ただΩというだけで。

さほり

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漏洩と波紋

9.

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  津田がどこの研究所ラボに配属されたとしても、研究員はαがほとんどだ。母体の製薬会社から正社員として出向してくるΩへの風当たりが相当に強いことは想像に難くない。
  津田本人はきっと、そんなことには慣れていて、いつものことだと笑うだろう。

  津田に、能力相応の仕事をしてほしいと願ったのは自分だ。だからこそ、彼を正社員に登用してはどうかと、上司に打診した。それが叶った場合、自分の部下として残ることはないだろうと覚悟もしていた。
  それでも、津田が研究所に配属になることへの不安と焦りは、日増しに大きくなった。

  生意気なΩだと思われたら。
  Ωに屈辱を与え、服従させる方法を、αは知っている。
  たとえそんな悪意のある者がいなかったとしても、先月のように津田が突発的な強い発情に襲われたら。その時に彼のそばにいるαは、自分ではないのだ。

  一緒に暮らしませんかと誘った時の津田の顔を思い出す。
  困惑していた。そんなことは、考えたこともなかったというように。
  それからは明らかに連絡が取りにくくなり、会社でもほぼ目を合わせず、ちゃんと会って話そうと思っていた週末の予定はキャンセルされた。
  凹まずにいられるはずがない。

  こんな状況で、つがいになってほしいなんて、とても言えない。

  甘い香りのする津田のうなじが髪の間から見えているだけで、焦燥と渇望が湧いてくる。そして、「誰かに取られるんじゃないか」という危機感が、乾の胃をキリキリと苛んだ。
  誰にも渡したくない。
  口に出せない想いが、澱のように胸に溜まっていく。

  部署に戻った時、最初に目に入るのは津田の後ろ姿だ。そういう配置にしたのは自分だが、日に何度も晒されるうなじの誘惑を思い、エレベーターに乗り込んだ乾はため息をついた。
  見ないようにして席に戻ろうと思ったのに。津田は珍しく、席にいなかった。
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