ただΩというだけで。

さほり

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漏洩と波紋

16.

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「片岡のだろ、あんなのほっとけよ」

  突然乱暴な口調になった里谷は、津田のシャツのボタンを一つ、外した。予想外の展開に瞠目する。里谷は目を細め、
「その顔!」
  と吹き出した。

「そういう表情かおもできるんですね。いつもの無表情はギャップ萌えさせるためのフェイクってわけか」
「なに…… 」
「津田さん、意外にしたたかですよね」

  二つ三つとボタンを外した里谷が、津田の肌に指を滑らせる。鎖骨のラインをなぞった手は、シャツの隙間から侵入して肩に触れた。

「これ、乾主任の歯型でしょう?」

  傷に爪を立てられ、津田の身体がビクリと震えた。噛まれた傷は塞がりかさぶたも取れたが、赤い痕になっていて、触れるとまだ痛む。

「不用心っていうか、無頓着すぎません?自分では気づいてなかったかもしれないけど、こんなのガーゼとかで隠すでしょ普通。白いシャツは透けるって、知りませんでした?」

  全く気づいていなかった。誰にも言われなかったが、自分の座席の位置を考えると、オフィスのみんなに見られていたということだろうか。服で隠れるところにあると思っていた自分の迂闊さを、津田は恥じた。

「あんた達、分かりやす過ぎるんだよ。発情休暇取るって連絡あった途端、主任が半日行方不明。そしたらいつもなら3日は休む津田さんが翌日から普通の顔で出社して来るし、これ見よがしに噛み痕なんか付けてさぁ、バレバレだろそれ」

  津田は何も言えなかった。
乾の立場を考えれば否定するべきだと分かってはいるが、ここまではっきり言われると弁解の言葉が思いつかない。
  沈黙する津田を、勝ち誇ったような顔で里谷が見下ろした。

「聞きましたよ、正社員になるって。人は見かけによらないって、ホントな。常務のコネで採用されたくせに、あんたいったい、何人と寝たの?」
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