ただΩというだけで。

さほり

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決断

4.

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「あぁ、そうだったんだね。タイミングが悪かったかな。事前になんの話か言っておけば…… いや、それはちょっと無理だったか、さすがにね」

「でも、俺からもお義父さんとお義母さんにお願いしたいことがあって、近いうちに相談しようと思っていたので…… お時間いただけてよかったんです」

  津田は一度顔を上げて、隣の部屋につながる扉に目を向けた。それから薄く微笑むように唇を結ぶと、勝手なお願いなんですが、と前置きした。

「以前から、いつかは、という話になっていましたが…… 律を、できれば4月から佐伯家こちらで預かっていただきたいんです」

  驚愕して横顔を見つめる乾を、津田はあえて見ないようにしているようだった。

「さっきの話から逸れるかもしれませんが、番のことは、今はまだお答えできる段階じゃないので…… 」

「ああ、それは分かったよ。急かすつもりはないんだ。ただ、T大の話をこのまま進めていいのか分からなくて、黙ってもいられなくてね。それで、律のことは、何と言うか…… やっぱり新生活は二人で始めたいということ、なのかな?」

  津田に限ってそんなことを考えているはずがない、乾はそう思った。律をかわいがり、大切にしている姿をそばで見てきた。それは佐伯もよく分かっているはずだ。
  しかし津田は、思いもよらない答えをさらりと返した。

「そうですね」

軽く肯定した横顔は感情を表していない。津田はただ静かに、伏し目がちに、淡々と言葉を継いだ。

「思春期になる前には、とお願いしていましたが、事情が変わりました。率直に言うと、最近律が俺のフェロモンに影響されているんじゃないかと思うことがあるんです。
  幼児とはいえ…… 成長過程のαが番のいないΩと一緒にいるべきじゃないんだと分かってきました。それにあの子にとっても、俺なんかといるよりこちらで育てていただいた方がいいだろうと思うんです」
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