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Ωが生まれない世界
12.
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乾がエレベーターに乗り込むのを見届けて、一人の女性が津田のデスクの傍らに立った。
「津田さん、ちょっといい?」
津田が顔を上げると、声をかけたのは福本という同じ部署の社員だった。席が離れていることもあり、ほとんど話したことがない。
彼女は津田の取りかかっている仕事が急ぎでないことを確認すると、身体の後ろに回していた紙袋を津田の前に広げて見せた。
「もしよかったら、もらってほしいんだけど…… 」
袋の中身は、子ども服だった。一番上になっている服はセーラーカラーのシャツで、きれいに畳んだ襟元に、有名ブランドのタグと110というサイズ表示があった。
「うちの子のお古だから、新品じゃないんだけど…… まだ充分着られるし、誰かにもらってもらえたらと思って取っておいたものなの。津田さんのお子さん、男の子だって聞いたから。古着とか嫌じゃなかったら…… ちょっと見てみて?」
福本は袋の下の方まで見えるように、手を入れて中身の服をずらした。色合いから男児用と思われる衣服が、5、6枚入っている。しかもざっと見たところ、使用感があまりない。古着の中でも状態の良いものを選んできてくれたことが分かった。
「い…… いいんですか?」
津田が小さくそう言うと、不安そうだった福本の顔がぱっと明るくなった。
「もらってくれるとありがたい!捨てるのももったいないし、周りにうちの子より小さい子、あんまりいなくて」
津田は彼女が押し出した紙袋を受け取った。中身を出して見たい衝動にかられたが、さすがに堪えた。紺色の襟に白いラインの入ったシャツを着た律の姿を想像して、思わず顔がほころぶ。
「ありがとうございます。すごく、助かります」
「津田さん、ちょっといい?」
津田が顔を上げると、声をかけたのは福本という同じ部署の社員だった。席が離れていることもあり、ほとんど話したことがない。
彼女は津田の取りかかっている仕事が急ぎでないことを確認すると、身体の後ろに回していた紙袋を津田の前に広げて見せた。
「もしよかったら、もらってほしいんだけど…… 」
袋の中身は、子ども服だった。一番上になっている服はセーラーカラーのシャツで、きれいに畳んだ襟元に、有名ブランドのタグと110というサイズ表示があった。
「うちの子のお古だから、新品じゃないんだけど…… まだ充分着られるし、誰かにもらってもらえたらと思って取っておいたものなの。津田さんのお子さん、男の子だって聞いたから。古着とか嫌じゃなかったら…… ちょっと見てみて?」
福本は袋の下の方まで見えるように、手を入れて中身の服をずらした。色合いから男児用と思われる衣服が、5、6枚入っている。しかもざっと見たところ、使用感があまりない。古着の中でも状態の良いものを選んできてくれたことが分かった。
「い…… いいんですか?」
津田が小さくそう言うと、不安そうだった福本の顔がぱっと明るくなった。
「もらってくれるとありがたい!捨てるのももったいないし、周りにうちの子より小さい子、あんまりいなくて」
津田は彼女が押し出した紙袋を受け取った。中身を出して見たい衝動にかられたが、さすがに堪えた。紺色の襟に白いラインの入ったシャツを着た律の姿を想像して、思わず顔がほころぶ。
「ありがとうございます。すごく、助かります」
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