ただΩというだけで。

さほり

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睦月のむつごと

20.

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  肌を合わせたことも喜びだったけれど、求めているのは身体だけじゃない。ひとりの人として津田を好きになったのに、彼が生活している姿を、ほとんど見たことがないのだ。

  これから少しずつ、津田のもっといろんな面を見せてもらいたい。乾は密かにそう思って、試しに彼にプリンを勧めてみたのだった。

  部屋に戻ると、先程の醜態が急に思い出されて気が塞いだ。二人で買い物をして同じ部屋に帰る、そのことに先刻までは浮かれた気分だったのに。
  布団の乱れたベッドはそのまま、さっきまでそこに入っていた自分たちを思い出させる。思い返すと何もかもが不甲斐なくて、時間を巻き戻してやり直したい、と乾は痛切に感じた。

「俺のせいだから、気にすんなって言ったろ?」

  うつむいて立ち尽くす乾の背中を、津田がポンポンと優しくたたく。

「いや…… 津田さんのせい、とかでは、全然、ないです。いろいろ、謝りどころ満載ですけど、まず…… 」

  がっついてすみません、そう言うと、津田は色素の薄い目を細めた。

「続きはさ、発情期にしような」

  しっとりした笑顔でそう言われ、乾は安堵と寂しさを同時に感じた。
  愛想を尽かされて、もうこれっきりだと言われてもおかしくはなかったのに。誘うような台詞が嬉しかった。それと同時に、「やっぱり発情期じゃなきゃダメだな」と言われたようで、胸に刺さる小さな棘を感じてしまった。

  窓際に置かれた丸テーブルに向かい合わせに座り、乾はプラスチックのスプーンでプリンを口に運ぶ津田を見ていた。何度か一緒に外食したが、考えてみれば二人で食事をとったことはなかった。まだ律に甘いものを覚えさせたくないという津田の意見を尊重して、三人でいるときには食後にデザートを頼むこともない。
  社で食べている津田手製の弁当も極めて簡素なものなので、甘いものを食べる津田を見るのは初めてかもしれなかった。
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