ただΩというだけで。

さほり

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睦月のむつごと

18.

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「…… ってことだろ、要は。なんか、なんとなく、そういう可能性はあるかなって、俺の方は一応、覚悟してたし。準備が足りなかったのは、お互いさまだから…… 」

「準備って…… 津田さん何かしたんですか?」
「は? あ、いや…… 昨日の夜…… 」
「夜?」

「だから、夜、風呂で、ちょっと…… でも、なんかやっぱ、発情期じゃないと、あんま広がんねぇし。っていや、歳のせいかもしれねぇけど。で、いまいちなぁって思ってるうちに律が泣いてさ…… 」

  そういう「準備」をしてきてくれたのか。
  乾は驚愕した。自分は昨夜、ただ浮かれてあれこれと妄想するばかりで、前向きで生産的な準備など何一つしなかったのに。

「今日、する前に、もちょっとちゃんと慣らそうと思ってたのにお前、部屋入るなりあんなだったし…… 俺もまぁ、なんとかなるかなって思ったのが悪かったんだけど…… 」

  津田が一つ、くしゃみをした。
  部屋には空調がきいているが、1月の室内は夏のようにはいかない。乾は傍に避けていた布団をとり、自分たちにかけた。

「ありがと」

  短くそう言って、頬にキスしてくる津田の男ぶりにせつなくなる。
  この人はきっと、惚れ惚れするような優しさで佐伯を抱いたのだろう。今まで考えたこともなかったけれど、「そちら側」の津田に愛された亡き人にまで、醜い嫉妬心が芽生えてしまった。

「この状況で言うことでもないけどさ」

  そう切り出され、顔を上げたら津田にスッと目を逸らされた。

「俺だって…… 自分がどっち側かなんて、知らなかったんだよ。でも、初めての時は…… そりゃあひどいもんでさ。発情期で、若かったし、頭真っ白んなって…… 気づいたら、初めての佐伯やつ相手にめちゃくちゃしててさ…… 」

  愛しい人を思い出したのだろう。
  津田は枕に視線を向けたまま、懐かしそうに目を細めた。


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