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松の内
8.
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にわかには信じられないような話で、それが脳に浸み込むと、津田は全身に鳥肌が立った。
正社員になれる。
しかも、研究員として。
大学を中退し、記録に残るような研究成果を残せていないΩの自分に、そんな厚遇が提示されるなんて、夢にも思っていなかった。
「ありがとうございます。…… よろしくお願いします」
胸が詰まって、それしか言えなかった。
「津田君…… いや、幸生君」
頭を下げて辞そうとした津田を、佐伯が呼び止めた。部長と課長はすでに退室し、佐伯の役員室に残ったのは乾と津田、そして部屋の主だけだ。下の名前で呼んだということは、個人的な話だろう。
乾は退室するべきか迷うように視線を泳がせたが、佐伯にドアを閉めるように促され、部屋に残って津田に並んだ。
佐伯はソファから立ち上がり、義息に優しく語りかけた。
「私が昔、いつだったか、息子と一緒にこの会社に勤めたいと言ったことを覚えているかい?」
まだ凛花が赤ん坊の頃の話だ。研究職を諦めた駿介は医療機器メーカーに就職を決めたが、その報告を聞いた佐伯は就職の祝辞を述べながらも、
「息子と同じ会社で働くのが夢だったのになぁ」
と、残念そうに漏らした。
駿介の中にαの父親への反発心があることを知っていた津田は、いつかそれが落ち着いた頃に、彼が転職を考える可能性もあると思っていた。それなのに駿介が亡くなってしまい、その機会は永遠に失われてしまったのだ。
「夢がかなって嬉しいよ」
申し訳ない気持ちで絨毯に沈む自分の革靴を見ていた津田は、驚いて顔を上げた。佐伯は穏やかに微笑んでいる。
「君はいつでも遠慮がちだが、幸生君も私たちの大事な息子だよ。契約社員だって、一緒に働いていることには変わりないけれど、君ならいつか自分の力で正社員になるだろうと思っていたよ。就職おめでとう、は、まだ早いから、ちゃんと決まった時に言わせてもらうけどね」
正社員になれる。
しかも、研究員として。
大学を中退し、記録に残るような研究成果を残せていないΩの自分に、そんな厚遇が提示されるなんて、夢にも思っていなかった。
「ありがとうございます。…… よろしくお願いします」
胸が詰まって、それしか言えなかった。
「津田君…… いや、幸生君」
頭を下げて辞そうとした津田を、佐伯が呼び止めた。部長と課長はすでに退室し、佐伯の役員室に残ったのは乾と津田、そして部屋の主だけだ。下の名前で呼んだということは、個人的な話だろう。
乾は退室するべきか迷うように視線を泳がせたが、佐伯にドアを閉めるように促され、部屋に残って津田に並んだ。
佐伯はソファから立ち上がり、義息に優しく語りかけた。
「私が昔、いつだったか、息子と一緒にこの会社に勤めたいと言ったことを覚えているかい?」
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「息子と同じ会社で働くのが夢だったのになぁ」
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「夢がかなって嬉しいよ」
申し訳ない気持ちで絨毯に沈む自分の革靴を見ていた津田は、驚いて顔を上げた。佐伯は穏やかに微笑んでいる。
「君はいつでも遠慮がちだが、幸生君も私たちの大事な息子だよ。契約社員だって、一緒に働いていることには変わりないけれど、君ならいつか自分の力で正社員になるだろうと思っていたよ。就職おめでとう、は、まだ早いから、ちゃんと決まった時に言わせてもらうけどね」
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