ただΩというだけで。

さほり

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漏洩と波紋

19.

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「あの、ちょっとほんとにどいてください」

  津田が胸のボタンを留め体勢を立て直そうとすると、里谷はその手首を乱暴に掴んだ。

「拒否れる立場だとでも思ってんのかよ?」

  冷めた態度を取り戻した津田に怒りを滲ませ、恫喝する声音で顔を寄せてくる。

(うぜぇ…… )

  穏便に済ませたいと思っていた津田の理性の糸が一本、切れた。

  津田は手首を掴まれたまま腕を伸ばして里谷の額を鷲掴みにすると、体を起こす勢いに任せてそれをウィンドウに叩きつけた。
  男の後頭部がぶつかる鈍い音と、わずかな振動が響く。形勢を逆転された里谷は、信じられないという顔で津田を見つめていた。

「あのさぁ、お前勉強不足なんだよ。Ωが非力なのは発情期だけって、知らんかった?お陰様で貧乏暇なしでさ、土方とか運送とか転々としてきたから、腕力には自信あんだよ、俺」

  額を押さえる手を引き剥がそうと、里谷が渾身の力でもがく。そのためか、あるいは屈辱で、彼の顔が赤く染まってきた。

「情報収集も甘い。人を恐喝するつもりなら、ちゃんと調べてからにしろよな」

  津田が低くそう言うと里谷は鍵を捨て、両手で眼前の手首を掴んだ。男の両手にはさすがに敵わない。津田は彼の額から手を離して振りほどき、落ちた鍵を素早く拾った。

「どうしてもΩとヤりたいってんならさぁ、抱いてやるけど」

  挑むように放たれた津田の言葉に、息の上がった里谷が瞠目した。乱れた前髪のかかる額に、うっすら津田の手形が付いている。
  彼は今までの人生で、他人からこんな扱いを受けたことはなかったのだろう。αならそれが当たり前だ。虐げることはあれど、虐げられることなどない。
  肩で息をする里谷に、津田は冷ややかに言い放った。

「お前みたいな甘ったれのαに、貸してやるケツなんかねぇんだよ」
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感想 18

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