ただΩというだけで。

さほり

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晴天の霹靂

3.

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  駿介は佐伯夫妻の一人息子だ。
「お前のせいで死んだんだよな」
  そう念を押す河野の声が脳裏に蘇る。無駄死にだった、と言われた。
  その通りだ。
  自分と一緒にならなければ、あんなに早く死ぬことはなかった。佐伯の両親も、あんなに早く息子を亡くすことはなかったはずだ。
  津田は胸が詰まって、うつむけた顔を上げられなかった。
 
「幸生君」

  呼ばれて目を上げると、ベッド脇のパイプ椅子に腰かけたゆり子が、微笑みながら津田を見つめていた。

「ずっと、謝りたいと思っていたことがあるの」

  ゆり子の細い喉が、こくりと動いた。

「あの日、凛花ちゃんのお葬式の日、私は…… ひどいことを言ったでしょう?」

  1年半も前のことだが、津田には、ゆり子が何のことを言っているのか、すぐに分かった。
  花冷えのあの日、喪服に身を包み、憔悴した彼女は、凛花の棺桶に取り縋って泣いた。そして、なんとか体裁だけは繕い、黒いスーツで茫然と座る津田の前で叫んだ。

「なんで…… なんで駿介も凛花ちゃんも、先に死ななきゃならないのよぉ…… っ!」

  津田に向かって言ったわけではない。それでも、その、あまりにまっとうな心の叫びは、津田の胸に深く刺さった。

「こんなことを、いまさら言っても言い訳にしかならないけれど、あれは、幸生君に対して言ったわけじゃなかったの。ただ…… 私自身が、子どもの頃から身体が弱くて、長くは生きられないだろうなんて言われながら、この歳まで生きさせてもらったのに、子どもたちばかりがどうしてって…… そういう、なんで、だったのよ」

  津田は驚いた。
  Ωの自分だけが、ゆり子と血のつながりのない自分だけが、生き残ったことへの無念なのだろうと思っていたのだ。

「凛花ちゃんのことで、一番傷ついていたのは幸生君だったのに、あんなことを言ってしまって…… 後で主人に言われてハッとしたのよ。でも、なかなか、謝る機会もなくて…… 本当に、ごめんなさいね」
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