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漏洩と波紋
3.
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そうして生活の質や価値観の違いに思いを馳せるようになったのは、乾との同居を考えているからかもしれない。そう思いながら、津田は律の小さな身体にタオルを滑らせた。
ひとしきり匂いを嗅いで満足したのか、律が自分のパジャマに手を伸ばす。図らずも、幼児にはちょうど取りやすい高さだ。
「いちゅ!」
「そう、それは律のパジャマ。でも、下着が先」
「いちゅ!」
「はい、ありがと。これが律のパンツ。これは律のシャツ」
指をさしながら、津田に手渡しながら、律が主張しているのは「所有権」だ。
りつ、という単語の発音は幼児には難しいらしく、それを自分の名前だと認識した最近の律は「いちゅ!」を連発するようになった。
幼児用の皿を指差して「いちゅ!」自分がいつも乗る電車を指差してまで「いちゅ!」といった具合だ。
本人はちゃんと発音できているつもりなのだろう。この年頃の時、凛花も自分のことを「いーか」と呼んでいた。それがいつ頃から凛花と言えるようになったのか、津田は全く覚えていない。
もしも律を育てていなかったら、舌ったらずに「いーか」と言っていた娘の声など、思い出すこともなかっただろう。
孫の成長を見ることは、夢中で子育てしていた頃の忘れ去られた記憶に触れる楽しさがあるのかもしれない。凛花を可愛がってくれた佐伯の両親を思いながら、自分もすっかりジジイだな、と津田は苦笑した。
フリースのパジャマを着込んだ律は、ドアを開けてやるとさっさと浴室から出て行った。
室内とはいえ、2月の冷たい空気が裸の津田に襲いかかる。津田は急いで自分の身体を拭きながら、先週末の乾とのデートのことを考えていた。
どちらかに(というかほとんど乾に)用事がない限り、土日のどちらかは乾と出かけるようになった。
「週末、空いてますか?」が「来週どこ行きます?」に変わったのは先月からだ。
ひとしきり匂いを嗅いで満足したのか、律が自分のパジャマに手を伸ばす。図らずも、幼児にはちょうど取りやすい高さだ。
「いちゅ!」
「そう、それは律のパジャマ。でも、下着が先」
「いちゅ!」
「はい、ありがと。これが律のパンツ。これは律のシャツ」
指をさしながら、津田に手渡しながら、律が主張しているのは「所有権」だ。
りつ、という単語の発音は幼児には難しいらしく、それを自分の名前だと認識した最近の律は「いちゅ!」を連発するようになった。
幼児用の皿を指差して「いちゅ!」自分がいつも乗る電車を指差してまで「いちゅ!」といった具合だ。
本人はちゃんと発音できているつもりなのだろう。この年頃の時、凛花も自分のことを「いーか」と呼んでいた。それがいつ頃から凛花と言えるようになったのか、津田は全く覚えていない。
もしも律を育てていなかったら、舌ったらずに「いーか」と言っていた娘の声など、思い出すこともなかっただろう。
孫の成長を見ることは、夢中で子育てしていた頃の忘れ去られた記憶に触れる楽しさがあるのかもしれない。凛花を可愛がってくれた佐伯の両親を思いながら、自分もすっかりジジイだな、と津田は苦笑した。
フリースのパジャマを着込んだ律は、ドアを開けてやるとさっさと浴室から出て行った。
室内とはいえ、2月の冷たい空気が裸の津田に襲いかかる。津田は急いで自分の身体を拭きながら、先週末の乾とのデートのことを考えていた。
どちらかに(というかほとんど乾に)用事がない限り、土日のどちらかは乾と出かけるようになった。
「週末、空いてますか?」が「来週どこ行きます?」に変わったのは先月からだ。
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