が足を運ぶことで、少しでも会社の利益になって……  あと、主任の、顔が立つなら…… 」

  話している間、津田は一度も乾の顔を見なかった。言いにくいことを、慎重に、言葉を選んで口に出している。
  意図したことが伝わったかどうか、不安そうにちらりと上げた視線に、乾は医務室での彼を思い出してドキリとした。

「嫌では、ないんですか?」

  小さなテーブルを挟んだ向かいのソファから乾が訊くと、津田は心外そうに少し眉をひそめた。

「もともと、先週お断りしたのもそういう…… 時間の制限と、金銭的な問題です。心情的に拒否したわけではありません」
「ああ、いや、そうではなくて…… 」
「…… ?」



    
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