ただΩというだけで。

さほり

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逡巡

19.

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  すみません、と続いた言葉に、別に謝らなくても、と思ったが、肩口に舌を這わされて身体が硬直した。
  ピリリと痛むところを、乾が舐める。首をひねって見てはじめて、そこにくっきりと歯型がつき血が滲んでいることを知った。

(噛まれたのか…… )

  発情中の、痛覚が麻痺した状態でハッとしたくらいだ。甘噛みという程度のものではない。
  堪えきれなくて、と漏らした乾の謝罪は、こちらに対してのものだったと分かった。

  たとえうなじを噛んでも、抑制剤ピル服用中ならつがいにはならない。それでも、噛み跡はくっきりと残り、服を着ていても人目に触れるだろう。
  Ωのうなじに噛みつきたいというαの欲求を、乾が限界まで堪えてくれたことは察せられる。
  津田は、乾がケガをひたすらに舐めて治そうとする犬のように思えて、彼の髪をふわりと撫でた。

「大丈夫。舐めてると血止まらねぇから、ほっといていいよ」
「でも…… 」
「いいって。それより、お前の方は止まったんじゃねぇの?」

  刺激を受けすぎたせいかほとんど麻痺したような津田の後孔が、その入り口付近にかかる圧が弱まったのを感じていた。
  αの性器の付け根には亀頭球があり、射精に備えて膨張しΩの体内から抜けにくくする働きがある。それが収まったということは、出すべきものが全部出たというサインだろう。

  乾は大きく息をつくと、逐情を終えた自身をゆっくりと津田の体内から抜いた。排泄に似た、恥ずかしい違和感に身体が震える。彼の性器はどちらのものともわからない体液で、べっとり濡れていた。

  起き上がった乾が無言でバスルームに行くのを見ながら、津田はゆっくりと身体を起こした。体内に注がれた精が、気をぬくと流れ出てしまいそうだ。乾がシャワーを浴びるのならシャツくらい着ようかと思ったのだが、彼は濡らしたタオルを片手にすぐに戻ってきた。

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