ただΩというだけで。

さほり

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縮まらない距離

5.

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  それはかつて、夫の佐伯が津田を呼んでいた呼び名だ。凛花が生まれてからも呼び方を変えなかったため、言葉をしゃべるようになった凛花も母親のことを「ユキ」と呼んだ。佐伯のことは意識して「パパ」と呼ばせたが、「ママ」と呼ばれるのに抵抗のあった津田は、結局自分の娘に「ユキ」と呼ばれ続けた。

  家族の形が多様化している昨今、特に珍しいケースでもないのか、
「わかりました。それではユキさんと呼ばせていただきますね」
  担当した若い保育士は手元のメモに何かを書き込みながら、笑顔でそう言った。

  その日以来、津田は律の前で自分のことを「ユキ」と言うようにしている。普段どおり「俺」と言って、律が津田のことを「オレ」という存在だと認識しては困る。

  律が愛らしい唇で、「ユキ」と呼んでくれる日もそう遠くはないだろう。
  その日が待ち遠しいと思う一方、それと同じ速さで別れの日が近づいていることに、津田は一人静かに寂しさを感じた。
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感想 18

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