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漏洩と波紋
12.
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「社用車は地下5階にありますが、鍵は19階の総務部で管理しています。車で移動するならまず上の階でーー 」
「鍵はあります」
美馬はぴしゃりと話を遮ると、到着したエレベーターに乾を促して乗り込み、B5のボタンを押した。
「主任、すみません。不自然な呼び出しかたをしてしまって……」
乗り込んだエレベーターには、他に人がいない。彼女は遠慮がちにうつむき、緊張した声で話し始めた。
「津田さんは、たぶん地下駐車場にいます。違っていたらすみません。でもたぶん、里谷さんと一緒です。さっき里谷さんがーー」
美馬がそこまで言ったとき、10階で止まったエレベーターに人が乗り込んできた。
同じ社の人間ではないので、続きを話しても構わないのではないかと乾は思った。けれど、その続きの内容を知っているのは美馬だけで、彼女が口を噤んでしまった以上、促すことができない。
乾は早鐘を打ち始めた鼓動を持て余しながら、光の移動する階数表示を黙って見つめた。
(駐車場に、津田さんが…… ?)
契約社員の津田は、河野教授との会食の時のような特別な事情がない限り、社外に出るような仕事はない。駐車場に用などないはずだし、そもそも運転免許証を持っているのかどうかさえ、聞いたことがなかった。
「さっき里谷さんが津田さんに、車に忘れ物をしたから取りに行ってほしいって頼んでいたんです」
地下1階で他の乗客が降り、2人きりになったところで、美馬は再び話し始めた。
「不自然だとは思ったんです。津田さんは駐車場がどこにあるかも知らなかったのに、場所を説明して鍵を渡していました。急ぎだからよろしくって。そんなの自分で行った方が絶対早いのに…… 」
一度言葉を切った彼女は、意を決したように乾を見上げた。
「里谷さんも、主任と津田さんのことに気づいていると思います」
「鍵はあります」
美馬はぴしゃりと話を遮ると、到着したエレベーターに乾を促して乗り込み、B5のボタンを押した。
「主任、すみません。不自然な呼び出しかたをしてしまって……」
乗り込んだエレベーターには、他に人がいない。彼女は遠慮がちにうつむき、緊張した声で話し始めた。
「津田さんは、たぶん地下駐車場にいます。違っていたらすみません。でもたぶん、里谷さんと一緒です。さっき里谷さんがーー」
美馬がそこまで言ったとき、10階で止まったエレベーターに人が乗り込んできた。
同じ社の人間ではないので、続きを話しても構わないのではないかと乾は思った。けれど、その続きの内容を知っているのは美馬だけで、彼女が口を噤んでしまった以上、促すことができない。
乾は早鐘を打ち始めた鼓動を持て余しながら、光の移動する階数表示を黙って見つめた。
(駐車場に、津田さんが…… ?)
契約社員の津田は、河野教授との会食の時のような特別な事情がない限り、社外に出るような仕事はない。駐車場に用などないはずだし、そもそも運転免許証を持っているのかどうかさえ、聞いたことがなかった。
「さっき里谷さんが津田さんに、車に忘れ物をしたから取りに行ってほしいって頼んでいたんです」
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「不自然だとは思ったんです。津田さんは駐車場がどこにあるかも知らなかったのに、場所を説明して鍵を渡していました。急ぎだからよろしくって。そんなの自分で行った方が絶対早いのに…… 」
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「里谷さんも、主任と津田さんのことに気づいていると思います」
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